親の死後、遺品整理で家族が把握していなかった財産や書類が見つかり、相続手続きが難航するケースは少なくありません。千葉県に住むサオリさん(仮名・52歳)も、亡き父が残した金庫から出てきた「見知らぬ人物の権利書」と「古い紙の株券」に頭を抱えることになりました。親の死後に発覚した、思わぬ遺産トラブルの全貌と、残された家族を疲弊させないための相続対策について、山村暢彦弁護士が解説します。
「まさか…」52歳娘が遺品整理で知った、亡き父の知られざる過去。発端は、金庫の奥から出てきた〈古びた書類〉【弁護士が解説】
「よくわからない書類が…」亡き父の金庫から出てきた〈別人の権利書〉
「お父さんの金庫から、よくわからない書類が出てきたんだけど……」
千葉県で夫と暮らす会社員のサオリさん(仮名・52歳)は、1年前に父親を亡くしました。実家で一人暮らしを続ける母親から連絡を受け、遺品整理を手伝っていたときのことです。
納戸の奥から見つかった古びた手提げ金庫を開けると、なかには実印や古い通帳と一緒に、古びた不動産の権利書(登記済証)が入っていました。しかも、権利書に書かれていたのは、父とはまったく違う別人の名前。場所も隣県の知らない土地であり、サオリさんは何かの間違いではないかと混乱したといいます。
「まさか父がどこかに土地を持っているなんて、家族は誰も聞いていませんでした」
調査を進めると、驚きの事実が判明しました。父親は昔、仕事関係の知人から頼まれ、不動産取引の際に「名義を貸して」おり、その関係で書類を預かっていた可能性が高いというのです。
実際の所有者は別人であるものの、もし登記上で何らかの権利関係が残っていれば、父親の相続財産として扱われたり、後々トラブルに巻き込まれたりするおそれがあります。
サオリさんは「父の遺産として申告に含めるべきなのか」と、専門家を交えて複雑な事実確認を行うことになりました。
「手続きが本当に大変…」茶色く変色した〈紙の株券〉も発見
サオリさんを悩ませたのは、権利書だけではありませんでした。金庫の底からは、茶色く変色した昭和時代の「紙の株券」が数十枚束になって出てきたのです。
「昔の株券なんて、今はもうただの紙切れだと思っていました。でも調べてもらったところ、そのうちの1社が現在も別の会社名になって存続していることがわかったんです」
2009年に株券電子化が実施されて以降、紙の株券自体は無効になっています。しかし、会社が存続していれば信託銀行などの特別口座で管理されており、所定の手続きを踏めば株式の権利を回復し、未受領の配当金を受け取れる可能性があります。
「権利があるなら手続きをしようと思ったのですが、これが本当に大変でした」
父の当時の住所や名義が古すぎたため、証券会社とのやりとりや戸籍の収集に追われることになったのです。株式を自身の口座に移管するまでに、途方もない手間と時間がかかることが判明しました。