「黒川さん、39度のお熱がありま……」。ショートステイのスタッフから突然の電話があった。まさか、コロナに感染した? 心配しながら車ですぐに迎えにいくとじーじが車いすでやってきた。そしてPCR検査に病院を訪れたところ……。じーじを在宅介護で面倒をみている黒川家を突然襲ったじーじのコロナ疑惑、黒川家はどうなったのか。連載「見つめてひらめく介護のかたち『楽しむ介護』実践日誌」の著者の黒川玲子さんに認知症の父を在宅で介護する取り組みを現場報告する連載特別編をお届けします。

じーじ39度の発熱!まさか!コロナか!!

わが家のじーじは、定期的にショートステイ(※)を利用している。利用していると言うよりは「頼み込んで利用させてもらっている」という方が正解だろう。

 

何故か、じーじはショートステイが大嫌い。ショートステイの予定を伝えると、「憲兵がいるから」とか、「あそこはシベリアだ」とか、何かしら私にとっては訳のわからない事を言ってはは行きたがらない。今回の理由は「あそこはソ連に侵略されたから、日本人は行ってはいけない」という理由だったからさすがの私も驚いた。

 

39度の発熱でコロナが心配されたが、PCRの検査は陰性だったじーじ。写真提供=黒川玲子
39度の発熱でコロナが心配されたが、PCRの検査は陰性だったじーじ。写真提供=黒川玲子

その日の朝も、いつも通りご機嫌ナナメだったが、そこは外ヅラ良夫君。ピンポ~んとお迎えが来ると「いや~いつもありがとうございます。れーこ、後はよろしく頼みますね」と出かけた。その、後ろ姿を見ると、ちょっと可哀そうな気にもなる。

 

しかし、平日の日中はデイサービスを利用しているが、じーじがいない時間に合わせてスケジュールを組まなくてはならないし。昨今流行りのリモート打合せだって、送迎車が来る時間以外に設定していかないとだし……なにかとじーじと時間を気にする日々を送っているので、ショートステイはありがたいのである。私にとっては、じーじがショートステイを利用している間は、パラダイスなのである。

 

そんなパラダイス気分を満喫していたある日、ショートステイからの電話。なんだか、とっても嫌な予感がする。

 

「黒川さん、39度のお熱がありま……」

 

スタッフさんが最後まで言い終わる前に、

 

「ご迷惑をおかけしております。今!迎えに行きます」

 

「なんて優等生なご家族様でしょう」なんて自画自賛している場合ではない。

 

このご時世に、熱発だなんて。数日前にスタッフさんが、「当事業所ではPCR検査を実施し、職員全員陰性でした! 安心してご利用ください」と誇らしげに言っていたのを思い出し、まっ、まずい、じーじがコロナだったら……もし、クラスターが発生したら発生源はじーじということになるではないか!

 

おまけに、今回利用したショートステイは、母が入居している施設と同一建物内、ということは、ばーばも危険だあ~。などと、焦りながら主治医に受診の旨を連絡すると、

 

「39度ですか、今は他の外来の患者様がいらっしゃるので、発熱外来の時間帯に受診してください。」

 

おまけに「直接お越しにならず、駐車場に着いたら連絡ください」と言うではないか。

 

「駐車場から電話をしろ」ということは、「直接院内に入るな」ってことか!! もう、私の頭中は、「じーじ熱発=じーじコロナ疑惑」の方程式ができ上ってしまった。

 

※在宅で生活している高齢者が数日間、施設に入所して食事、入浴、リハビリ、レクリエーションなどを受けられる介護サービス。

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認知星人じーじ「楽しむ介護」実践日誌

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わけのわからない行動や言葉を発する前に必ず、じーっと一点を見据えていることを発見! その姿は、どこか遠い星と交信しているように見えた。その日以来私は、認知症の周辺症状が現れた時のじーじを 「認知症のスイッチが入っ…

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