本連載は、アメリカで企業の財務サポート等を展開するTwo Milesの代表、五十川裕久氏によるアメリカの最新会計税務の情報をご紹介します。今回は、日米間の国際相続において、迷いやすいケースとその回答を見ていきます。

米国永住者に、日本在住の親の相続が発生した場合は?

日米間にまたがる相続問題はいろいろケースが考えられますが、ここでは、皆さんが疑問に思われることを、少しずつ取り上げていきます。なお、下記で説明することは、制度の概要になりますので、実際の個別のケースの判断は、専門家にご相談下さい。

 

 Q1  アメリカに住んでいます(永住権)が、日本にいる親が亡くなり、日本の親の財産を相続した場合に、日本の相続税を納める必要がありますか。また、アメリカ国籍を取得していたら、課税はどうなりますか。

 

 A1  原則、日本で相続税を納める必要があります。これは、日本国籍でもアメリカ国籍でも同じです。

 

 Q2  上記【Q1】で課税の対象になるのは、日本国内にある財産だけでいいですか。

 

 A2  いいえ。日本国内、国外を問わず、すべての財産が課税の対象になります。

 

 Q3  上記【Q1】で例外がありますか。

 

 A3  あります。①亡くなった方が、10年を超えて日本国外に住所があり、かつ、②日本国籍を有している相続人が、10年を超えて日本国外に住所があるか、または、日本国籍がない相続人(この場合は、10年を超えて日本国外に住所がある必要はなし。)の場合は、日本国内の財産に対してだけ課税されるので、日本国外の財産には課税されません。つまり、亡くなった方、相続する方の両方が日本国籍の場合は、両方が10年を超えて日本国外に住所がある場合が課税の例外になります。

 

 Q4  財産を相続したら、すべてが課税の対象ですか。

 

 A4  いいえ、基礎控除額というのがあり、それを超えた部分が課税対象になります。現在の基礎控除額は、〔3000万円+600万円×法定相続人の数〕になっていますので、ご主人が亡くなり、配偶者と子どもが2人いる場合は、〔3000万円+600万円×3=4800万円〕までは、課税されません。2億円の相続財産があった場合に、課税対象は、2億円-4800万円=1億5200万円となります。

日本で相続税を納税。米国での納税はどうなる?

 Q5  相続財産は、どうやって相続人の間で分けますか。税法で決まっていますか。

 

 A5  いいえ、税法は、財産の分け方までは決めていません。多くの場合は、亡くなった方が、生前に遺書書を残し、だれに何の財産をいくら相続させるかを決めておきます。また、遺言書がない場合は、民法には、法定相続分という規定があり、これによると、配偶者と子どもがいる場合は、配偶者が1/2、子どもが1/2になっていて、子どもが2人以上いる場合は、1/2を子どもの数で頭割りします。つまり、子どもが2人いる場合は、1/2÷2=1/4ずつ2人でわけることになります。3人いる場合は、1/2÷3=1/6ずつわけることになります。実際には、遺言書がない場合は、相続人の間で相談して、だれが何の財産をいくら相続するかを決めます。家族同士でも、これがすんなりいかないというケースもよく耳にします。

 

 Q6  相続財産がありますが、一方、借入金などの債務があった場合の相続は、どうなりますか。

 

 A7  相続税の課税対象になるのは、遺産総額から借入金や葬式費用などの債務を差し引きますが、逆に、死亡保険金などのみなし相続財産があると、それを加えたものです。財産が大きくても、借入金やローンが残っていると正味の財産は少なくなります。

 

 Q7  日本で相続税を納めた場合、アメリカで納税はしなくてもいいですか。

 

 A7  日本とアメリカは税法が違います。アメリカでは、遺産税と言います。アメリカにある財産を相続した場合は、遺産税の対象ですが、日本にある財産の相続は、アメリカでの納税は必要ありません。但し、一定金額の相続・贈与があると、報告義務があります。

本連載に記載された情報に関しては万全を期していますが、内容を保証するものではありません。本連載の情報を利用した結果による損害、損失についても、著者ならびに本連載制作関係者は一切の責任を負いません。投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。

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