アメリカ不動産投資の魅力というと、「キャッシュフロー」を最大化できる点があげられるでしょう。そのためには、国内不動産投資と同様に、物件の価値を見極める「目利き」が必要となります。そこで重要となるのが、物件を正しく目利きする「アメリカ人の目」を持つことです。本記事では、書籍『日本人が絶対に知らない アメリカ不動産投資の話』より一部を抜粋し、アメリカ人が「中古物件」を好む理由を解説します。※アメリカ不動産投資 詳しくはコチラ

8割以上のアメリカ人が「中古物件」に居住

◆日本と異なるアメリカの二つの住宅常識

 

下記図表1と図表2の日米の不動産価格推移の比較において、アメリカのS&Pケースシラー全米住宅価格指数は実際に売買された不動産の価格であるのに対して、日本の方は国土交通省が示している地価という違いが気になるかもしれません(関連記事『アメリカはバブルなのか?米国不動産の「買い時」を探る』参照)。

 

[図表1]S&P ケース・シラー全米住宅価格指数 出所:S&P/Case-Shiller U.S. National Home Price Index 2000年1月の住宅価格を100とした指数
[図表1]S&Pケース・シラー全米住宅価格指数
出所:S&P/Case-Shiller U.S. National Home Price Index 2000年1月の住宅価格を100とした指数。

 

[図表2]日本の公示地価推移(全国、東京圏) 出所)国土交通省 2000年の公示地価を100とした指数。
[図表2]日本の公示地価推移(全国、東京圏)
出所:国土交通省 2000年の公示地価を100とした指数。

 

しかし、公示地価は実際にそのエリアで行われた取引事例やマンション販売価格など、そのエリアの不動産の実勢価格データを総合的に勘案して算定されているものです。そのため、日本の不動産価格の推移を見るためにはもっとも適切なデータとされています。

 

また、S&Pケースシラー全米住宅価格指数は、簡単に言うと、実際にその時点で売買された住宅の取引価格を指数化しているものです。つまり「同一物件」の10年後、20年後の価格推移を調べた数字ではありません。

 

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すると、日本人的な感覚からすると、次のように考えるのが常識でしょう。

 

「アメリカの住宅価格の平均は17年間で2倍に上がっているかも知れないが、17年前に買った家が2倍で売れるはずがない。なぜなら、17年も経てば建物の価値が大きく下がっているはずだからだ。もし土地は値上がりしていたとしても、物件価格は、建物の値下がりを相殺した分の値上がりになるはずだ」と。日本的な「積算評価」の考え方なら、当然そうなります。

 

しかしアメリカには、日本と異なる住宅常識があるのです。それが、

 

●住宅市場は中古物件を中心に形成されており、新築が少ない

 

という点です。

 

◆8割以上のアメリカ人が中古物件に住んでいる

 

アメリカの住宅市場では、新築物件の流通数は少なく、中古物件中心で市場が形成されています。具体的な数字で見ると、2017年時点で住宅流通量の82%が中古住宅で、新築住宅は18%に過ぎません。

 

[図表1]アメリカの住宅流通市場の推移 出所:U.S. Census Bureau「New Residential Construction」「 National Association of REALTORS 」
[図表1]アメリカの住宅流通市場の推移
出所:U.S.Census Bureau「New Residential Construction」「National Association of REALTORS」

 

一方、少し前のデータですが、2013年時点で日本では住宅流通量の86%が新築住宅で中古住宅はわずか14%しかありません。

 

[図表2]日本の住宅流通市場の推移 出所:総務省「住宅・土地統計調査」2013、国土交通省「住宅着工統計」
[図表2]日本の住宅流通市場の推移
出所:総務省「住宅・土地統計調査」2013、国土交通省「住宅着工統計」

 

単純に言うと、アメリカでは8割以上の人が中古物件に住んでいるのです。

 

その1番目の理由は、アメリカでは新築住宅の供給そのものが極端に少ないからです。2番目の理由が、DIY文化が根付いていることにより、住宅の古さを気にする人が少ないからです。

 

1番目の理由ですが、アメリカでは土地の開発や建物の建築について、州または郡レベルでの非常に厳しい審査があります。日本でも都市計画法で用途地域というエリアが定められており、低層住宅専用などの用途規制が行われています。また、建築基準法により、容積率や建ぺい率の基準も定められています。

 

しかし、アメリカにおける土地の利用や建物の建築に関する規制は、日本とは比べものにならないくらい強力なものです。どのような用途で土地を利用して良いかという区画分けの規制を「ゾーニング」と言います。

不動産開発に関しては「厳しい規制」が課せられる

◆新築住宅の供給をはばむゾーニング

 

日本の皆さんは、アメリカと言えば「自由競争、自由経済の国」というイメージをお持ちだと思いますが、こと不動産開発に関してはまったく事情が異なり、多くの州、多くの都市で、日本よりも厳しい規制があります。

 

まず、州内で人口が密集しているエリアの多くには、マスタープランが定められており、マスタープランに従って、どこの地区にどういった建物(集合住宅、戸建住宅、大型商業施設、小規模商店、工業施設、倉庫等々)を建てて良いのかが定められています。また、一定の面積の中に、どれだけの住宅を建てて良いといった、区画規制もあります。

 

つまり「このエリアでは、何軒くらいの新築住宅を供給しよう」ということが、あらかじめ決められている場合が多いのです(なお、マスタープランは必ず制定されているわけではなく、存在しないエリアもあります)。

 

したがって、「いい空き地があるから、ここを買って住宅を建てよう」と思っても、まずマスタープランに合っていなければ不可能です。住宅街でも、その外れにコンビニがあったら便利だろうと日本の皆さんなら思うでしょう。

 

アメリカでは、住宅地としてゾーニングされたエリアにコンビニをつくることなどは、普通は認められません(これは、アメリカのコンビニが日本のコンビニのように便利ではなく、またあまりいいイメージを持たれていないこともありますが)。ただし、最初から住宅と商業施設の混合エリアとして計画されている場合もあります。

 

また、ゾーニングに適合していたとしても、一定の面積に対して何戸建てるのか、どういう人(所得階層など)が住む家を建てるのか、どんな家(タウンハウスなのか、シングルファミリーハウスなのか、何階建てなのか)を建てるのか、各戸の土地面積はどれくらいで、建物面積はどれくらいか、各戸はどれだけ離れているのか、その他膨大な計画要素を、すべて市と打ち合わせしながら決めなければなりません。

 

打ち合わせと言っても、単なる書類上の計画ではなく、実際に設計士に作ってもらったレイアウトを基にしてプランを作っていくのです。デベロッパーが行う大規模な開発といったことになると、コストも時間も非常にかかるのです。

 

このように、新築住宅における建設への許認可のハードルが非常に高いことが、アメリカで新築住宅の供給が大きく増えない主な理由です。

 

このような行政の規制により、アメリカでは新築住宅の供給が少なく、中古住宅の流通が多くなっています。

 

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では、なぜこのような厳しいゾーニングによる開発規制がなされているのでしょうか。それには歴史的な経緯やさまざまな理由があるのですが、現在では「不動産の資産価値を守る」という目的も重要になっています。日本でも、自然発生的で無計画に開発され、乱雑に建物が並んでいるエリアよりも、計画に基づいて整然と開発されたエリア(日本の場合、多くは再開発エリア)の方が、一般的には不動産の価値が高い傾向があります。

 

アメリカでは、厳しい規制によって開発の秩序を守ることで、不動産の価値やコミュニティーの価値、ひいては都市の価値を下げないという思想が徹底しているのです。

 

ただし、ゾーニングの内容は州や都市によっても異なり、なかにはゾーニングがない都市もあります。ゾーニングがないからと言って、必ずしも不動産の価値が下がるわけではありません。

 

しかし投資対象として見るなら、雑多な状況の中からいいものを見抜くための目利きの力は、より求められるかもしれません。 

 

 

ブロドスキ・ザクリ

株式会社オープンハウス ウェルス・マネジメント事業部 エグゼクティブコンサルタント

 

本連載は、2019年3月13日刊行の書籍『日本人が絶対に知らない アメリカ不動産投資の話』から抜粋したものです。最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

日本人が絶対に知らない アメリカ不動産投資の話

日本人が絶対に知らない アメリカ不動産投資の話

高山 吏司
ブロドスキ・ザクリ
豊岡 昂平

幻冬舎メディアコンサルティング

2年間で約700棟の物件を仲介する今もっとも注目の最強集団が 本邦初公開の知識を惜しげもなく明かす! アメリカ不動産投資の知名度は、以前と比べれば上がっているとは言え、やはり「投資目的で、海外の不動産を購入する」…

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