前回は、経営承継に成功した事例として、経営承継サポートに依頼があった経緯を紹介しました。今回は、社長へのヒアリングで会社の課題を明らかにし、課題解決に最適な人材を選定するまでを見ていきます。

社長へのヒアリングで「会社の課題」を抽出

〈弊社のご提案〉

高岡社長にお会いして、インタビューを進めていくうちに、社長ご自身が技術者出身であるので、会計・経理に関しては、ほぼどんぶり勘定になっていることが判明。細かいことは顧問税理士に任せているらしく、あまり把握されていなかった。

 

人材教育に関しても、技術中心に教育が行なわれており、そのため、経営に関しては高岡社長の右腕になれる人材が社内で育っていなかった。このことについては、高岡社長も後悔をしていたが、ご自身も幹部教育を受けたことがなく、相談相手もいなかったため、着手するのが難しかったようだ。

 

また、後継者についてお聞きすると、ご子息が1人いるものの、高岡氏の故郷である富山県で中学校教師をしていて、それが、小さいときから夢見てかなえた天職であると本人は考えているため、退職して立山建築を継ぐ可能性はないとのこと。

 

以上のことから課題を抽出すると、次のようになる。

 

●社内の情報共有がうまくいっていない→指示命令系統が整っていない

 

●営業の方法が確立されていない→営業分野でのPDCAサイクル(Plan〈計画〉→Do〈実行〉→Check〈評価〉→Action〈改善〉)が回っていない

 

●営業ができる方がいない→社内教育ができていない

 

●会計・経理を含め計数管理に不安がある→利益が出ているのか不安

 

そして、これらの課題を解決する人材要件として、次の2つが挙げられる。

 

●大手の建設会社(できれば、個人向け営業)の経験者→指示命令系統が整っている会社で、予算を持って現場で営業をした経験がある方

 

●予算をもって部署をマネジメントしていた経験者→部下の教育経験があり、また、ご自身も会社から管理職として教育を受けている方

 

これらの要件を満たす方を、将来の経営者含みで、ご入社時には、営業部長クラスで採用するようご提案をし、ご承認を得た。

「後継者候補」として、建材メーカーの執行役員を選定

〈人材の選定〉

その後、弊社のほうで、約3か月をかけて探索と面談を重ね、最終的に次の方をご紹介することになった。

 

●戸波氏(五十四歳・男性)

 

転職経験過去1回。直近は、中堅規模の建材メーカーで、営業統括の執行役員をしており、80人以上のマネジメントを経験している。

 

大学卒業後、大手住宅メーカーで戸建住宅営業を経験。トップセールスに何度もなり社長賞を受賞。その後、中間管理職を経て、社内の事業企画部門に移動。西日本全域の数値管理をする立場になったが、やはりまだ、現場にいたいという思いと、大手企業ということもあり、将来のポジションが決まっている閉塞感を感じ、40歳を前に、直近の企業に転職をした。

 

直近の企業は、同族企業といえども風通しのいい社風であり、営業現場で成績を上げていった戸波氏は、とんとん拍子に出世していき、営業統括の執行役員になった。

 

しかし、この春、現社長の40歳のご子息が、戸波氏の上司である取締役に就任。戸波氏は、年下の上司ができたことはあまり気にしていなかったが、社長のご子息のほうが、戸波氏に大変気兼ねしている様子が多くみられ、後進に道を譲る意味で、新天地を探していた。

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