今週(8/6〜8/12)の国際マーケット展望をお届けする。3日に発表された米国の雇用統計を踏まえた動き、米中貿易摩擦の影響などが注目だ。

今週(8/6〜8/12)の国際マーケット展望

 

・7月の米国雇用統計発表。失業率は2ヶ月ぶりに4.0%を下回る3.9%。米国経済の堅調な数値は、市場が抱える貿易摩擦等への不安を払拭できるか?

 

・中国が、米の追加制裁(2,000億ドル相当に関税)への対抗措置として、米からの輸入品600億ドル相当を関税へ。金額の差分は大きいが、市場への影響力で対抗か?

 

・今週の注目ポイント…31日に発表された日銀のイールドカーブコントロールへの新たな方針を、市場がどのように注目するのか?

米失業率3.9%に減…年内さらに2回の利上げを後押し

米労働省が8月3日に発表した7月の米国雇用統計は、米国経済の堅調ぶりを改めて確認する内容となった。失業率は3.9%と前月の4.0%から低下し、2カ月ぶりに4.0%を下回る数値。賃金の伸びも市場予想と一致し、雇用市場の底堅さを示した。

 

非農業部門の就業者数は季節調整済みで15万7,000人増と市場予想の19万人増、前月6月の21万3,000人増からは伸びが鈍化したものの、労働市場の堅調さに大きな変化は見られないと受け止められた。米国経済の堅調さに変化はないことが、改めて確認された形である。1日のFOMCで景気判断は上方修正されたが、これに沿った形であり、このまま行けば、年内さらに2回の利上げ見通しについても肯定されるだろう。

 

 

企業業績では、好決算を発表する企業が多く、米株は堅調。先日時価総額が1兆ドルを超えて話題となったアップルも続伸した。

米中貿易摩擦…中国の対抗措置が市場に与える影響は?

貿易摩擦に関連しては、中国政府が早速、米国に対して対抗措置を発表した。トランプ米政権による追加貿易制裁(2,000億ドル相当の中国製品に25%の関税)への報復策として、中国は、米国からの輸入品600億ドル(約6兆7,000億円)相当に最高25%の関税を上乗せするという内容だ。

 

関税の対象となる輸入額の金額的には、米中間でバランスしないが、中国側は、冷淡に対抗措置を打ち出している感がある。米国の主要輸出品である航空機や農産物などで、確実に米国への影響は与えられると踏んでいるのだろう。

 

実際に、3日の株式市場でも、貿易摩擦激化への警戒感から、中国との取引額が大きく業績への影響が懸念される航空機大手ボーイングなどは売られ、ダウの上値を抑えた。

統計の数字は「市場の弱気」が過大であることを示唆?

前稿でも指摘したが、堅調な経済状態や、史上最高水準にある企業業績といった裏付けをもってしても、市場は相変わらず、それらの好材料についていくことに躊躇している。

 

市場にとって、不安材料はふたつあり、ひとつは米中貿易摩擦を巡る懸念、もうひとつは、FRBが果敢に利上げを継続してきたことから、金利上昇が米国経済の腰を折ってしまうという懸念である。

 

ただ、経済統計が示す客観的な数字は、市場の景気見通しが弱気に過ぎることを示唆しており、今週の金融市場は、前述の懸念を引き続き抱えて神経質な展開ながら、底堅く推移することだろう。

 

なお、先週31日に日銀が発表したイールドカーブコントロールに関しての新たな方針が、市場にどう消化されていくかにも、注意は払っておきたい。

 

 

長谷川 建一

Nippon Wealth Limited, a Restricted Licence Bank(NWB/日本ウェルス) CIO

 

 

本稿は、個人的な見解を述べたもので、NWBとしての公式見解ではない点、ご留意ください




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