文京区民に「引き渡し直前」で食い止められた

【全戸完売! なのに塩漬け…ル・サンク小石川後楽園】

 

文京区小石川で建設された分譲マンション「ル・サンク小石川」が販売を終え、引き渡し寸前に建築確認を取り消される。建築確認取り消しの訴訟を起こしたのは、建設に当初から反対していた周辺住民の一部。彼らが繰り出した、かなりトリッキーなロジックに不動産業界は唖然とした。

全戸完売!なのに塩漬け<ル・サンク小石川後楽園>
全戸完売! なのに塩漬け…ル・サンク小石川後楽園

 

【解説】建築確認下りて、工事着工して、完売して、なのに中止。いったい誰が得するの?

 

これは現地をぜひ見てほしい案件やな。寂しいで。購入者も決まり竣工したマンションが仮囲いに囲まれたまま、誰が住むこともなく東京の都心にず~っと建ってるんや。建築確認下りて、工事着工して、売れて、竣工したマンションの建築確認を取り消して、いったい誰が得するいうんや?

 

 

建築基準法上のかなりテクニカルな解釈を巡って争ってその違法性を指摘して、建築確認取り消させる近隣住民と法律事務所のインセンティブは何や? それを想像すると薄ら寒くなってこんか?

 

こういうマンション建設反対運動が起こるのは特定の区に集中しとる。中にはマンションに住んでる人間が自分のマンションに「日照をうばう○マンション反対」言うて垂れ幕つっとったりする。笑けてくるわな。わしやったらそういう区には住みたないわ。どうですか? 文京区の皆さん?

「避難階」と「避難階段」の隙をついたナゾ

【ナゼ?】避難階には避難階段はいらない 避難階段があると避難階ではない

 

ル・サンク小石川の建築確認はナゼ取り消されたのか? 全宅ツイ設計部の一級建築士「お鯛さん」と全宅ツイのグルさんの対談で解説していこう。

 

お鯛さん(以下お鯛) まず本件の実態の整理をしますと東京都安全条例に駐車場には避難階段が必要であるという規定があり、ただし避難階(直接地上へ逃げられる階)については避難階段は不要となっています。ル・サンク小石川の駐車場は確認申請上1階にあたり、駐車場の車路で直接屋外に出られる形状になっています。

 

よって確認検査機関は避難階であるという判断のもと本件駐車場には避難階段は必要ないと判断し、建築確認を下ろしています。住民側の訴えはかなりトリッキーなロジックなんですが、まず、東京都安全条例には避難階段として「階段またはこれに代わる斜路(スロープ)」と記載されているので、この車路は斜路(スロープ)だから避難階段である=避難階段があるってことは避難階じゃないよね?という組み立てで1階の駐車場を避難階と呼ばせないようにしました。

 

すると避難階段の設置が必要になってきて避難階段の構造の規定には「幅3m以上の場合は中間部に手摺等を設ける」と規定されているため、車路のど真ん中に手摺を立てない限り避難階段にならないので、この駐車場には避難階段が設置されていないという事で建築確認が取り消されるに至りました。

 

全宅ツイのグル(以下グル) なるほど。全然わからんw え~っとちょっと整理しますね。だいたい「避難階」と「避難階段」って似ててややこしい。「避難階」のことを「直接地上へ逃げられる階」と呼ぶわ。ほんでそもそもル・サンク小石川の道路に面してる1階には傾斜した車路(スロープ)を下っていく駐車場があり、それが問題になったと。するとこんなやりとりがあったんだろうか…。

 

デベロッパー 駐車場は「直接地上へ逃げられる階」だから駐車場に避難階段いらない。

 

反対住民 地上まで高低差のあるスロープ通っていかなあかん駐車場は「直接地上へ逃げられる階」ではないし、安全条例にもスロープ=「避難階段」と書いてある。「避難階段」があるということはやっぱり駐車場は「直接地上へ逃げられる階」ではない。「直接地上へに逃げられる階」ではないなら、駐車場に避難階段がいる。

 

デベロッパー スロープが避難階段ならええやんけ!

 

反対住民 残念、避難階段の構造の規定には手摺が必要と書いてあるけど、手摺を建てたら物理的に車の通行が不可能で駐車場の用をなさないやろ?

 

グル 難しいな。要は「直接地上へに逃げられる階」ではないとみなされてしまうための「避難階段」の定義(=スロープすなわち避難階段)と「避難階段」の構造の定義(=手摺を中間部に設ける)の隙間を突かれたんやな。スロープだけで「避難階段」であるし、手摺のないスロープは「避難階段」ではないと。建築基準法禅問答や。民間審査機関で下りた建築確認が後から取り消されるんやったら審査機関も建築確認制度もいらん気がしてきよるな。

 

お鯛 そこは問題視されてるところではあるんですが、制度の発端の「建築確認」というのは「行政処分」にあたり、本来行政の権限でのみ行える制度です。その性格を残したまま行政が手一杯なので民間にその作業を開放したというのが問題の根源ですね。「行政処分」なので、その取り消しの行政処分が特定行政庁(役所)が行えるという判断になります。

 

本来であれば行政にも民間にも「建築主事」という資格者がいて、その主事が確認済みを下ろしているので同等の権限のはずなのですが…実際は民間の主事は行政から怒られたら従わざるを得ないと…。

 

グル そもそもなんですが、民間建築機関って確認下ろす前に役所に相談しないんですか?

 

お鯛 ほとんどの場合はしないです。建築主事という同等の権限なので課長がほかの課の課長に判断仰ぎにいくような形になっちゃいますね。

 

グル なるほど。でも裁判所や建築審査会が取り消せるなら、おまえらが確認も下ろせやって思いますよね…。一級建築士としてお仕事してるお鯛さん的にはどうなんですか? 本件、そこまで重大な建築基準法や安全条例違反に感じますか? すでにある建物や時間やお金を無駄にするほどの?

 

お鯛 僕的には違反とは言い切れないし、判断はかなり厳しいと思います。

 

グル でも建築確認取消しの判決は確定…。

 

お鯛 ですね…。

 

【こんなクソに気をつけろ‼】

・文京区のマンションは出来てから買え

・皆が住みたいとこは、皆が"自分だけ"住みたい所や

・小さな隙が大きな物件を転ばすんや

 

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※ 本記事は、書籍『クソ物件オブザイヤー』(KKベストセラーズ)より一部を抜粋、再編集したものです。

 

 

全宅ツイ

 

クソ物件オブザイヤー

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KKベストセラーズ

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