マスコミ等でしばしば取り上げられる「所有者不明土地」の問題。朽ち果てた家屋、草木が茂る宅地のショッキングな画像を目にしたことのある方も多いと思います。国土交通省の調査によると、相続登記が行われず「所有者不明」となってしまった不動産(土地)の総面積は九州の面積(368万ha)を上回るとのこと。なぜそのような現象が発生してしまったのか、また、今後はどのようになっていくのか、その背景と展望を探ります。

不動産所有の証明には「登記手続き」が不可欠だが…

 

大切な不動産を悪意の第三者から略取されないためには、購入・相続時には法務局での登記手続きを行うことが重要です。この手続きにより、不動産所有のエビデンスが確実なものとなります。

 

ところが、登記されていているにもかかわらず、所有者の所在が不明となり、そのまま放置されて空き家・空き地になってしまう不動産は少なくありません。

 

これらの問題を解決すべく、2019年6月に「所有者不明土地法」が施行されましたが、これに伴い、今後は不動産登記のルールも大きく変更されようとしています。その背景と具体的な内容を見ていきましょう。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

現時点において「不動産登記は義務ではない」

 

不動産購入の契約を交わし、売買代金を支払って物件の引き渡しが完了すれば、当たり前のように土地・建物の登記、すなわち「所有権移転登記」の手続きが行われるものです。しかし、この登記は今後義務化が予定されているものの、現時点では義務ではないということをご存知でしょうか。

 

2004年までは、不動産を購入して登記が完了すれば「権利書(正式名称は登記済権利証)」という目録がもらえました。そして、登記情報の保管方法が紙ベースから電子化されると、権利書は「登記識別情報」に替わり、12桁の符号とQRコードで個別管理されるようになりました。昔の人は「火事になっても権利書だけは肌身離さず」と言ったものですが、データ管理システムが確立されたいまでは、そういったアナログな心配は不要となりました。

 

数千万円という大金を支払って不動産を購入すれば、その権利を確実なものにしたいと考えるのは当然です。「この物件は自分が所有しています」という証を得るためには登記が必要であり、登記済みであることを示すのが「登記識別情報(権利書)」です。

 

登記識別情報を取得するには、印紙税や登記手続きを代行する司法書士へ支払う手数料などいくらかの費用がかかりますが、不動産購入は高い買い物ですから、費用がかかっても登記識別情報というエビデンスを手に入れておきたいものです。そうしないと、いつどんな手段で第三者にその権利を奪われるかわかりません。そのため、多くの不動産購入者は積極的に所有権移転登記を行います。しかしその一方で、不動産の所有権を得たにもかかわらず、登記を行わない人もいるのです。

 

 

次ページ所有権移転登記を「拒否する人」の背景

※本記事は、「ライフプランnavi」に掲載されたコラムを転載・再編集したものです。

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