本記事では、不動産屋の大手フランチャイズ店舗、UR取扱店の実態を見ていきます。

加盟料を支払えば「大手の不動産屋」を名乗れる

コンビニエンスストアの多くがフランチャイズだというのは皆さんもよくご存じだと思いますが、不動産屋もフランチャイズが多いことはご存じでしょうか。大手の不動産屋だと思っていた店が、実は中身は個人の不動産屋というのはよくあることです。

 

フランチャイズに加盟するには、多くの場合で最初に200~300万円の加盟料を支払います。その代わりに販売ノウハウ、商品などの提供、看板の使用許可のほか、経営アドバイザーによる経営指導を受けることができます。

 

たとえば、アパマンショップ、ホームメイト、ピタットハウス、エイブル、ミニミニ、マスト、センチュリー21など、集客するために加盟料を払って加盟し、年会費を納めるほか売上げの数パーセントを上納しなければいけません。そのうえ、指定の制服や販促グッズなどを強制的に買わせるフランチャイズもあり、売上げに関係なく、毎月定額の歩合を上納する契約もあるため、加盟した不動産屋はなかなか苦しい経営を強いられているところが多いのではないでしょうか。

知名度に頼るより「親切・丁寧」な対応が大切

土地勘もなく、ほとんど未経験の素人が不動産屋を始めようと思えば、大手の知名度の高い看板を使って営業することは、手っ取り早く利口な方法だと思います。ただ、最近は、競合を避けるために店舗数の規制があったり、人口割合による店舗間距離などの制限、宅建免許を取得してからの期間が短いとフランチャイズ契約をしてもらえない、といった噂も耳にします。加盟しようと思ったら、事前によく確認する必要がありそうです。

 

テレビなどのメディアでよく見るような知名度のある看板がかかっていれば、お客様が大手の不動産屋だと思って来店することも当然あります。ところが、いくら大手の有名看板を背負って、社員がテレビCMと同じ制服を着ていても、親身になって相談に乗ってくれるかどうかはその店その店で違うものです。

礼金、保証人、更新料、仲介手数料がかからないUR

URとは独立行政法人都市再生機構のことで、前身は日本住宅公団です。UR賃貸住宅はなんと、礼金なし、保証人なし、更新料なし、不動産屋に払う仲介手数料もなし、という物件で、入居希望は先着順のため抽選などもありません。

 

必要なものは、住民票と所得証明だけです。保証人や保証会社も必要なく、無職でも貯蓄があればOKです。もちろん外国人も入居できます。

 

初期費用は、敷金と日割り賃料のみ。長く住めば住むほどお得で、更新手続きがないため更新料も必要ありませんし、退去の際の現状復帰費用も少なく、ほとんどの場合で敷金が戻ってきます。また、耐震診断も実施していて、問題があれば補強や修理も適宜行っているため安心して住むことができるのです。この、ありえないほど好条件の物件がUR賃貸住宅なのです。

 

全国にあり、単身者向けからファミリー向けまで豊富な物件数ですので、皆さんもお部屋探しの際はURの物件を紹介してくれる不動産屋に相談することをおすすめします。

不動産屋は規定の条件をクリアすれば「UR取扱店」に

URの物件を取り扱っている不動産屋は、規定の条件をクリアして「あっせん制度」の説明を受けており、「UR取扱店」のステッカーが貼ってありますので、すぐにわかるはずです。

 

筆者の会社もUR紹介あっせん業者の指定を受けていますので、物件紹介や案内、詳しい説明ができるよう気を配っています。「仲介手数料を、ほかの名目で請求するような業者もいるのでは?」と思われる方もいるかもしれませんが、不動産屋は「あっせん依頼費」としてURから手数料を受け取り、入居者本人からはお金を受け取りませんので安心してください。

 

UR賃貸住宅のあっせん業者は、契約完了するとURから1カ月分の賃料と消費税があっせん依頼費として振り込まれます。このあっせん業者になるには、

 

①宅地建物等の取引業協会に加盟していること

②宅地建物取引業者の免許登録後1年を経過していること

③民間賃貸住宅の仲介等の営業実績があること

④「あっせん(紹介)制度」の説明を受けていること

 

以上4つの条件をクリアする必要があり、あっせん業者にならないとURの賃貸物件を扱うことはできません。

 

このURのあっせんも不動産屋の特権のひとつで、欠かせないものになっています。というのも、本当のことを言ってしまえば、物件はURのホームページで簡単に探すことができるうえに、不動産屋はお客様が気に入った物件や内見希望の物件をURの担当者に連絡するだけです。私の会社ではお客様と一緒に内見等をしますが、遠隔地の物件等の場合、現地での案内や内見、申し込み手続き、重要事項説明や契約まで、すべてURがやってくれるのです。本当は内緒ですが、いわば「丸投げ」の状態です。

 

当然、契約後のクレームなどもURにいくため、不動産屋のリスクはまったくありません。URは、住む人だけでなく不動産屋にも優しい法人なのです。

 

 

川嶋 謙一

株式会社未来投資不動産 代表取締役社長

 

本連載は、2016年10月21日刊行の書籍『誰も知らない不動産屋のウラ話』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

誰も知らない不動産屋のウラ話

誰も知らない不動産屋のウラ話

川嶋 謙一

幻冬舎メディアコンサルティング

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