経済的理由で進学をあきらめないよう、学生を援助するために貸与または給付される奨学金。貸与型の場合、保証人の設定が不可欠となるが、「人的保証」と「機関保証」とのどちらかの選択が可能だ。身内から連帯保証人と保証人を選出しなけれならない「人的保証」とは違い、公的機関が保証人となってくれる「機関保証」を選ぶケースも多い。本記事では、奨学金制度における「機関保証」選択時の注意点を解説する。

保証人がいなくても「機関保証」制度を利用できるが…

※本記事は2018年度の日本学生支援機構(JASSO)の制度をもとに記しています。最新の内容は、JASSOのHPなどでご確認ください。奨学金制度の内容は、年度ごとに大きく変更になることがあります。


奨学金とは、大学・短大・専門学校などに進学を予定しているが、何らかの事情でお金が足りない人の就学を助ける制度です。授業料や生活費などとして、奨学金を当てることができます。奨学金には給付型(もらえる)もありますが、貸与型第一種・第二種は返さなくてはいけないお金です。端的に言うと借金です。

 

◆奨学金とは? ざっくり概要


上にも触れましたが、奨学金の概要をザックリと見てみましょう。

 

●奨学金は、進学したい生徒が通っている高校を通じて申し込む制度
●奨学金には「返さなくてもいい給付型」と「返す必要のある貸与型(借金)」がある
●貸与型の奨学金には、お金のレンタル料金である利息がつかない「第一種」と、利息がつく「第二種」がある


おおまかにいうと、上記のような概要です。

 

◆奨学金は借金なので保証人が必要


返さなくてもいい給付型もありますが、基本的に貸与型は借金ですので保証人が必要です。保証人とは、お金を借りた本人がお金を返してくれない(返すことができない)状態になったときに「代わりに支払います」という人です(返す義務がある)。


ただ、奨学金の場合、何らかの事情で保証人になってくれる人がいないことも考えられます(一般的な社会人の場合、他人の保証人になるには「返済を全て負う可能性があるというリスクが大きいわりに、保証人にはリターンがほぼゼロ」なので嫌がられる)。


しかし、奨学金は保証人がいない場合でも借りることができます。それが機関保証です。

 

◆奨学金制度の「機関保証制度」と「人的保証制度」の違いとは?


まず、人的保証制度は先ほど述べたような保護者や親せきが保証人になる制度です。保証人は「進学届」の提出時に選任します。


一方の機関保証制度は、公的機関の「公益財団法人日本国際教育支援協会」が「連帯保証人」になってくれる制度です。

 

ただ、無料で保証人になってくれるわけではありません。機関が保証人になってくれるための利用料金が発生します。これは「保証料」と呼ばれます。実際の保証料は奨学金をいくら借りるか?によって変化します。

 

◆奨学金制度の機関保証制度の「保証料」はいくら?


明確な保証料は奨学金の金額によって変化します。ただ、目安としては貸与型第二種を毎月8万円借りた場合は、月換算で5千円程度と言われています。これは、あとで別途支払うのではなく、その金額が8万円から先に引かれます。つまり、奨学金から保証料が先に引かれ、残りを受け取れるのです。

滞納すると、法的措置・強制執行へ至ることも

◆奨学金制度の「機関保証」の注意点


機関保証制度の注意点として、「進学届」で保証人を機関にした場合、その後に人的保証制度への変更はできません。

 

また、「機関保証に入っていれば、借金(奨学金)を最悪の場合には支払ってもらえるから安心」というのは、半分当たっていて、半分違います。確かに、返済が滞った場合には、機関が代わりに「全額を支払ってくれます」。そして、そのあと、機関が本人に請求をします。つまり、取り立てる存在が変わっただけで借金は残ったままです。


それだけではありません。支払えない場合には、年10%の遅延損害金が加算され、法的措置、そして強制執行へと至ることもあります。


きちんと返しておけば、このようなことにはなりません。何らかの事情で返済が難しくなったときは、早めに日本学生支援機構へと連絡をしましょう。様々な対応をしてくれます。

 

法的措置・強制執行へ至ることも…
法的措置・強制執行へ至ることも…

 

◆奨学金制度の機関保証制度 まとめ


機関保証制度を利用すれば、保証人がいなくても奨学金を借りられます(審査にパスすれば)。また、人的保証制度とは異なり、万が一の場合でも、身内などに負担を強いることがありません。


ただ、機関保証制度を利用すると「保証料」が発生します。一例として、毎月8万円借りた場合、月5千円程度の保証料がかかったとします。4年間借りたとすると、保証料は総額でいくらになるでしょうか?


答えは24万円です。多いでしょうか。


考え方は人それぞれですが、24万円で自分の未来の可能性を「買える」のであれば、それはそれ以上の価値がある場合もあるのではないでしょうか。


本記事がどなたかの一助になれば幸いです。

 

 

佐々木 裕平

金融教育研究所 代表

 

本連載は、「金融教育研究所」掲載の記事を転載・再編集したものです。

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