10月3日、米国の9月の非製造業総合指数(NMI)が3年ぶりの低水準であることが判明した。先行して発表されていた製造業景気指数の数値も悪化していたことから、市場では年内の追加利下げを期待する声が高まっている。一方でドル円は106円台にまで下落した。Nippon Wealth Limited, a Restricted Licence BankのCIO長谷川建一氏が解説する。

「非製造業総合指数」「製造業景気指数」共に低水準

10月3日に全米供給管理協会(ISM)が発表した9月の非製造業総合指数(NMI)は52.6だった。これは2016年8月以来の低水準である。1日に先行して発表された製造業景気指数は47.8で、前月の49.1から一段と悪化しており、これは2009年6月以来の低水準である。

 

加えて、2ヵ月連続で景気拡大・縮小の節目といわれる50を下回っており、企業の業況感は、第3・四半期に入って急激に悪化している。製造業のみならず、非製造業にも、景況感の悪化が伝播しはじめているといえ、米国の景気が急激に減速したのではないかとの懸念が強まっている。

 

個人消費や雇用の伸びは、縮小するのではないかと懸念されながらも、今年に入ってからも底堅さを維持してきた。連邦準備理事会(FRB)が利下げを実施した7月と9月の連邦公開市場委員会(FOMC)でも、その点は確認しながらの決定だった。過去2回の利下げでFOMCが判断材料としていたのは、通商問題に関する不透明感が貿易量の減退につながり、米国の輸出関連産業やすでに低下傾向にある製造業以外の企業活動にも波及するかどうかだった。

 

しかし、非製造業の企業活動にも影響は出始めているということになり、個人消費や雇用の伸びへの影響が出てくるだろう。そうなると、FRBも予防的な利下げといっていられなくなり、もう一段、踏み込んで利下げを実施することになるだろう。

 

ISM非製造業指数の発表前だが、3日のFRB当局者の発言を記録しておくと、エバンズ・シカゴ地区連銀総裁は、米国経済成長のリスクの1つとして、最近の米製造業の落込みを挙げ、今月末の次回FOMCでは、何が適切になるのか討議されるとして、調整を行うことに異論はないと述べた。

 

カプラン・ダラス地区連銀総裁も、ISM統計の発表後の発言で、「7月と9月にFRBが実施した利下げにより景気減速のリスクは低下した」と前置きした上で、法人活動が鈍る傾向が、消費や労働市場にどう波及するか慎重に見守っているとコメントし、必要に応じた一段の措置を講じることに異論はないとの立場を示した。

市場は「追加利下げ」を織り込み済み

ISM非製造業指数の発表後、金利先物市場では、10月29─30日開催のFOMCで0.25%の利下げを織り込む度合いは、約90%に達した。市場は、今月末での利下げを織り込んだといえる。年末までを通してみても、約0.40%程度の金利の低下を織り込んでおり、これは、10月の0.25%の利下げに加えて、あと1回の利下げを大方見込んでいるということを意味する。

 

米ドル金利の低下を受けて、為替市場では米ドルが下落した。ドル円は、107円を割り込み106円台に下落。対米ドルでは、ユーロやオーストラリア・ドル、ニュージーランド・ドルの反発も目立った。

 

市場の関心は、4日に発表される9月の米国雇用統計に集まっている。事前の予想では、非農業部門雇用者数が、14万5000人程度増加することを見込んでいるようである。

 

 

長谷川 建一

Nippon Wealth Limited, a Restricted Licence Bank(NWB/日本ウェルス) CIO

 

本稿は、個人的な見解を述べたもので、NWBとしての公式見解ではない点、ご留意ください。

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