今回は、賃貸経営における「定期借家契約」のメリット・デメリットについて見ていきます。※本連載は、満室経営株式会社 代表取締役・尾嶋健信氏の著書『不動産投資は空室物件を満室にして超高値で売りなさい』(ぱる出版)より一部を抜粋し、「満室ライフサイクルチャート」を活用した空室ゼロの賃貸経営の進め方を紹介します。

定期借家契約の「基本3原則」とは?

ここで定期借家契約についてお話しします。

 

定期借家契約には、基本の3原則というものがあります。

 

①書面による契約

普通借家の場合は口頭レベルの契約でもかまわないところが、定期借家契約になると書面による契約をする必要があります。

 

②貸主より事前書面交付と説明義務→別書面で行う(代理可能)

これは1枚の契約書から分離した紙で「この契約は定期借家契約で更新はありません」という旨を、貸主から借主へ書面をもって説明する義務があります。貸主が入居者とこの書面を取り交わすために、契約時に必ず貸主が立ち会う必要はなく、代理人を立てることも可能です。

 

不動産管理会社が大家さんから委任を受けて、入居者に説明もできます。普通借家契約と違うところとして、書面をもらう手続きがひと手間増えます。管理会社が貸主に委任状をもらってから契約をしますので、ここでも業務上の手間がかかります。

 

③契約終了手続き→6カ月前までに契約終了の旨を通知

2年間の定期借家契約であれば、これが6カ月前までに契約終了の旨を通知しなければいけないということで、これにも不動産管理会社の手間がかかります。

 

このように、3原則を押さえた上で契約を取り交わすのは、管理会社にとって煩雑な手続きが多いのです。そこまでして定期借家契約をするメリットが管理会社には見受けられません。その結果、定期借家契約に対して前向きの回答を出さない管理会社が多いのです。

大家にとっては「定期借家契約」は有利だが・・・

このように普及の進んでいない定期借家契約ですが、大家さんにとっては有利な点が多くあります。定期借家契約で入居すれば、不良入居者を合法的に退去させることができます。具体的には立ち退き業務が発生したとき、立ち退き料を支払わずに引越しをしてもらうことが合法的に可能です。

 

またオーナーの方で決定した家賃をそのまま使える、契約期間をオーナーが自由に決められるなど、契約内容においてオーナーの裁量性が大きいことが特徴です。これらを考えると不良入居者の排除に向いている契約といえます。

 

【定期借家契約の5つのメリット】

・不良入居者を立ち退かせることができる

・家賃の改定ができる

・立退き料不要

・建物明渡し請求手続き不要

・契約期間の自由設定

 

ここで考えなければいけないのが、全国的に普及されていない定期借家を前向きに導入することが、空室対策や賃貸経営からみて、どのように扱われるかということです。

 

現在、普通借家契約が100軒あるうち、定期借家契約は5軒しかありません。私が北海道から沖縄までコンサルティング業務をやっている中で、定期借家契約を実践しているのは東京・神奈川の関東圏と大阪といった首都圏が中心です。

 

つまり特別扱いの物件となります。賃貸営業マンにしても定期借家契約での契約をした経験が乏しいですから、「とても面倒な物件」と位置付けられる可能性もあります。その点から考えても、営業マンが積極的に定期借家契約の物件を紹介するとは思えません。むしろ物件紹介の優先順位が下がる可能性があります。

 

また、入居者からみても、普通借家契約より定期借家契約のほうが、あきらかに内容が不利になります。

 

営業マンから「いや、これは不良入居者の排除のためにしたもので、再契約を前提とした再契約型の定期借家契約です!」と説明を受けたとしても、入居者としても合法的に立ち退かされるリスクを背負わなければなりません。

 

このように空室対策として考えた場合、定期借家契約の積極的な導入は、かえってハンデを背負いかねないことも理解してください。

 

定期借家契約は不良入居者を排除する前提としている面からすれば、普通借家契約でも極力、不良入居者を入れない入口対策は可能です。また貸主が管理会社になって、使用貸借の契約を結ぶことにより、定期借家契約と同等の契約形態を築くこともケースによってはできます。

 

たとえば、連帯保証人つきの物件では、普通借家契約の場合でも、連帯保証人に解約権を与えることにより、その入居者を解約させることができます。

 

契約自体は普通借家契約ですが、「覚書を交わす」「特約部分に条文を足す」ことで可能です。あくまで一例ですが、不良入居者を入居させない入口対策と、しっかりとした契約で、定期借家契約と同じように不良入居者を退去させられるのです。

「外国籍の方」との契約は最初から定期借家契約で

空室対策を定期借家契約で、どのように活かすのかを考えてみましょう。募集時点では普通借家契約で募集して、申込み内容次第で、定期借家契約を提案します。

 

まず外国籍の方であれば、基本的には定期借家契約を当然の契約としてかまいません。外国籍の方からみると日本の普通借家契約はむしろ「異常」で、外国籍の方との契約の場合は最初から定期借家契約で問題ありません。

 

外国籍の定期借家契約の場合は、オーナーが期間を決めることができますから、場合によっては3カ月単位にしたり、6カ月単位にしたり、マンスリーのような形で定期借家を結んでもよいと思います。

 

このケースで多いのは、当初を3カ月の定期借家契約で、2回目の契約を364日にします。なぜ365日ではなく、364日にするかといえば、定期借家契約では、1年以上の契約の場合、契約終了の1年前~6カ月前までに終了通知を出す必要があるためです。これが1年未満であれば必要がないとされています。

 

家賃の滞納などに問題がない入居者であれば、再契約を前提とした定期借家契約を結ぶことにより入居者は基本的に住み続けられます。オーナー側からすれば、不良入居者でない限り、住み続けてもらうことが可能になります。

 

たとえ日本国籍の方でも、家賃を払ってくれるか不安に感じたら、定期借家契約を提案してリスクヘッジするやり方ができます。

 

いずれの場合も、募集時点は普通借家契約で募集するのがポイントです。

不動産投資は空室物件を満室にして超高値で売りなさい

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尾嶋 健信

ぱる出版

私は、日ごろより、コンサルティングや塾を通して、不変的なノウハウを言い続けています。空室対策や満室経営の根本は変わりませんが、その間、様々な新しいノウハウやツールが出てきました。 本書はそれらを加えたうえで、空…

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