今回は、経常利益から「都市ガス会社の株価」を読み解くポイントを見ていきます。※本連載は、三菱UFJモルガン・スタンレー証券のシニアアナリスト・荻野零児氏の著書、『よくわかるエネルギー株』(化学工業日報社)より一部を抜粋し、エネルギー会社の株価の基本的な見方をご紹介します。

小売全面自由化で競争は激化、販売価格の変動に要注意

(2)都市ガス会社の株価の見方

大手都市ガス会社の経常利益の主な変動要因には、都市ガス事業の『都市ガス販売量』、『都市ガス販売価格』、『LNGなど原料費』などがあります。また、都市ガス事業以外にも、電力事業(発電や電力小売)や上流事業(海外のガス田への出資など)も経常利益に影響を与える場合もあります。また、『配当金などの株主還元政策』も注目点です。

 

<都市ガス販売量>

 

エネルギーの国内需要のうち、都市ガスは販売数量が増加する可能性が高いです。その理由は、例えば、工場などの石油のボイラーが天然ガスのボイラーに転換するケース(燃料転換と言います)や、都市ガス導管が延長して、新たな需要家を獲得するケースがあるからです。このため、都市ガス会社の都市ガス販売量の動向が注目されます。

 

<都市ガスの料金政策>

 

2017 年度から都市ガスの小売全面自由化が予定されています。今後、都市ガスでも競争が激しくなる可能性があり、都市ガスの販売価格の変動に注意が必要になります。電力と同様に、都市ガスの販売価格には、原料費調整制度によるタイムラグ影響がありますが、意識的に都市ガスの販売価格を値下げするケースも出て来る可能性があります。

販売価格に輸入価格を転嫁させるには、約4ヵ月必要

<原料費調整制度によるタイムラグ影響に注意>

 

都市ガス事業の営業利益を見るうえで、原料費調整制度によるタイムラグ影響にも注意が必要です。これは、前述の電力事業における燃料費調整制度によるタイムラグ影響と、ほぼ同じ仕組みです(第5回参照)。都市ガス事業の原料とは、主にLNGのことです。 

 

LNG輸入価格が上昇する場合には、都市ガス販売価格が値上がりするまでの約4ヵ月間は、LNG輸入コストの増加だけが発生してしまい、経常利益は減益してしまいます。電力会社と同様に、原料費調整制度によるタイムラグ影響を除いた経常利益の実力の水準を確認することをお勧めします。

 

<電力事業や海外事業>

 

いくつかの都市ガス会社は、グロース戦略のために、電力事業や海外事業を展開しています。都市ガス事業に次ぐ経常利益の第2、第3の柱に育っているものもあります。電力事業は、国内外での発電事業や電力小売事業があります。また、海外のガス田への投資をする上流事業も見られます。今後の利益成長が期待される分野でもありますし、逆に失敗する場合には、連結の経常利益に大きな影響を与える場合もあります。

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