話し合いで揉めてしまうことが多い、離婚時の財産分与。個人の小遣いで購入した「宝くじ」の当選金も、配偶者と分割しなければならないのでしょうか。本連載は、相続問題を多く手がける弁護士の北村亮典氏が、実際の実例をもとに、相続や離婚トラブルへの対処法を解説します。※本記事は、北村亮典氏監修「相続・離婚法律相談」掲載、2015年11月30日公開記事を転載・編集部にて再作成したものです。

宝くじの賞金で住宅ローン支払…財産分与はどうなる?

Q.私は毎月自分の小遣いで宝くじを買っていました。運良く賞金5,000万円があたったこともあります。

ちなみに、その賞金はすべて自宅の住宅ローンの支払に充てました。それはさておき、妻と離婚することになり、自宅を処分することになりました。自宅のローンはすべて私が買った宝くじがあたったお金で払ったものですから、自宅を処分して得られるお金はすべて私が取得する、と主張しています。

しかし、妻は「財産分与だから、半分もらう」といって、譲りません。

私がすべて取得することはできないのでしょうか?

 

宝くじの当選金も、財産分与しなければいけないの? (画像はイメージです/PIXTA)
宝くじの当選金も、財産分与しなければいけないの?
(画像はイメージです/PIXTA)

 

A.基本的には財産分与の対象になります。しかし、その割合については、通常の場合とは異なる可能性が高いです。

基本的に財産分与の対象になるが、例外も…

夫婦が婚姻期間中に取得した財産は、どちらの名義で買ったものであっても、基本的にはすべて夫婦が協力して得た財産とみなされ、財産分与の対象となります。

 

しかし、婚姻期間中に取得した財産であっても、夫または妻の固有の事情で取得した財産、夫または妻の固有の才覚だけで取得された財産の場合は、夫または妻の「特有財産」として財産分与の対象とはなりません。

 

具体的には以下のような財産が特有財産になります。

 

・親から相続した財産
・芸能人、スポーツ選手、作家など特別な才能で稼いだ報酬など

 

では、夫が小遣いで宝くじを買って多額の賞金が当たった場合、その賞金は離婚の際に財産分与の対象となるのでしょうか。

 

今回と似た事例で奈良家庭裁判所平成13年7月24日審判のケースがあります。

 

夫が小遣いで買った宝くじで当たったお金で自宅を購入した、というケースで、離婚する際にその自宅を売却して得たお金が夫の特有財産としてすべて夫のものとなるのか、それとも財産分与の対象として妻にも分与すべきかということが争われました。

 

裁判所は、

 

「宝くじが当たったことは夫がもつ運によるところが大きい」

 

といいながらも、

 

・購入の原資である小遣いはそもそも生活費の一部であって夫婦共有財産であること
・賞金はすべて自宅の購入費用に当てられ、その自宅で12年間もの間夫婦として生活してきたこと
・宝くじの当選は、所詮運に過ぎず固有の才覚によるところが大きいとはいえない

 

という理由で、夫の特有財産とすべきではなく、夫婦の共有財産として財産分与の対象とすべきという判断をしました。

 

とはいえ、あくまでも夫の運によるところが大きいことを重視し、一般的な考え方であれば双方が半々で分けるべきところを、夫に3分の2、妻に3分の1ずつ分けるべきという判断をしました。宝くじの賞金が夫婦の生活の本拠となる自宅の購入資金に当てられていたことが、判断を左右する大きな要素となったように思われます。

 

また、自宅の売却資金以外に財産分与の対象となる財産がなかったことや、離婚後の妻の生活が困窮することなども判断要素としてあげられています。

 

したがって、本件とは異なり、宝くじの賞金をたとえばヨットや美術品などのぜいたく品などの購入に当てたような場合や、貯金で持っていたという場合には、また違った判断になるかもしれません。

次ページ子ども名義の預金は、財産分与の対象となるの?

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