今週(9/10〜9/16)の国際マーケット展望をお届けする。7日に発表された8月の米国雇用統計では平均賃金の伸び率が2.9%と、FRBが警戒する3.0%に迫り、今月25〜26日のFOMCで今年3回目の利上げが実施される確率が高まった。12日に米生産者物価指数(PPI)、13日に米消費者物価指数(CPI)の発表が予定されており、物価上昇圧力がどれほどかかるかに注目だ。

今週(9/10〜9/16)の国際マーケット展望

 

・8月米国雇用統計…時間当たり平均賃金の伸び率が2.9%と臨界点に近い。9月、12月に加え、2019年にもさらに2回の利上げが実施される可能性あり。

 

・日本市場…日米通商問題を懸念し、円高ドル安。続く災害に加え、貿易摩擦の影響も出てくると、好調が続く企業業績が圧迫される恐れも。

 

・今後の動き…堅調な経済指標、好調な企業業績という支えが、情勢的な不安定感という重しに耐えているが、振り払うには時間を要する。

 

・今週注目の経済指標…12日米生産者物価指数(PPI)、13日米消費者物価指数(CPI)が発表予定。物価上昇の圧力は見られるが、制御不能レベルではないと予想。

8月米国雇用統計…2019年も2回の利上げ実施か

注目された8月の米国雇用統計では、非農業部門の雇用者数が20万1,000人増と、市場予想の19万1,000人増を上回った。時間当たり平均賃金は前年比で2.9%上昇と前月(2.7%増)からの伸びが大きく、2009年6月以来、約9年ぶりの高い伸びを示した。失業率は、予想通り3.9%で、「完全雇用状態」を肯定するような数字だった。

 

時間当たり平均賃金の前年同月比2.9%増だが、米連邦準備制度理事会(FRB)は、完全雇用状態のなか、賃金の伸びが3.0%を超えて上昇する圧力をもっとも警戒しており、今月25~26日に開催される連邦公開市場委員会(FOMC)で、今年3回目となる利上げを実施するだろう。

 

物価上昇を警戒するなか、警戒水準を超えて物価の上昇が続き、このままの経済状態が続けば、引き続き12月にも利上げの公算が大きいと筆者は考えている。金利先物で見ても、年内あと2回の利上げ実施を市場は織り込んでいるが、今回の8月雇用統計を受け、FRBが2019年も2回の利上げを実施する確率が上昇した。

日本市場…日米通商問題の先行き不透明感を懸念

米ドル金利の上昇基調が維持されるとなれば、ドル円以外の通貨では、ドル高の流れは継続するだろう。この米ドル金利の上昇を受けて本来はドル円相場もドル高で反応するべきだが、トランプ米大統領が日米通商問題を取り上げ、日本にも強硬姿勢で臨むことを示唆しているとの報道が米ドルの上昇を妨げた格好となっている。

 

米国とカナダのNAFTA(北米自由貿易協定)の再交渉、2,000億ドル(約22兆1,000億円)相当への中国製品への関税上乗せ準備の進展に加えて、日本とも貿易を巡り波風を立てることは、市場の不透明感を煽りかねず、ドル円のみならず、株式市場にとっても相場の重しとなるだろう。特に、日本株にとっては、台風や地震といった災害の影響が、物理的心理的にも出てくる上に、貿易摩擦となれば、好調を維持してきた企業業績の圧迫要因になりかねない。

 

今後の動きは?…堅調な経済指標 VS. 情勢の不安定感

一連の経済指標を見れば、引き続き米国経済の堅調さは確認されている。年初からの米国ドル円の税制改革や規制緩和政策が、中小型株への投資にポジティブな環境をもたらしており、先々週までの市場最高値の更新に見られるように、こうしたセクターへの上昇のモメンタムが、引き続き株式相場を支えると期待する。

 

一方で、リスクフリーレートの上昇は、リスク資産への投資に対し、消極的な姿勢を招く。トランプ政権が仕掛ける通商摩擦や、トルコリラなど一部新興国の不安定さが、不透明感を増幅させかねない状況は、容易には抜け出せないだろう。

 

今週は注目すべき経済指標では、12日に米生産者物価指数(PPI)、13日に米消費者物価指数(CPI)が発表を予定されている。冒頭に述べたとおり、物価上昇圧力を確認することとなるだろうが、物価はコントロールが効かないという水準ではないと考えている。

 

 

 

長谷川 建一

Nippon Wealth Limited, a Restricted Licence Bank(NWB/日本ウェルス) CIO

 

 

本稿は、個人的な見解を述べたもので、NWBとしての公式見解ではない点、ご留意ください。

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