CCCのコントロール…サプライヤーとの共存共栄を図るには?

近年の、いわゆる下請法関連の改正により、下請事業者の生産性改善と賃上げに向けて、親事業者側の協力が強く求められている。多くの場合、親事業者は支払サイトを短縮する必要があり、キャッシュフローの改善が欠かせない。そうした中、現金を回収するまでの日数である「キャッシュコンバージョンサイクル(CCC)」の重要性が注目されている。本連載では、財務戦略におけるCCCの重要性と改善のポイント等について、一橋大学大学院の野間幹晴准教授とTranzaxの小倉隆志社長が解説する。第4回目は、「サプライヤーとの共存共栄」の視点で考えるCCCについてである。

サプライヤーとの共存共栄を実現している企業の事例

一橋大学大学院 国際企業戦略研究科
准教授 野間幹晴 氏
一橋大学大学院 国際企業戦略研究科
准教授 野間幹晴 氏

野間 キャッシュコンバージョンサイクル(以下CCC)は企業単位で考えるだけでなく、サプライチェーン全体で見ることも重要です。自社のCCCを短くすることばかり優先し、取引先のCCCが長くなることを放置していると、重要な取引先が弱体化したり離れていくということにもなりかねません。

 

小倉 日本の場合、その点については下請事業者との取引条件の改善を国が強く求めています。

 

野間 サプライヤーとの共存共栄という視点からCCCを考えている企業の例として、ここでは衣類や小物のセレクトショップを運営しているユナイテッドアローズを取り上げたいと思います。

 

ユナイテッドアローズの棚卸資産回転日数は比較的長く、120日ほどです。なぜなら、季節が変わると新商品を入荷しシーズンのピークまで保有し、売れ残った場合はアウトレットに回すので、平均4か月分の在庫を持たざるを得ない。

 

一方、同社のサプライヤーは企業規模の小さいイタリアなどのブランドメーカーが多く、トヨタのジャストインタイムとは反対に、サプライヤーが商品をつくったら、なるべく早く仕入れて、早く代金を支払っています。同社の競争力の源泉は、優れたサプライヤーから優れた商品をいかに早く仕入れるかにあるからです。

 

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CCCをサプライチェーン全体で見る重要性

Tranzax株式会社 代表取締役社長
小倉隆志 氏
Tranzax株式会社 代表取締役社長
小倉隆志 氏

小倉 自社のCCCをただ短くすればいいのではなく、サプライチェーン全体のCCCをマネジメントすることが重要なわけですね。

 

野間 同じファッション関連企業であるファーストリテイリングの棚卸資産回転率は20日前後とはるかに短くなっています。ファーストリテイリングの場合、そもそもユナイテッドアローズとはビジネスモデルも経営戦略も異なっており、単純に棚卸資産回転日数だけ比較してみても意味がありません。

 

むしろ、ユナイテッドアローズはサプライチェーンの全体のCCCを考慮して、自社の競争優位をいかにつくるかに腐心しています。CCCはどうあるべきか、どうすることで自社の競争優位につながるかという戦略的な発想をしている点が、ユナイテッドアローズの特徴だと思います。

 

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取材・文/古井一匡 撮影/永井浩 ※本インタビューは、2017年12月18日に収録したものです。

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連載下請法改正! 親事業者の財務戦略を変える「キャッシュコンバージョンサイクル(CCC)」入門

一橋大学大学院
国際企業戦略研究科 准教授

一橋大学商学部卒業、同大学大学院商学研究科修士課程修了。同大学院で博士後期課程修了(博士(商学)取得)。2002年横浜市立大学商学部専任講師、2003年同大学助教授。2004年10月、一橋大学大学院国際企業戦略研究科助教授に就任し、2007年から現職。2010年から2011年まで、コロンビア大学ビジネススクール・フルブライド研究員。バンダイナムコホールディングス社外取締役。経済産業省企業報告ラボ座長。研究分野は財務会計、企業価値評価、企業変革。

著者紹介

Tranzax株式会社 代表取締役社長

一橋大学卒業後、野村證券に入社。金融法人部リレーションシップマネージャーとして、ストラクチャード・ファイナンス並びに大型案件の立案から実行まで手掛ける。主計部では経営計画を担当。経営改革プロジェクトを推進し、事業再構築にも取り組んだ。2004年4月にエフエム東京執行役員経営企画局長に。同年10月には放送と通信の融合に向けて、モバイルIT上場企業のジグノシステムを買収。2007年4月にはCSK-IS執行役員就任。福岡市のデジタル放送実証実験、電子記録債権に関する研究開発に取り組んだ。2009年に日本電子記録債権研究所(現Tranzax)を設立。

著者紹介

企業のためのフィンテック入門

企業のためのフィンテック入門

小倉 隆志

幻冬舎メディアコンサルティング

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