若者のクルマ離れやカーシェアの普及で国内の新車販売数が伸び悩んでいる。そんな中、2015年からの4年間で売上1.6倍を達成、2018年には日本カー・オブ・ザ・イヤーを2年連続で受賞するなど、絶好調といえる自動車ブランドが「ボルボ」である。どのようにして無骨なイメージからプレミアムカーブランドへと進化を成し遂げ、大躍進を果たすことに成功したのか。本記事では、ボルボ・カー・ジャパン株式会社代表取締役社長・木村隆之氏が、ブランド再構築のために取り入れた手法を解説する。今回は、「ブランドロイヤリティ」の重要性等である。

「ブランドロイヤリティ」の重要性とは

ボルボではどんなお客様がオーナーになってくださっているのか──。私はそれを社長に就任してすぐに確認しました。

 

すると、年収やその他属性などさまざまな面でメルセデス・ベンツやBMWなどのプレミアムブランドとあまり変わりませんでした。ところが、ボルボだけ販売しているクルマの平均価格が317万円なのです。他のプレミアムブランドは500万円以上でした。ということは、ボルボがプレミアム度を上げれば、平均販売価格は必ず500万円を超えます。

 

[図表1]プレミアムブランドの顧客属性
[図表1]プレミアムブランドの顧客属性

 

それが出発点となり、この信念を持ち続けてここまでやってきました。そして、現在の平均価格は500万円を超えています。

 

もう一つの課題は、一度購入してくださったお客様に、その後も継続して購入していただけるかです。これをブランドロイヤリティといい、プレミアムブランドでは6割を超えているケースが大半です。

 

ボルボは2013年時点では56%でしたが、2015年以降は65%を超えています。これをさらに高めることが現在のボルボの課題です。

 

100人のボルボオーナー様が今年買い換えるとして、何人がもう一度、ボルボを買ってくださるか。これをしっかり調査しなければなりません。他のブランドに行ってしまったお客様はなかなか分かりませんので、これを可能な限り把握しなければいけないのです。

 

[図表2]ブランドロイヤリティ
[図表2]ブランドロイヤリティ

 

「指名買い比率」が急上昇したワケ

プレミアムブランドのプレミアム性には、価格とブランドへの憧れのほかに、コアなお客様がどのくらい存在するかも大きく影響しています。

 

コアなお客様は、買い換えの際にほかのブランドを見ることなく、再購入してくださいます。そうした指名買いをしてくださるお客様の比率は、弊社の調査によると、ほかのプレミアムブランドと比較してボルボは明らかに低い状態でした。

 

お客様がどのくらい指名買いをしてくださっているかは、「指名買い比率」で知ることができます。これは買い替えの際、「購入したブランド以外比較検討しなかったお客様の数」を「そのブランドを購入したお客様全体の数」で割って求めた数値です。数値が高いほど指名買いの比率が高いことを意味します。

 

[図表3]指名買い比率
[図表3]指名買い比率

 

2013年時点の指名買い比率を見ると、3割を超えるブランドもあるのに対し、ボルボは19%にすぎませんでした。ところが2014年以降は徐々に上がり、2017年時点では他のプレミアムブランドに引けを取らない水準になってきました。

 

これは宣伝やPRなどを地道に実践したことにより、ファンが増えたことを意味しています。幸い、ボルボ車自体の商品力や品質もここ数年で大きく向上しましたので、その影響も大きいでしょう。

最高の顧客が集まるブランド戦略 ボルボはいかにして「無骨な外車」からプレミアムカーへ進化したのか

最高の顧客が集まるブランド戦略 ボルボはいかにして「無骨な外車」からプレミアムカーへ進化したのか

木村 隆之

幻冬舎

経営は「データ」「アイデア」「ストーリー」だ!4年間で売上1.6倍!大躍進の鍵を日本法人社長が自ら明かす。ボルボ・カー・ジャパンを再生させた敏腕社長の経営ノウハウを詰め込んだ一冊。

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