今週18-19日に開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)。予想通りFRBが今年4回目の利上げを実施すると見られるが、利上げに関してトランプ大統領が従来より反対姿勢であるほか、緩和政策時に積み上げた債券の評価損をブルームバーグが報じるなど、FRBによる金融政策のかじ取りに、逆風が強まっている。また、現状の注意点として、リセッション入りのサインともされる「逆イールド現象」の観測について、この仕組みと影響を解説する。

トランプ発言、ブルームバーグ報道…FRBに吹く逆風

米連邦準備制度理事会(FRB)は、今週18-19日に米連邦公開市場委員会(FOMC) を開催する。このFOMCで、筆者は今年4回目の利上げを実施すると予想している。市場も、この利上げ(0.25%)をすでに織り込んでいる。市場の注目は、FRBが来年の金融政策に関して、どのような方向感を打ち出すかに、移っている。

 

トランプ大統領は、相変わらずFRBの利上げに対する反対意見を表明し続けている。経済にとって、低金利の環境の方が望ましいことは当然のことだが、本来政治が介入するべきではなく、大統領からこうした風当たりが強まる現状は、FRBにとっては悩ましいところであろう。

 

 

そこへきて、ブルームバーグは、FRBが過去の緩和政策のときに積み上げた4兆1000億ドル(約465兆円)規模の債券ポートフォリオが、市場価値評価(未実現ベース)で、665億ドルに上ることを報道した(FRB四半期報告・9月30日基準)。この債券の評価損は、FRBのバランスシート上の純資産額391億ドルを上回る。

 

このことがFRBの運営や機能を損なうものではないが、財務状況が潜在的に悪化しているという認識は、議会や国民からの信認や、立場を危うくするリスクを高めることになり、最終的にはFRBの独立性を脅かすリスクにつながるのではないかと記事は指摘している。FRBが独立性を保ちながら、どのように独自の判断を貫き、金融政策を遂行していくか、2019年も難しい年になることを予感させるような内容である。

 

話を金融政策に戻そう。パウエルFRB議長は、9月のFOMCで今年3回目の利上げを実施した頃には、追加の利上げに積極的な姿勢を示し、米国経済の堅調ぶりに自信を示していた。しかし、先月からは、「政策金利が中立金利に近い水準にある」と発言して、追加利上げに慎重なトーンを滲ませてきている。11月のFOMC議事録でも、市場の振れや不透明感も踏まえて、慎重な意見が出てきたことが見て取れる。

イールドカーブとリセッションの関係

2015年12月以来、FRBが断続的に政策金利を引き上げてきたことで、米ドルの短期金利は上昇を続けてきた。そして、米ドルの長期金利も、経済の堅調ぶりを背景に、ほぼ並行して上昇してきた。今年、FRBが3回(今週の利上げで4回となるが)利上げを実施して、金利の絶対水準が上昇したことで、市場では、これまで以上に米国経済のピークアウト懸念が強まっている。

 

米国経済の今後の成長鈍化見込みが強まると、長期債の利回りの上昇は抑えられることになるだろう。一方で、FRBが利上げを継続すれば、長期金利を上回って短期金利が上昇するようになる。今月の初めには、米国債券市場で中期債と呼ばれる債券に微妙な現象が生じた。2年債と5年債の利回り差がなくなり、2年債と5年債の間で長短金利が一時逆転する「逆イールド」現象が生じたのである。これは、2007年以来の出来事である。

 

上述の逆イールド現象は、今のところ一時的で、利回り曲線(イールドカーブ)の一部で生じた出来事に過ぎない。しかし、2年債と10年債などの間で逆転現象が生じるなど、本格的に「逆イールドカーブ」が定着してきた場合、市場における米国経済の成長鈍化シナリオは顕在化するだろう。

 

実際に、過去の景気後退局面では、逆イールド現象発生後、約1年ほどを経ると、米国経済の成長鈍化→リセッション入りが確認されている。市場では、2020年のリセッション入りを予想する声が強まっているが、逆イールド現象は、このシナリオを支持する。年末年始にかけて、米国債のイールドカーブの変化にも、注目を払っておきたい。

 

 

長谷川 建一

Nippon Wealth Limited, a Restricted Licence Bank(NWB/日本ウェルス) CIO

 

 

 

本稿は、個人的な見解を述べたもので、NWBとしての公式見解ではない点、ご留意ください。

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