(※画像はイメージです/PIXTA)

COP26はコロナ禍で昨年開催されなかったことから2年ぶりの開催となりました。予定を1日延期しながらも成果文書を採択して閉幕しました。スペインで19年に開催されたCOP25から先送りされた課題(宿題)に対し具体的な成果に乏しいとの見方が多いように思われます。ただ、首脳級会合が設定されたことや米中共同宣言が発表されるなど、評価すべき成果も見られました。

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COP26:具体的対応は今後の課題ながらパリ協定の努力目標の追求を世界中で確認

国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)は202年10月31日に始まり、11月13日に成果文書を採択して閉幕しました(図表1参照)。約200ヵ国・地域が、地球温暖化対策の国際合意「パリ協定」の最も意欲的な努力目標を引き続き追求することで一致しました。

 

出所:各種報道等を参考にピクテ投信投資顧問作成
[図表1]COP26で表明された主な項目と内容 出所:各種報道等を参考にピクテ投信投資顧問作成

 

今回のCOP26では、成果文書「グラスゴー気候合意」においてパリ協定で示された産業革命前からの気温上昇を、温暖化被害の多い2度よりも低い、1.5度を目指して温暖化ガス削減を進めることで各国が確認をしました。

石炭火力については段階的削減に努力と土壇場で表現が弱められた

COP26はコロナ禍で昨年開催されなかったことから2年ぶりの開催となりました。予定を1日延期しながらも成果文書を採択して閉幕しました。スペインで19年に開催されたCOP25から先送りされた課題(宿題)に対し具体的な成果に乏しいとの見方が多いように思われます。ただ、首脳級会合が設定されたことや米中共同宣言が発表されるなど、評価すべき成果も見られました。

 

COP26で象徴的な出来事は、(低炭素化対策がされていない)石炭火力発電の利用について、当初の「段階的な廃止」から「段階的な削減へ努力」と土壇場になりインドなどの反対により表現が弱められたことです。先進国と、温暖化による海面上昇が懸念される新興国島国からは失望の声が上がるなど先進国と新興国の対立が目立ちました。

 

この背景を考えるうえで、二酸化炭素の排出量だけを上位国についてみると中国やインドに改善が求められそうです(図表2参照)。環境問題に熱心な欧州からは経済規模が大きいドイツが上位にランクインするのみです。

 

時点:2018年、出所:IEA(国際エネルギー機関)2020年版報告書より
[図表2]二酸化炭素排出量の上位国 時点:2018年、出所:IEA(国際エネルギー機関)2020年版報告書より

 

しかし、二酸化炭素の排出量を過去からの累積で見ると様相は異なります。まず、産業革命が起きた頃からの累積で見ると、米国や欧州など先進国による二酸化炭素の排出が大半であることです。なお、あまりに古い話ですが、産業革命後から20世紀前までは今回の議長国である英国が世界の二酸化炭素排出の大半を占めていました。

 

累積データのもうひとつの注意点は、このデータは生産べースで測定した二酸化炭素の排出量であるということです。これは図表2の足元の二酸化炭素排出量にもいえることですが、新興国が先進国向けに生産するときの排出分を考慮した消費ベースで測定すると新興国の二酸化炭素の排出はより低くなります。

 

こうした中、2009年の合意で先進国は20年までに毎年1000億ドルを新興国へ資金援助をする約束をしていましたが、コロナ渦もあり未達となっていました。COP26ではこれに遺憾の意を表明すると共に、米国や英国は資金提供を表明しました。日本も、5年間で100億ドルの追加支援を表明するなど支援への姿勢を示しました。ただ、気になったのは一部新興国は支援金額の上乗せを求めるなど、先進国と新興国のせめぎあいに着地点がまだ先と思われることです。なお、今回の合意では金融支援について、先進国が新興国に提供する資金を25年までに少なくとも倍増させるとしています。

 

図表1の残りの成果を見ると、世界共通のカーボンプライシングは進展が限られました。二酸化炭素排出に対して市場価格を導入し、市場メカニズムを通じて排出を抑制する仕組みであるカーボンプライシングは先進国、特に欧州を中心に導入は既に始まっています。21年7月から中国の一部地域でも導入されその効果が注目されています。ただ、今のところ地域的に値段や仕組みがはばらばらで、共通のルールが待たれるところです。

 

一方、メタンガスや森林破壊の抑制ではある程度の進展が見られました。例えば、メタンガスについてはCOP26の最中に誓約国が100ヵ国以上に拡大しました。メタンガス誓約は、人間活動由来のメタン排出量を20年比較で3割の削減を目指す内容です。COP26前は30ヵ国程度が賛同するに過ぎませんでしたが、一定の成果が見られました。ただ、ここでもインドや中国などメタンガスの排出の多い国が賛同を見合わせました。

 

今回、COP26では1.5度目標を実現するため努力を追求することが明記されたことは一定の成果と思われます。この表現はパリ協定(2015年)においては、産業革命前と比べた世界の平均気温上昇を2度未満、できれば1.5度に抑えるとされていました。2度未満が目標で、1.5度は努力目標との位置づけです。今回、1.5度を目指すことへ格上げされた印象です。

 

COP26が開催される前、エネルギー価格の上昇や電力不足など、脱炭素化の動きはコストがかかるというネガティブな側面が浮き彫りとなりました。にもかかわらず、COP26で一定の成果をまとめられたのは、先のエネルギー上昇もハリケーンや豪雨がそもそもの原因があり、このような異常気象を放置できないという意識が高まりつつあるという認識が共有でき始めている面があるように思われます。COP26の成果に不満をあげたらきりはないかもしれませんが、全くの失敗というわけでもなさそうです。

 

期間:1751年~2017年、生産ベースの二酸化炭素累積排出量 出所:Our World in Dataを参考にピクテ投信投資顧問作成
[図表3]主な国・地域の累積二酸化炭素排出量の構成比 期間:1751年~2017年、生産ベースの二酸化炭素累積排出量
出所:Our World in Dataを参考にピクテ投信投資顧問作成

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『COP26、批判は多いが一定の成果も』を参照)。

 

(2021年11月15日)

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社

運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

 

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