高齢になるにつれて発症のリスクが高まる脳梗塞。本連載では、書籍『脳梗塞に負けないために 知っておきたい、予防と治療法』(幻冬舎MC)より一部を抜粋し、国民病ともされる脳梗塞の種類や予防法、治療法を、医師である梶川博氏・森惟明氏が徹底解説します。

どの部位が傷害されるかによって、症状が異なる

◎脳の各部位と機能


脳のどの部位が傷害されるかによって出現する神経症状が異なります。医師は問診、症状、神経学的診察によって梗塞の部位を推測し、画像検査などで確定診断をします。それぞれの機能についてまとめると次のようになります。

 

前頭葉:思考、意欲、情動、創造、言語、運動、性格、精神
頭頂葉:感覚(触覚、痛覚、温度覚、振動覚、位置覚)
側頭葉:言語、聴覚、視野、精神
後頭葉:視覚、視野
下垂体・視床下部:内分泌(ホルモン)
小脳:平衡感覚、運動円滑
脳幹:生命中枢、運動・感覚神経路
大脳辺縁系、間脳、視床、他:大脳皮質と脳幹の移行部で、脳梁、帯状回、間脳(視床、視床下部)、乳頭体、海馬などを含む。

 

脳を栄養する動脈は、左右の総頸動脈(common carotidartery:CCA)と左右の椎骨動脈(vertebral artery:VA)の合計4本です。

脳梗塞とはどのような病気なのか? 

左右の総頸動脈は頸部でそれぞれ内頸動脈(internal carotidartery:ICA)と外頸動脈(external carotid artery:ECA)に分かれます。椎骨動脈は頭蓋内で左右が合流し1本の脳底動脈(basilarartery:BA)となります。

 

内頸動脈系は前方循環(anterior circulation)と後方循環(posterior circulation)に分かれます。前方循環は、内頸動脈が中大脳動脈(middle cerebral artery:MCA)と前大脳動脈(anterior cerebral artery:ACA)に分かれ、大脳、間脳など広い範囲を栄養します。

 

 

後方循環は後大脳動脈(posterior cerebral artery:PCA)が主として後頭葉を栄養します。椎骨・脳底動脈は脳幹、小脳、間脳、後頭葉を栄養します。

 

脳梗塞では、どの血管に閉塞が生じたかによって、梗塞の部位や範囲が決まってきます。一側の内頸動脈や中大脳動脈の閉塞では対側の片麻痺、優位半球では運動・感覚失語、前大脳動脈では対側の下肢の片麻痺、後大脳動脈では対側の同名半盲、小脳ではめまいや平衡障害と対側あるいは同側の運動失調、脳幹では意識障害などです。

 

脳卒中(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血)の可能性を強く疑うべき症状は下記です。症状を見逃さずに素早く救急車などで受診しましょう。

 

次ページ脳卒中を疑うべき症状
脳梗塞に負けないために 知っておきたい、予防と治療法

脳梗塞に負けないために 知っておきたい、予防と治療法

梶川 博 森 惟明

幻冬舎メディアコンサルティング

高齢になるにつれて発症のリスクが高まる脳梗塞。 国民病ともされる脳梗塞の種類や予防法、治療法を知ることで、ならない工夫、なってからの対応を身に付けましょう。 「三大疾患に負けないシリーズ」第1弾!

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