今回は、物件価格が下がらない収益物件とはどのようなものか、その条件を見ていきます。※本連載では、株式会社ファミリーエージェント取締役社長渕淳氏著書、『中古一棟収益物件攻略完全バイブル』の中から一部を抜粋し、不動産投資初心者のために、具体的な物件の購入方法などを紹介していきます。

家賃相場の「底」に近い賃料設定のものを選ぶ

物件価格が下がらない収益物件とはどのようなものなのでしょうか? すでにお気づきの方も多いと思いますが、前述した5つの条件(①家賃収入が低下する、②投資家〈購入側〉の要求利回りの上昇がある、③経年による建物評価の減少、④土地相場の下落、⑤融資状況が悪い)と逆の条件を持つ物件を選べば、自ずと価格が下がらない物件になるのです。

 

(1)家賃が下がらない 

 

家賃が下がらない物件がそもそもあるのだろうか? と思われる方もいらっしゃいます。しかしながら、家賃相場にも底というのがあります。もちろん、建物の躯体に大きな問題があるとか、シロアリで床が腐っているなど基本的な部分に問題がある場合は論外ですが、基本的に問題がない場合は、家賃相場の底というのが必ず存在しています。

 

そのエリアで家賃相場の底に近い賃料を設定している物件を購入すれば、家賃は下がりにくくなります。家賃が下がりにくくなれば、物件価格も下がりにくくなるのです。賃貸物件の家賃は築20年で底を打つということが客観的なデータで証明されています。そうした物件を対象に物件選定をすることが重要になります。

 

(2)投資家の相場利回りの上昇がない

 

前述したように収益物件の相場利回りが上がることによって、家賃収入が変わらなければ物件価格が下がることになります。相場利回りが上がるというエリアは、それだけ投資家の投資意欲が低い、つまり投機性が高いエリアということになります。例えば、今後、大幅に人口減少が進行する地方の物件などがそうです。リスクが高いからこそ、利回りも高くなりがちです。そのような物件は相場の利回りが高くなる可能性が大きいといえるでしょう。 

 

では、相場利回りの急激な上昇がなく、安定した相場利回りが望めるような物件とは何かといえば、東京圏にある物件です。後ほど詳しく述べていきますが、東京都を中心とした神奈川県、千葉県、埼玉県の経済圏にある物件は常に入居需要があり、今後も人口減少などの影響を受けることが地方などと比べて少ないといわれています。

 

(3)土地価格に近い 

 

先ほど建物は資産評価上、耐用年数を上限として毎年費用計上をするために、価値が減っていくと紹介をしました。しかし、収益物件の資産は建物だけではありません。土地もあります。土地の価格は基本的に大きく変わりません。つまり、物件価格の変動要因である建物の価値がゼロになって土地だけになれば、物件価格は常にほぼ一定になる、というわけです。そんな物件はどのような物件かというと、中古の物件になります。 

 

新築の場合、建物と土地を合わせたものが物件価格になります。ちなみに建物と土地の価格を合わせる方法は、積算評価という資産評価の方法になります。積算評価とは、その名の通りで建物や土地といった資産の価格を積み重ねて評価するということです。そこから導き出された金額が積算価格です。 

 

新築当初は建物の割合が高いのですが、中古になると建物の価値が減少して土地の価値の割合の方が多くなっていきます。ですので、そもそも目減りする分が少ないというわけです。建物の価値が少なくなっているので、当然ながら物件の価格が下がりにくいというわけです。 

 

個人投資家の中には、融資が下りやすいという理由と、入居付けがいいという理由で新築物件を投資対象に選ぶ人が多いのですが、投資として見ると、新築物件は、毎年、建物の資産評価が下がるため資産価格の減少(反対に利回りは上昇する)が発生するとともに、築20年までは家賃の減少が発生することになります。この2つのマイナスによって、物件価格は大きく下がることになります。

 

全ての取引事例に当てはまるわけではありませんが、だいたい金融機関の目安として、路線価の1.2倍が土地の担保評価といわれています。 

 

路線価は次のサイトで誰でも調べることができます。 

 

http://www.rosenka.nta.go.jp 

 

路線価とは、一定の距離を持った路線(道路)に対して価格が決められているものを路線価といいます。道路に面した宅地の価格は全て同じという考え方になります。個々の敷地は形状などによって補正されます。路線価図には、1㎡あたりの単価が1000円単位で掲載されています。地図中の道路に185とあれば、その単価に1000円を掛けると18万5000円になります。 

 

仮に100㎡の土地が185と表記されている道路に面していた場合、18万5000円×100㎡で、その土地の路線価は1850万円になります。これを1・2倍すれば、2220万円になります。つまり、金融機関が評価するその土地の担保価値は2220万円となります。

 

その担保価値までだったら建物があってもなくても、土地で融資した金額を回収できるので金融機関は融資をしてくれるのです。したがって路線価の1・2倍の価格の7割から8割ぐらいの物件が基本的に安全性が高いといえます。 

 

融資上の評価を見るためにも路線価を調べることはとても重要です。担保価値が高ければ、次の投資もできるからです。

1億円未満の物件は、流動性が高く価格も下がりにくい

(4)物件のロットが小さい 

 

不動産投資のデメリットとして流動性が低いことがいわれますが、実際そんなことはありません。特に物件のロット(取引における最小単位)が小さい方が購入をしたいという投資家がたくさんいるので、流動性が高いものなのです。また、物件のロットが小さければ小さいほど金融情勢にはあまり左右されないというのがあります。 

 

例えば、ワンルームマンションに投資をする場合、中古のワンルームマンションであれば、都内でも1000万円以下で購入することができます。個人投資家の中にはキャッシュで購入する人もいます。そもそも購入に融資を使わなければ金融情勢に左右されることもありません。もちろん、物件のロットが小さいものはワンルームだけではありません。中古の一棟アパートでも都心から電車で60分ぐらいで、2000万円代の物件を見つけることができます。

 

一方、1億円を超えるなど物件のロットが大きい場合は、融資を活用しなければ購入自体が難しいというケースが多いため金融情勢に左右され、従って流動性も低いということになります。ただし、物件のロットが大きい方が、アベノミクスがスタートしたばかりの時のように金融情勢がよくなった場合にキャピタルゲインが大きく発生する場合もあります。 

 

物件ロットが小さい場合は、キャッシュで購入する投資家も融資を使う投資家もいます。少額の買い手が多いわけですが、その反面、物件の価格は維持されやすいというメリットがあります。 

 

物件のロットが小さいか大きいかというのは、首都圏の物件だと区切りがだいたい1億円になります。1億円を超えると急激に流動性は落ちてきます。しかし1億円未満の方が流動性が高いので、金額的には下がりにくい傾向があります。 

 

逆をいえば、一つの区切りになっている1億円を超える物件だと、そもそも買い手が見つからないケースが増えてきます。

 

もちろん、いろいろ物件を購入し続けて、最終的に3億円の物件を購入するというケースであれば、物件価格が下がってもダメージに対処することができます。しかし、不動産投資をスタートして間もない時に大きいロットの物件ばかりを買ってしまうと、物件価格が値下がった時にはすでに取り返しがつかず、大きな負債を負うこともあります。

 

(5)融資が付きやすい 

 

価格が下がるかそれとも下がらないかについては、次に自分の収益物件を買う人がいるかどうかによっても変わってきます。次の買い手が多ければ多いほど、わざわざ物件価格を下げて、キャピタルロスを発生させる可能性も低くなります。前述した通り、不動産投資は融資を受けてから投資をスタートすることが一般的になっています。そのため自分が購入する物件が、運用後に次の買い手の融資が付くかという視点で、物件を選定する必要があります。

 

 

長渕 淳

株式会社ファミリーエージェント 取締役社長

 

中古一棟収益物件 攻略完全バイブル

中古一棟収益物件 攻略完全バイブル

長渕 淳

幻冬舎メディアコンサルティング

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