日銀が「物価上昇率2%」という目標を達成できない理由

前回は、資本主義経済における銀行の「信用創造」について取り上げました。今回は、日銀が「物価上昇率2%」という目標を達成できない理由を見ていきます。

預金と貸出金の差額「預貸ギャップ」が244兆円に拡大

前回の続きです。ところが近年、銀行のこうした「マネーを生み出す」機能が働かなくなっています。具体的には、預金を集めても、それを貸し出す先がないのです。

 

銀行の預金残高に対する貸出残高の割合を「預貸率」といいます。この預貸率がいま、どんどん低下しています。

 

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東京商工リサーチの調査によると、2016年3月期における国内の銀行114行の預貸率は67.59%となり、前年同期より0.15ポイント低下しました。預貸率の低下傾向は2011年からずっと続いており、預金と貸出金の差額である預貸ギャップは244兆円に拡大しています。

 

なお、銀行の種類別に預貸率を見ると、地方銀行64行の平均は71.88%(前年同期比1.16ポイント上昇)、旧第二地方銀行41行が74.43%(同1.17ポイント上昇)、大手銀行9行は63.96%(同1.09ポイント低下)でした。

 

[図表1]銀行114行の預金と貸出金の推移

出典 東京商工リサーチ
出典 東京商工リサーチ

 

[図表2]銀行114行の預貸ギャップと預貸率の推移

出典 東京商工リサーチ
出典 東京商工リサーチ

信用創造がうまく働かず、市中にお金が回らない・・・

第二次安倍政権の誕生以降、日本銀行は大幅な金融緩和に踏み切り、民間が保有している国債を買い上げるなどの方法で大量のマネー(マネタリーベース※1)を市中に供給しています。

※1 マネタリーベース:現金の通貨(紙幣とコイン)、および民間の金融機関が日本銀行に預けた資金(日銀当座預金)の合計のこと。中央銀行である日銀がコントロールできるとされる。

 

具体的には、黒田東彦氏が日銀総裁に就任(2013年3月)してから3年ほど、毎月の平均残高で対前年比4〜5割増という猛烈な勢いでマネタリーベースを増やしてきました。ここ2年ほどは次第に増加ペースが落ちていますが、それでも2〜3割の対前年増を続けています。

 

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ちなみに、日本のマネタリーベースは2017年5月末で456兆円に達しています。これは日本の国内総生産(GDP)の8割を超え、同2割程度の米国やEUと比べて群を抜いて多いとされます。

 

ところが、マネタリーベースをもとに銀行の信用創造によって市中に出回るマネー(マネーストック※2)は、対前年比3〜4%ずつほどしか増えていません。

※2 マネーストック:金融機関と政府を除いた国内の個人や企業、団体が保有しているお金の合計。マネタリーベース×信用乗数=マネーストックという関係があるとされる。

 

マネーストックには計算の対象範囲によっていくつか種類がありますが、日本銀行が発表するM2という代表的な数値では、2016年末では約1257兆円となっています。

 

中央銀行がマネーをじゃぶじゃぶと市場に供給しているのに、その先で銀行による信用創造がうまく働いていないのです。そのため、日銀は「2%の物価上昇率」を目標にしていながら、なかなか達成できないでいます。

 

[図表3]マネタリーベースとマネーストックの推移

出典 日本銀行
出典 日本銀行

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連載日本の金融業界を変える~フィンテックの可能性

Tranzax株式会社 代表取締役社長

一橋大学卒業後、野村證券に入社。金融法人部リレーションシップマネージャーとして、ストラクチャード・ファイナンス並びに大型案件の立案から実行まで手掛ける。主計部では経営計画を担当。経営改革プロジェクトを推進し、事業再構築にも取り組んだ。2004年4月にエフエム東京執行役員経営企画局長に。同年10月には放送と通信の融合に向けて、モバイルIT上場企業のジグノシステムを買収。2007年4月にはCSK-IS執行役員就任。福岡市のデジタル放送実証実験、電子記録債権に関する研究開発に取り組んだ。2009年に日本電子記録債権研究所(現Tranzax)を設立。

著者紹介

企業のためのフィンテック入門

企業のためのフィンテック入門

小倉 隆志

幻冬舎メディアコンサルティング

圧倒的な「コスト削減」「業務効率化」「キャッシュフロー改善」を実現する最新技術とは? フィンテックは一時の流行の枠を超え、次のステージに入っているという見方が大勢を占める。 ビットコインのリスクなどマイナス要…

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