欲張った代償は大きい…遺言書の隠匿で「相続欠格」のペナルティ

それから2年以上が経過したある日、実家の整理を手伝いに来ていたジンさんが、書斎の引き出しから遺言書を偶然発見してしまいます。

「兄貴、この遺言書はずっと隠していたのか」と問い詰めるジンさんに対し、リョウさんは「俺が全額もらう権利があるんだから問題ないだろう」と開き直りました。

しかし、このリョウさんの身勝手な行動は法律上、決して許されるものではありませんでした。遺産を不当に独り占めする目的で遺言書を隠す行為は、民法が定める「遺言書の隠匿」に該当し、「相続欠格」という重いペナルティの対象となります。

相続欠格に認定されると、その人は相続人としての権利を一切失います。つまり、リョウさんは3億円の遺産を独り占めするどころか、1円も受け取ることができなくなってしまいます。

遺留分を惜しんで遺言書を隠した結果、全財産を失い悲鳴を上げることになったリョウさん。遺言書を隠す行為は、なぜこれほどまでに重いペナルティが科されるのでしょうか。

【弁護士が警告】「遺言書を隠して時効成立を待つ」が通用しない理由

本件でまず指摘したいのは、兄の「遺言書を隠して1年経てば、弟は遺留分を請求できなくなる」という計画自体が、かなり杜撰だという点です。

遺留分侵害額請求権の1年という期間は、単純に相続開始から進むのではなく、相続の開始と、自分の遺留分を侵害する遺言等があることを「知ったとき」から進行します。

つまり、兄が遺言書を隠していたのであれば、今度は「弟は以前から遺言書の存在を知っていた」と兄側で主張・立証しなければならず、自らの隠匿行為と矛盾しかねません。むしろ、不当な利益を得る目的で遺言書を隠したことが立証されれば、相続欠格に該当し、自分自身が相続資格を失う可能性すらあります。

実務上は、「知った・知らない」という争い自体を避けるため、可能であれば相続開始から1年以内を目安に遺留分侵害額請求の通知を行います。

しかし、法律上の起算点はあくまで「知ったとき」です。遺言書を隠して時効完成を狙うという発想は、法的にも極めてリスクの高いものといえるでしょう。

山村 暢彦
弁護士法人山村法律事務所
代表弁護士

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