弁護士法人みずほ中央法律事務所・司法書士法人みずほ中央事務所の代表弁護士である三平聡史氏は『ケーススタディ 多額の資産をめぐる離婚の実務 財産分与、婚姻費用・養育費の高額算定表』(日本加除出版)のなかで、富裕層の離婚問題について様々な事例を取り上げ、解決策を提示しています。

預貯金1000万円…離婚でお金はどうなった?

【ケース】

男性(夫)と女性(妻)は婚姻し、1人の子をもうけました。夫は会社Aを経営していて、役員報酬5000万円を得ています。

 

妻は社長の妻として、会社Aの取引先その他の関係者との接待交際に夫(社長)とともに参加することもよくありました。ただし、妻は会社Aの役員や従業員ではなく、Aから報酬や給与を得ることもありませんでした。

 

やがて夫婦の仲が悪くなり、夫が家を出て、別居するに至りました。このときにはすでに子は成人し、就業していました。

 

夫は妻に生活費(婚姻費用)として80万円を支払っていました。その後、夫は女性Bと交際するようになり、女性Bは妊娠して夫の子Cを生みました。それ以降、夫はB・Cと同居しています。

 

夫はBと入籍(婚姻)したいと考え、妻に離婚を求めました。しかし、妻は離婚を拒否しました。夫婦共有財産としては、預貯金1000万円、株式・債券3000万円相当、不動産5000万円相当がありました。


 

<争点(見解の違い)>

夫:次のような条件において離婚する。

・清算的財産分与として、不動産を妻に分与する(合計5000万円相当)。

・扶養的財産分与として、婚姻費用相当額を離婚後10年間支払う。

・婚姻費用(相当額)の計算において子Cの扶養義務を反映させる。

・婚姻費用(相当額)は月額54万円となる。

 

妻:離婚自体を認めない。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

<結論>裁判上の和解成立(離婚する)

清算的財産分与として夫から妻に株式・債券、不動産(合計8000万円相当)を分与する。扶養的財産分与として離婚成立後10年間、月額54万円を夫が妻に支払う(夫の主張どおり)。

次ページ【離婚成立】平均額よりも上乗せされた背景。実は…

本連載に掲載しているケースは、解決に至った事例を基にして、その一部を変更し、また複数の事例を組み合わせてまとめたものです。もちろん、同種案件の処理において参考となるよう、本質的な判断のエッセンスは残してあります。一方で、判断プロセスや解決結果にはほとんど影響を及ぼさない事情については記載を省略しています。なお、ケースの背景事情等については、あくまで架空の設定であることをおことわりしておきます。

ケーススタディ 多額の資産をめぐる離婚の実務 財産分与、婚姻費用・養育費の高額算定表

ケーススタディ 多額の資産をめぐる離婚の実務 財産分与、婚姻費用・養育費の高額算定表

三平 聡史

日本加除出版

高額所得者の場合の財産分与、婚姻費用・養育費算定はどうなる? 標準算定表の上限年収を超えたときの算定方法は? 54の具体的ケースや裁判例、オリジナル「高額算定表」で解説! ●不動産や会社支配権、その他高額資産を…

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