不動産投資アドバイザーでCFPファイナンシャルプランナーの大林弘道氏の著書、『儲ける不動産ビジネス 7つの新規事業アイディア』より一部を抜粋し、投資をはじめとした不動産ビジネスをめぐる課題を解決するための具体的なアイデアを提案していきます。

利益を最大化させる「レベニューマネジメント」

日本ではホテルが不足しているとよく言われていますが、あまりその実感がないのは私だけでしょうか。

 

アパホテルや東横イン、スーパーホテルといった、機能を絞ったリーズナブルなビジネスホテルは各所にあって出張にはすごく便利だし、マリオット、スターウッド、ハイアットといった外資系の列強も日本に数多く上陸、クラスごとにブランド展開し、増える欧米ビジネスマンの拠りどころとなっています。

 

これらの隙間にあたるニーズに対しては、私鉄各社が宿泊特化型ホテルの開発を進めていますし、日本の老舗ブランドも負けじと改装など手がけている状況です。大手不動産会社の調査によると2017~20年にかけて、東京23区、大阪市、京都市合計でホテルは客室ベースで38%も増えるそうです。

 

かたや、星野リゾートが新たに展開する、中堅ビジネスホテル「OMO5」は、下町情緒あふれる街へ繰り出すときのナビゲーターを用意し、単なるビジネスホテル機能だけではない「日本のノスタルジー」を提供するとしています。ソフト面への注力は同社らしいところです。

 

これらホテルはレベニューマネジメントのシステムを導入しています。レベニューマネジメントとは、飛行機の座席や、ホテルの部屋など、需要に合わせた供給コントロールを(短期では)行いにくい財について、イベントや気候などの需要予測をもとにその料金を機動的に設定し、利益の最大化をはかろうとするものです。少し前、博多で大型イベントと受験シーズンが重なったためホテルの予約がとりにくくなり、近県のホテル価格も急上昇した例などはレベニューマネジメントがもたらした結果と言えるでしょう。

年間180日以内…「民泊新法」がおよぼす影響とは?

高級ホテル予約の「一休」というサイトをご存じだと思います。「一休」は当初、売れ残りとなりそうな部屋(ホテル在庫)を直前割引セールとしてネット販売することで、利用者のニーズをつかんだサイトですが、当初は、ラグジュアリーホテルは安売りがブランドを毀損してしまうことを嫌うだろうし、かつ他の宿泊客への配慮もあるだろうから、一休の目指すサービスは定着しないという評価でした。

 

しかし、消費者はいたって合理的であり、「一休」のサイトは軌道に乗ることになります。ずっと以前から、レベニューマネジメントの考え方はユーザー側にも浸透し、違和感なく受け止められたのでしょう。消費者は賢いのです。

 

ときに、日本では米国Airbnbの進出を契機に「民泊」が大きく存在感を増すこととなりました。観光庁は2018年1~3月は訪日客の10%以上が民泊を利用したとしています。低価格帯のホテルが足りなかったことや、日本人のナマの暮らしを体感できることもあり、中国人、韓国人をはじめとしたインバウンド需要の受け皿となっています。

 

経済的な観点だけでみれば、彼らをターゲットとした「民泊」は儲かったので、個人投資家がこぞってこれを始めることになりました。一方で「民泊」の広がりは、その負の部分もハイライトされることになり、国家戦略と地域トラブルとのジレンマを解消するべく、住宅宿泊事業法(いわゆる民泊新法)が定められ、運営方法について明確な規制が定められるに至りました。特に営業日数について年間180日以内と定められたことは、今後の「民泊」の展開に向けて大きな影響を及ぼしそうな規制となると考えられます。

 

ここで、残りの約180日をマンスリーマンションとして稼働させるという運営スキームが生まれてきました。

 

宿泊所の提供である「民泊」と異なり、マンスリーマンションは定期借家契約を締結する賃貸借契約となります。短期の利用形態という点では似ているものの、インバウンドの観光需要が中心である「民泊」と、短期常駐などビジネスユースが中心となるマンスリーマンションとは、法的にも、ニーズ的にも棲み分けができるのです。

 

この「民泊&マンスリーマンション」のハイブリッドビジネスは十分に可能性があると考えられますが、ここでレベニューマネジメントの巧拙が問われることになります。利用料とスケジューリングの両方を上手に設定する必要があるからです。

 

利用料の高い民泊を優先したいものの、それが虫食いのスケジュールになるようだと、長期契約が望めるマンスリーマンションの機会損失を発生させてしまう可能性がでてきます。

 

宿泊業をコアビジネスとする、ホテル運営会社のレベニューマネジメントには一日の長があると考えられます。これまでの経験量が圧倒的に違うからです。訪日客は4000万人が視野に入ってきたとされますが、これは円安の効果も少なからずあるでしょう。

 

近い将来グローバル景気が腰折れすると対日ビジネスが停滞、相対的な円高ともなれば訪日観光客は減るかもしれません。万一、ホテルが供給過剰に転じた場合に備え、レベニューマネジメントのノウハウを装備しておく必要がありますね。

本記事は、筆者の個人的な解釈、見解を踏まえて書かれたもので、情報提供を目的としたものです。各種法規、税制に照らして検証されたものではなく、記載の内容と実際とが異なる場合もございます。筆者ならびに当社関係各社は、これにより生じた損害について一切の責任を負いかねますのでご了承下さいますようお願い申し上げます。

儲ける不動産ビジネス 7つの新規事業アイデア

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大林 弘道

幻冬舎

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