今回は、昔ながらの経営者が余計な現預金を抱える理由を見ていきます。※本連載では、現場での実務経験豊富な経営コンサルタントである著者が、銀行交渉の成功事例、融資を受けるために知っておきたい銀行の内部事情などを紹介します。

「定期預金」を解約したら融資してもらえない⁉

銀行を取り巻く環境は変わり、
銀行優位の時代は遠き過去のこととなりました。
しかしながら、あの頃と同じ感覚で銀行交渉をし、
大きな勘違いをされている経営者に、
今も出会うことがあるのです。

 

決算書を拝見すると、
現預金が多いのはまだいいのですが、
借入金もそれなりにある、という場合があります。
こんなことがありました。

 

“これだけ現預金があれば、返済にまわせばいいじゃないですか?”
と言うと、
“現預金になってますけど、定期預金が多いんですよ。”
とおっしゃるのです。
“解約して返済にあてたらいいじゃないですか?”
“いや、解約したら、今度借りたいときに、
 銀行は貸してくれないんじゃないですか?”
“そんなこと、誰が言ってるんですか?”
“いやぁ、ずいぶん以前にそうだったような気がして・・・。”
“いったい、いつの話しですか?”
“う~ん、25年以上は前ですかね・・・。”

長期と短期のダブルで金利を稼ぐ「銀行の思惑」

要は、
バブルやそれ以前のころの体験を、引きずっておられたのです。
その会社では、長期借入をして、
予定通りに返済できるキャッシュを稼いでいました。
なのに、銀行員から頼まれて、
定期預金を言われるがまま、増やしていたのです。
しかしそうなると、今度は返済資金が足りません。
で、銀行はさらに、
“返済資金として、短期でお貸ししますよ。”
と言ってくるわけです。
銀行にすれば、長期で貸して、その返済資金のために、
短期も貸している。
長期と短期のダブルで金利を稼いでいるのです。
こんなにおいしい話しはありません。
しかも、稼いだキャッシュは定期預金で積み上げさせて、
万が一の回収資金も確保しているのです。
銀行にすれば、してやったりなのです。
それでも経営者は、銀行とは良い交渉ができている、
と思っていたのです。
「銀行のお願いを聞いてあげているから、
 ウチが必要な資金を貸してくれている。」
と、思っていたのです。

 

数十年前に、銀行借入で苦しんだ経営者が、
このような銀行サマサマ病から抜け出せていない、
という事例が、今もあるのです。
銀行が企業に対して必要以上の融資をする、
という行為を、金融庁は禁止しています。
先の事例は、間接的とは言うものの、
貸し付けた資金を定期に入れさせる、
いわゆる部積み両建て行為に該当するのです。
今どき、定期預金をしても、
なんのうま味もありません。
借入金があるなら、その返済に充てたほうが、
よっぽど得なのです。

本連載は、株式会社アイ・シー・オーコンサルティングの代表取締役・古山喜章氏のブログ『ICO 経営道場』から抜粋・再編集したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。ブログはこちらから⇒http://icoconsul.cocolog-nifty.com/blog/

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