(※画像はイメージです/PIXTA)

不動産を相続したものの、手元に現金がなく相続税が納付できないというケースは珍しくありません。しかし、相続税の納付を怠れば、高額な延滞税を課せられてしまいます。このような事情がある人への救済措置として、延納・物納という制度が設けられているのです。IPAX総合法律事務所の工藤敦子弁護士が解説します。

「延納」の条件・必要書類・担保にできる財産の種類

●延納の条件

 

(1)相続税の納期限〈期限後申告の場合は申告書提出日〉までに必要書類を提出する

 

(2)相続税の額が10万円を超えている

 

(3)現金一括納付が困難な理由がある

 

(4)延納税額に相当する担保を提供すること〈延納税額が100万円以下で、延納期間が3年以下である場合は不要〉

 

●延納申請に必要な書類


必要な書類は下記の6点です。

 

(1)相続税延納申請書

 

(2)金銭納付を困難とする理由書〈相続税延納・物納申請用〉

 

(3)延納許可限度額算出資料

 

(4)担保目録及び担保提供書

 

(5)不動産等の財産の明細書〈遺産のうち不動産等の価額割合が75%以上の場合のみ〉

 

(6)担保提供関係書類〈担保物件の登記事項証明書、固定資産税評価証明書など〉

 

●金銭納付を困難とする「理由書」に金額の記載を

 

金銭納付を困難とする理由書に下記の項目等について金額等を順に記載することにより、延納許可限度額の算出ができます。

 

納期限において、申請者が、現金、預貯金、換価が容易な財産を有している場合、その合計額から、3ヵ月分の生活費(生計を一にする親族のものを含む)及び1ヵ月分の事業の運転資金を差し引いた残額は、現金で納付しなければなりません。この現金納付額を超える分の相続税額が延納許可限度額になります。

 

●担保として認められる財産

 

担保として認められるのは、国債、地方債、社債、土地、建物、船舶・飛行機・自動車、建設機械などです。

 

これらの財産であっても、担保権が設定されているもの、処分が禁止されているもの、係争中のもの、売却見込のないもの、共有持分などは、担保とすることはできません。

「物納」の条件・必要書類・充てられる財産の種類

(1)相続税の納期限(期限後申告の場合は申告書提出日)までに必要書類を提出する

 

(2)延納によっても金銭で納付することが困難な金額の範囲内である

 

(3)物納申請財産が物納に充てられる財産の要件を充足する

 

●物納の際に必要な書類

 

(1)物納申請書

 

(2)金銭納付を困難とする理由書〈相続税延納・物納申請用〉

 

(3)物納許可限度額算出資料

 

(4)物納手続関係書類〈物納申請財産の登記事項証明書、公図、有価証券の写しなど〉

 

●金銭納付を困難とする「理由書(物納許可限度額)」を用意する

 

金銭納付を困難とする理由書に下記の項目等について金額等を順に記載することにより、物納許可限度額の算出ができます。

 

延納許可限度額(上記参照)から延納によって納付できる額を差し引いた残額が、物納許可限度額になります。延納によって納付できる額は、

 

①申請者の年間の収入見込額から、生活費〈生計を一にする親族のものを含む〉及び事業の運転資金を差し引いた額に最長延納年数を乗じた額に、②3ヵ月分の生活費及び1ヵ月分の事業の運転資金を加算した額

 

となります

 

※①は、②と延納許可限度額の算出において重ねて差し引かれているため足し戻します。

 

また、おおむね1年以内に見込まれる臨時収入及び臨時支出がある場合には、さらに、臨時収入を加算し、臨時支出を差し引きます。

 

●物納に充てられる財産

 

物納に充てられる財産の要件は、下記の5点です。

 

(1)申請者が取得した遺産で日本国内にあること

 

(2)管理処分不適格財産〈担保権の設定がされているものや権利の帰属に争いがあるもの、共有持分、遺産分割協議が未了の財産、遺留分減殺請求の対象となっている財産など〉でないこと

 

(3)物納申請財産の種類及び順位に従っていること

 

(4)物納劣後財産に該当する場合は、他に適当な価額の財産がないこと

 

(5)財産の価額が物納申請税額を超えないこと

 

なお、物納申請財産の種類及び順位は、第1順位が「不動産、船舶、国債、地方債、上場株式等」、第2順位が「非上場株式等」、第3順位が「動産」となります。

 

 

工藤 敦子
IPAX総合法律事務所 カウンセル弁護士

 

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