(※写真はイメージです/PIXTA)

長年顔すら合わせていない家族ではなく、知人に財産を渡すと、遺言書を書いた丙野さん。しかし「遺留分」を考慮しなければトラブルに発展する可能性が…。行政書士の山田和美氏が解説します。※本連載は、書籍『「きちんとした、もめない遺言書」の書き方・のこし方』(日本実業出版社)より一部を抜粋・再編集したものです。

「不仲の家族に財産を渡さない」ために遺言書を作成

* * * * *

【遺言公正証書】

 

第一条 次の財産を含む私の一切の財産は、甲野弘(住所 愛知県名古屋市東区XXX1丁目1番地 生年月日 昭和20年1月1日)に遺贈する※①

 

1、土地

 

愛知県名古屋市中村区XXX1丁目1番

宅地 200.00㎡

 

2、建物

 

愛知県名古屋市中村区XXX1丁目1番地

家屋番号 1番 店舗

鉄骨造陸屋根3階建

床面積 1階 180.00㎡

    2階 180.00㎡

    3階 180.00㎡

 

3、預貯金

 

金融機関 X銀行 名古屋支店

種類 普通預金

口座番号 1234567

 

(省略)

 

第二条 遺言者の死亡以前に甲野弘が死亡したときは、甲野弘に遺贈するとした財産は、甲野弘の長男である、甲野昭夫(住所 愛知県春日井市XXX2丁目2番地 生年月日 昭和55年2月1日)に遺贈する※②

 

第三条 本遺言の執行者として、前記 甲野弘 を指定し、次の権限を授与する。

 

(省略)

* * * * *

 

※ ①、②ともに遺言者の妻と長女の遺留分を侵害しているため、「遺留分侵害額請求」をされる可能性が極めて高いでしょう。

 

【本記事のポイント】

●長年、家庭内別居状態であっても妻の遺留分は原則、喪失されない

●「遺留分侵害額請求」は相続開始から10年間は請求できる

●この内容だとお世話になった相手に逆に迷惑をかける可能性大

妻や長女は原則どおり「遺留分」の権利を持つ

丙野定夫さんには妻と長女がいます。しかし、妻とは世間体を考えて離婚はせず、同居をしているものの、長年会話もせず、顔すら合わせない生活をしています。嫁いだ長女は年末年始さえ家に寄り付きません。

 

定夫さんは身を粉にして蓄えた財産を、家族には一銭も渡したくありません。弟のように感じる友人とその家族にあげたいと考え、家族に内緒で作成したのが先の遺言書でした。

 

遺言書があれば原則、指定した相手に指定した財産を渡すことができます。財産を渡す対象は人や法人であれば制限はなく、友人・知人等の他人や法人等の団体への遺贈も可能です。

 

しかし、これには例外が存在します。それは遺留分という制度で、一定の相続人に保障された、財産の「取り戻し権」のようなイメージです。

 

遺留分を侵害した遺言書は、作成自体は可能でも、相続が起きた後でトラブルになる可能性が高くなります。

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残念な実例が教えてくれる 「きちんとした、もめない遺言書」の書き方・のこし方

残念な実例が教えてくれる 「きちんとした、もめない遺言書」の書き方・のこし方

山田 和美

日本実業出版社

昨今の終活ブーム、エンディングノートブームの影響で、 ・そもそも法律要件を満たしていないので効力がない ・遺族がもめやすい検討事項がまったく解決されていない ・相続税は抑制されたようだけど、これでは家族の溝を深…

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