前回は、信託の概要について説明しました。今回は、信託財産は誰のものになるのか、その答えと理由を見ていきましょう。

所有権は、信託された財産から利益を得る受益者にある

信託でまず理解していただきたいのは、「信託された財産の所有者は形式上と実質で異なる」ということです。

 

委託者が財産を信託した場合、形式上の所有権は受託者に移ります。そのため株式であれば、株主名簿を書き換えなければなりません。

 

不動産であれば、所有権の移転登記を行うため、受託者はその権限で賃貸契約や管理契約を結んだり、売却したりすることが可能となります(所有権移転登記に要する登録免許税はかかりません。不動産取得税も非課税。課税されるのは信託登記の登録免許税0.4%のみ)。

 

もちろん、委託者が「勝手に売却されては困る」と考える場合は、受託者の権限に制限を設けることができます。信託契約に定めておくことで、受託者にできることをあらかじめ規定しておけるのです。

 

このように、形式的な所有権が受託者にあるのに対し、実質的な所有権は信託された財産から利益を得る受益者にあります。

 

この関係を賃貸用不動産の信託を例に整理してみましょう。登記簿上の所有者となり、管理するのは受託者なので、入居者が支払う賃料はまず受託者の口座に振り込まれます。

 

ただしそのお金は受益者のものなので、受託者が勝手に使うことはできません。一定の信託報酬をとる契約になっている場合には、その報酬を差し引いた残りを受益者の口座に振り込むことになります。

信託ならば「なんでもできる」!?

信託にできることを一言で言い表すことは非常に困難です。極端にいえば「なんでもできる救世主のようなもの」と表現できるかもしれません。

 

とはいえ、それではわかりにくいので、次回からは具体的な活用事例を挙げてご説明してみましょう。

本連載は、2014年3月20日刊行の書籍『家族と会社を守る「不動産」「自社株」の相続対策』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

家族と会社を守る 「不動産」「自社株」の相続対策

家族と会社を守る 「不動産」「自社株」の相続対策

貝原 富美子・澤田 美智

幻冬舎メディアコンサルティング

相続において、トラブルになりやすい二大財産である「不動産」と「自社株」。 税理士として長年、不動産・自社株の相続を専門的に解決してきた著者だからこそいえる、実際にあった事例を交えわかりやすく解決策を提示します…

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