今回は、借入れ先を集約することで年間の返済額を減らす方法を中心に見ていきます。※本連載は、ライフマネジメント株式会社代表取締役である松本隆宏氏の著書である『地主の参謀―金融機関では教えてくれない資産の守り方―』(エベレスト出版)より一部を抜粋し、土地や不動産を守りたい地主の方に向けて、本当に資産を守っていく考え方及び資産防衛術をわかりやすく紹介します。

予備知識がない「地主」に、利益優先の業者が…

街の中で目にする、多くのコンビニや介護施設、賃貸マンションなどの建物。おそらく、施主の大半は地主の方々ではないでしょうか。もしくは、事業主に事業用定期借地契約で土地だけを貸しているケースなどもあるかと思います。

 

そのような土地活用を目にして感じるのが、プロ介在なしに、建築業者や銀行から提案された建設計画や資金計画をもとに、勧められるがままに建てたであろう現実。

 

皆さんも普段よく目にすることがあるかもしれませんが、必要以上に大きな駐車場を確保しているコンビニや、開発申請が必要とならない範囲で建築をした為に生じた接道物件などが、この例です。

 

本来プロが付いていれば発生しない事案を目にするたびに、業者側(利用者側)の勝手な都合で建てたのであろうと考えると、憤りすら感じます。

 

予備知識がない依頼者と利益優先の業者。互換性が成立しない関係性では、いつまでたってもこの問題が解決することはないでしょう。しかし、全てを熟知した経験豊富なプロを付けることでリスクを回避し、さらには運用益を高めることができるのです。

 

また、相続対策における不動産や建築問題は、デリケートでかつ簡単にやり直しが効かないからこそ、お客様ごとにカスタマイズされたオーダーメイドのご提案が必要であると、私どもは常に考えています。

 

真の味方である“プロを付けないというリスク”が、いかに大きな損失をもたらすかということに気付いていただければ幸いです。

 

収益不動産の魅力

 

株や投資信託などの金融商品を購入する時は、基本的に手元の現金を使うのに対して、賃貸物件を建築したり購入する場合、国内であれば長期間の借入が可能となります。

 

最近では海外の不動産投資について、あらゆる情報が飛びかい耳にすることも多いでしょう。

 

海外の場合、全てではありませんが、現金決済を求められるケースもあります。

 

その事業性や土地の担保価値、その方の属性などにより融資額に差があるものの、利益を得る為に融資を受けられる国内の不動産事情とは少し様相が違うようです。

 

安易に購入することは決しておすすめ出来ませんが、これらの情報を知っておくだけでも、今後の不動産購入や土地活用の際のヒントになるかもしれませんね。

 

《国内における収益不動産の3つの魅力》

1.評価が下がる

2.継続収入を得られる

3.借入が可能

 

国内における収益不動産の魅力について、以上の3つのポイントをぜひ知っておいてくだい。

金融機関からの借入でも、損をしている地主が多い?

実収入を増やす借り換え術

 

続いては、地主の皆さんとは切っても切れない、ローンの話をしましょう。「高額のローン返済で苦しい」という地主の為の「実収入を増やす借り換え術」です。

 

複数の貸しビルや賃貸マンションを所有していたある地主さんの例です。

 

その方は、3つの金融機関(A銀行、B銀行、C信用金庫)から、総額4億1000万円の借入をしていました。それぞれ年間返済額は、A銀行が1320万円、B銀行が960万円、C信用金庫が600万円と、3つ合わせると、年間返済額は2880万円です。

 

この方と同じように、複数の不動産を持つ地主さんは、複数の金融機関から借入をしているケースがあるのではないでしょうか。

 

相談を受けた私は、それら3つの金融機関に分散していた借入を、D銀行一本に集約することを提案しました。

 

つまり、先の3つの金融機関の残債を、新たにD銀行に借り換えたのです。D銀行にとっては大口の融資となりますから、こんなにいい話はありません。

 

その結果、年間返済額が3つの金融機関に返済していた2880万円から2400万円に減らすことが出来ました。キャッシュフローで考えると、差し引き480万円も実収入が増えたことになります。

 

2017年のサラリーマンの平均年収が418万円、手取りで考えるともっと減る訳ですから、大きな成果と言ってもいいのではないでしょうか。

 

もちろん、ここに至るまでにはD銀行について詳しく調査をしたり、交渉をしたりといったことが必要になり、決して簡単なことではありません。

 

そもそもこういった手段があるのだと知っているのといないのでは、大きな差が生まれるのです。

 

あなたの味方は金融機関? それともプロ?

 

私のお客様の中でも、借入について、金利が高いか安いかというところだけを気にする方が多いのですが、それよりも借入条件で、何年間借入れるかというところに意識を向けて欲しいと思っています。

 

返済期間が延びれば、返済額は下がります。延びるのを嫌がる方もいますが、返済額が減れば、毎年余剰が出来るのです。

 

要は、いかにお金を回せられるかということが重要です。

 

また、固定金利でローンを組むと、借り換えをしようとした際に、違約金が発生しますが、その負担は決して少なくありません。

 

金利の安さに注目するあまり、借り換えをしようとした時に初めて違約金のことに気付く、というケースも多くあります。

 

そう考えると、やはり長期的な経営の為には横断的にアドバイスをして、実行をサポートするプロが必要だということがわかりますね。

 

もうひとつ、最後に皆さんに知って欲しいのは、「法人」を上手く活用する、ということです。

 

日本の場合、個人の所得が高くなると、税金はどんどん高くなります。

 

その為、物件を多く所有する地主の方は、それだけ負担も大きくなります。

 

この物件を、個人の財産ではなく、法人の財産に切り替えた場合、法人の方が税率が低く、個人に比べて融通もききやすいので、色々とメリットが多いのです。

 

例えば、図のようにアパート、土地ともに個人の持ち物だったものを、アパートだけ自分が経営する会社に譲渡するという形にします。

 

そうすることで、賃料による収入が、これまでは全て個人に入っていたものが、全て法人のものとなり、節約効果が高まります。

 

[図表]法人の活用の仕方

さらに相続税対策としても有効です。

 

この法人に子供を役員などに置くことで、その収入を子供達に分配することが可能になります。

 

個人で所有していた場合、財産はどんどん膨らむ為、子供達に相続税の負担がかかる一方ですが、このように役員報酬という形で、財産を早め早めに次の代へ移行することが出来るのです。

 

この方法であれば、必然的に税金が減るので、同じ賃料が入ってくるのであれば、キャッシュフローももっと良くなるはずです。実に有効な活用なのですが、この方法に気付かずにいらっしゃる方も少なくありません。

 

さらに、税理士の中には「建物だけ法人に移すのはローンが付いていると出来ない」と、思っている方もいるようです。実際は、それが可能な銀行とそうではない銀行があり、その実情を知らない税理士が、そう思い込んでしまっているのでしょう。

 

もし、納得のいかない説明を受けた場合や不安を感じた場合は、一度冷静になり、ぜひ違う相談窓口の門をたたいてみてください。

地主にとって「遺言」は資産を把握する機会

遺言のススメ

 

遺言の効果について詳しい方もきっと多いでしょう。

 

自分の身に何かが起きた時の為に、きちんとした遺言を作っておけば、その後の相続もスムーズにいくのではないでしょうか。

 

しかし、ここでのポイントは、遺言による効果は、相続の時に限られた話ではないということです。

 

遺言を作ることは、現状の資産の全てを把握する良い機会になり、資産防衛に何より欠かせないのです。

 

そして、もうひとつ遺言の良いところは、定期的にメンテナンスが必要であることです。

 

遺言書は、一度作っておしまいというものではありません。

 

特に地主家族であれば、資産は時間とともに動いていきますから、定期的に遺言書をメンテナンスする必要が出てきます。

 

面倒に感じる人もいるかもしれませんが、メンテナンスを行うことで同時に資産の全体像を整理することになり、新たな気付き、問題点の発見に繋がることもあるでしょう。

 

その為には、

 

・遺言は必ず作っておく

・定期的に遺言をメンテンナスする

 

これは地主の皆さんにとっては避けては通れない道であることを、念頭に入れておいてください。

 

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松本 隆宏

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