仮想通貨取引にかかる消費税を撤廃し、改正資金決済法(通称・仮想通貨法)をいち早く施行するなど、仮想通貨に関する法整備は世界的に見ても進んでいた日本。しかし現在、たとえば国内居住者向けのICOを実質禁止するなど状況は一変している。日本の仮想通貨取引をめぐる環境はどうなるのか? そして税制の整備は進むのか? 仮想通貨と国際税務の双方に詳しい柳澤賢仁氏と、「ミス・ビットコイン」こと藤本真衣氏の対談をお届けする。第4回のテーマは「仮想通貨の魅力について」。

スタートアップが当たり前!? イスラエルの魅力とは?

柳澤 私は国際税務のなかでもとくに「非居住者」が専門分野なのですが、藤本さんは将来的に海外への移住はされないんですか?

 

藤本 住むなら断然イスラエルですね。2回行って、本当に住みたくなりました。ブロックチェーン関連プロジェクトも非常に多いので、ビジネス的にも魅力があります。

 

柳澤 イスラエルってスタートアップ企業向けのファイナンスが非常に発達していて、GDP比で見た投資額がアメリカの2倍近くあるんですよね。当然、額は比較になりませんが、密度がものすごく濃い。

 

「イスラエルにはスタートアップしないとダサいって文化があるようです」(藤本)
「スタートアップしないとダサいって文化がある」(藤本)

藤本 男女ともに徴兵制があるので、みんな兵役に就くんですけど、そのあとにスタートアップしないとダサいっていう文化があるようです(笑)。だから、「就職」に対する意識が希薄で、まず起業、という意識の若者ばかり。日本のサラリーマン文化とは対照的です。けど、私もフリーランスでずっとやってきたので、イスラエルの文化がしっくりくるんですよね。

 

柳澤 ただ、タックスヘイブンではないですよね。イスラエルの税務当局は「仮想通貨は資産」として課税する考えを示しているようです。

「勝手に取られた税金が戦争に使われるのは許せない」

藤本 私は海外の税制については詳しく把握していないんですけど、ロジャーの言葉で非常に印象に残っている言葉があるんです。初めて会ったときに、「真衣は自分が払っている税金が何に使われているか考えたことある?」って聞かれたんです。たぶん、ほとんどの人がそこまで考えたことがないと思うんですけど、彼は「勝手に取られた税金が戦争に使われるのは許せない」「税金を使って罪のない子供が殺されることが本当に許せない!」って、涙が出そうになるほど熱くなって話してくれたんです。普段は明るくて、面白い人ですけど(笑)。

 

柳澤 ロジャーはアメリカ国籍を捨てたんですよね。

 

藤本 今はカリブ海にあるセントキッツ島の国籍です。

 

柳澤 お金を払えば誰でも国籍を買える国もあるようですし、実際とんでもないお金持ちって相続対策で国籍を外すことまでも考えるんですよね。でも、ロジャーの場合は自分の信念で国籍を捨てたというのがスゴイ。

 

藤本 純粋なリバタリアン(個人的・経済的自由を重視する思想)ですよね。その思想には非常に刺激を受けています。ロジャーがいたことで、何に対しても「これは正しいのか?」って考えるようになった。「人に支配されたり、国に管理されて生きるだけでなく、もっと自分でコントロールできることがあるんじゃないか?」と考えるようになりましたね。

「何に対しても、これは正しいのか?って考えるようになった」(藤本)
「何に対しても、これは正しいのか?って考えるようになった」(藤本)

柳澤 その点で、リバタリアニズムとビットコインは非常にシンクロしやすいですよね。リバタリアンには「ビットコインはフィアット(法定通貨)に取って代わる!」という議論が好きな人も多いですよね。

 

藤本 私も好きです(笑)。

トークンを使えば「本当の価値の交換」が可能に

柳澤 僕もビットコインは本当にスゴイなっていう思いはあって。というのも、規制できないじゃないですか? 発行体も管理主体もないから、どの国も取り締まれない。それでいて、ユーザーにはしっかり、その価値が認識されている。一方で、今のICOは発行体があるから、規制されてしまう。正直、この先ビットコインを超えるコンセプトのICOは出てこないように思える。

 

「トークンで人と人とが繋がる世界観って素敵じゃないですか?」(藤本)
「トークンで人と人とが繋がる世界観って素敵じゃないですか?」(藤本)

藤本 確かにそうですね。ただ、Peer to Peerで個人が個人から直接資金調達ができる仕組みを上手に活用しているプロジェクトは多いと思います。フリマアプリのメルカリ、配車アプリからビジネスを広げているUber、民泊仲介のAirbnbと、中間マージンを抑えたC to Cビジネスが急成長していますけど、ビットコインとそれを支えるブロックチェーンは資金調達のC to Cを実現したインフラのようなものだと思うんです。

 

2020年には500億を超えるIoTデバイスがネットワーク上に接続されると言われていますけど、人とモノのコミュニケーションが広がるなかで、そのブロックチェーンに乗っかるトークンはコミュニケーションの1つの手段として浸透していくと思う。単純に紙幣や貨幣が不便だって問題もありますが、未来に思いをはせると、数あるICOのなかで個人と個人を密接に繋げるトークンが出てくると思うんです。トークンで人と人が繋がる世界観って素敵じゃないですか?

 

柳澤 その可能性は感じますね。

 

藤本 何で自分がこんなに仮想通貨に対してワクワクしてるんだろう?って、ちゃんと考えたことがあったんです。そのときに気付いたのは、ブロックチェーンを利用して、本当の価値の交換が可能になるということでした。私自身、価値があるトークンしか持っていないっていうのもありますけど。

 

たとえば、MediBloc(MED)は自分の医療データをブロックチェーン上で管理できるトークンで、同じ病気で悩んでいる人に「私の医療データを参考にしてください」って提供できて、その代わりに一定のMEDを受け取ることができる。もちろん、日本円などの法定通貨を絡めても実現できるとは思うんですけど、その場合にはさまざまなコストが発生するじゃないですか? 価値のあるものを無駄なコストを排除して必要とする人と共有できるっていうのがトークンエコノミーの素晴らしい点だと思うんです。

 

(つづく)

 

藤本真衣

グラコネCEO/「KIZUNA」ファウンダー/withB adviser/GMOインターネット adviser / LayerX adviser/BRD advisor /MediBloc advisor / Zeex ambassador

神戸生まれ神戸育ち。大学在学中に家庭教師派遣の営業に夢中になり、大学中退。19歳からフリーランスとして活動開始。その家庭教師派遣の営業では日本トップの成績を納める。上京した後には、子供向けWebコンテンツ「キッズ時計」の立ち上げや、全国の「いいね!」を集める「いいね!JAPAN」などのコンテンツプロデュースに関わる。そのなかでビットコインに出会い、2014年にグラコネを設立後はブロックチェーンに関連するイベントプロデュースやマッチングビジネスを数多く手がけるようになる。「ミスビットコイン」の愛称で広く知られている。2011年から暗号通貨業界に携わり、印象的な経歴で業界の発展に寄与している。

 

柳澤賢仁

柳澤国際税務会計事務所代表/柳澤総合研究所代表/税理士

慶應義塾大学大学院経済学研究科修士課程修了後、アーサーアンダーセン税務事務所、KPMG税理士法人を経て2004年に独立。独立後に支援したスタートアップのなかからすでに2社がIPO。起業家の海外支援やビジネスモデル構築、ベンチャーファイナンス、M&A、海外税務のアドバイザリー業務など幅広く手掛ける。主な著書に『お金持ち入門』(共著)、『資金繰らない経営』などがある。

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