今回は、融資付けの判断基準となる「債権者区分」と「銀行格付け」の関係について見ていきます。※本連載では、現場での実務経験豊富な経営コンサルタントである著者が、銀行交渉の成功事例、融資を受けるために知っておきたい銀行の内部事情などを紹介します。

金融庁が定める融資先の分類が「債務者区分」だと・・・

融資継続か否か、このところ、
東芝VS銀行団のバトルが過熱しています。
5月に入り、新たな進展があったので、
改めてこのシリーズを書かせていただきます。

 

5月4日付けの新聞で、
「三菱UFJが、東芝の債務者区分を要管理先に引き下げた」
と書かれていました。
三菱UFJは、東芝のメイン銀行ではないものの、
融資総額は約1600億円となっています。

 

債務者区分というのは、金融庁がマニュアルで定める、
融資先の分類です。
金融庁は、この債務者区分に応じて、それぞれの銀行において、
債務者を格付け(スコアリング)しなさい、
ということになっています。
なので、債務者区分と銀行格付け(スコアリング)は、
まずもって、異なるものなのです。
とはいえ、このふたつの分類は、連動しています。

 

では、債務者区分と銀行格付け(スコアリング)は、
どのように繋がっているのでしょうか?
こちらをご覧ください。

 

[図表]

 

銀行格付け(スコアリング)は、銀行によっても異なるのですが、
上の表が、代表的なパターンです。

東芝への融資を「不良債権」と判断した三菱UFJ

今回、UFJが東芝の債務者区分を要管理先に下げました。
要管理先とは、要注意先に入るものの、
そのなかでは最もランクの低い債務者区分です。
10段階の銀行格付け(スコアリング)で言えば、
下から4つめの、「リスク高く管理徹底」という
格付け(スコアリング)に該当します。
金融庁の債務者区分では、この要管理先以下の区分を、
「不良債権」と位置付けています。
当然、新たな融資は、業績回復以降でないと、できなくなります。

 

つまり、三菱UFJは、東芝への融資を不良債権と判断したのです。
その経緯についても、
「短期融資を繰り返している現状は、
返済猶予に応じているのと同じであるから」
としている記事がありました。
返済猶予が3ケ月以上続いている場合、
要管理先=リスク高く管理徹底、となるのです。

 

東芝へ融資している金融機関は、80行以上です。
三菱UFJが債務者区分を要管理先に下げたことで、
他行も追随する動きが出てくると思われます。

 

中小企業においても、
延々と短期借入を繰り返しているケースがあります。
それは多くの場合、借りる力があるのではなく、
銀行の都合で貸してくれているだけ、なのです。
自分たちの都合が悪くなれば、
容易に格付けを下げ、これ以上は融資しない、となります。
そうなると、にっちもさっちもいかない、
という中小企業が、今もあるのです。

 

東芝VS銀行団の戦いを、他人事とせず、
自社のことをよく考えていただきたいのです。

本連載は、株式会社アイ・シー・オーコンサルティングの代表取締役・古山喜章氏のブログ『ICO 経営道場』から抜粋・再編集したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。ブログはこちらから⇒http://icoconsul.cocolog-nifty.com/blog/

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