今回は、離婚における「清算的財産分与」の申し立て・争点整理の方法を見ていきましょう。※本連載は、弁護士として活躍する森公任氏、森元みのり氏による編著、『2分の1ルールだけでは解決できない 財産分与額算定・処理事例集』(新日本法規出版)の中から一部を抜粋し、財産分与の概要と、分与対象財産の確定方法を説明します。

申立ての趣旨は「より具体的に」特定する

◆実務での審理手順

 

1 財産分与の申立て

 

(1) 離婚成立前

離婚成立前は、夫婦関係調整調停申立事件(離婚)において、付随事項として財産分与を請求することとなる。調停が不成立となり、離婚訴訟を提起する場合には、訴訟に附帯して申し立てる(人訴32①)。

 

(2) 離婚成立後

財産分与の調停を申し立てる(家事244・別表2④)。調停が不成立となった場合は、調停申立時に審判の申立てがあったものとみなされるので、自動的に審判に移行する(家事272①④・別表2④)。

 

(3) 義務者からの財産分与申立ての可否

義務者からの財産分与の申立てを認めた裁判例もあるが(神戸地判平元・6・23判時1343・107)、実務上は、財産分与は、権利者から、義務者に対し請求するものであり、義務者からは請求ができないとする消極説が主流である(大阪高判平4・5・26判タ797・253)。

 

2 申立ての趣旨

 

申立て段階では、婚姻関係財産の全貌が明らかになっておらず、申立ての趣旨を「被告は、原告に対し、財産分与として、相当額を支払え。」などと記載することが多い。

 

しかし、審理が進んだ段階では、申立ての趣旨を具体的に特定することが望ましい。財産分与の主文については、松本哲泓「財産分与審判の主文について」家月64巻8号106頁が参考になる。

 

また、分与を命じる主文については、仮執行宣言は付せないこと、遅延損害金は判決確定の翌日からとなることに注意が必要である。

争点整理は通常「3つの手順」で行われる

3 争点整理の方法

 

清算的財産分与の争点整理は、通常、①清算の対象となる資産及び負債を特定し、②対象となった資産及び負債を評価し、③分与割合(多くの場合は2分の1)を確定した上で、④具体的な分与方法を決定する、という手順で行われる。

 

東京家庭裁判所では、財産分与が争点となっている場合、婚姻関係財産一覧表の提出が求められる。婚姻関係財産一覧表のひな形は、裁判所のウェブサイトで入手することができる。

 

[図表]資料・婚姻関係財産一覧表

 

 

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