親の資産を頼りに生きるシニア男性
ずっと独身、中年になっても子供部屋から出ようとしない「子供部屋おじさん」という言葉があります。大橋健太郎さん(仮名/66歳)もその1人といえる生き方をしています。
大橋さんの父親は戦後の混乱のなかで起こした事業で成功し、大橋さんは裕福な家庭に育ちました。両親の教育のおかげで幼少期から学業成績は優秀で、有名大学に入学し優秀な成績で卒業したのでしたが、卒業後に大橋さんの人生は一変したのでした。
大橋さんは卒業後に大手メーカーに就職しましたが、職場の人間関係や取引先との関係に悩み離職、その後予定よりも早く25歳で父親の会社に就職しました。しかし、順調だったはずの父親のビジネスはバブル崩壊をきっかけに大きく傾いてしまい、大橋さんが40歳を過ぎたころに廃業することにしたのでした。
自主的な廃業であったため大きな資産を残した状態で、大橋さんは実家暮らしをしながらフリーターとして生活することになり、子供部屋おじさんという状態へ。両親の残された資産を取り崩しながら生活していくことになりました。
しかし、そんな両親も現在は90代。それまでお金のことはすべて両親に任せていましたが、大橋さんが60代になったころに父が認知症になり施設に入居し、父の財産は成年後見人が管理することになりました。
その後、大橋さんはいつものように自分の外食費などのために100万円ほど預金をおろそうと金融機関に行くと、キャッシュカードが使えなくなっていることに気が付きました。窓口で質問すると、このように言われたのです。
「申し訳ありませんが、ご本人様でないと対応できません」
大橋さんは驚き、「家族なのに引き出すことができないのですか?」と尋ねますが、窓口の行員さんからは「後見人が就いてキャッシュカードが利用できなくなっています」という説明があったのでした。
これまでは父の口座からキャッシュカードで引き出していた大橋さんでしたが、後見人が就いたことがきっかけでキャッシュカードが使用停止になっていたのです。思わず唇を噛みました。
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