「うちに財産はない」という親の言葉を信じていたものの、遺品整理で思いもよらない「隠し財産」が出てくるケースがあります。しかし、見つけた大金を正しく申告せずに使ってしまうと、後に税務署から厳しいペナルティを課される事態に陥りかねません。本記事では、亡き父の書斎から「まさかの遺産」を発見し、税務調査を受けることになった57歳息子の事例をもとに、相続税のリスクと正しい生前対策について、CFPの山原美起子氏が解説します。
「相続税には縁がないと思っていたのに…」税務調査の連絡に青ざめた57歳男性。亡き父の「遺品整理」で本棚の奥から出てきた〈古い封筒の束〉【CFPが「隠し財産」の無申告リスクを解説】
【CFPが解説】隠し財産は税務署にバレる…無申告の先に待つ「重加算税」
相続税は相続財産が基礎控除額以下であればかからないため、原則は申告不要です。基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で、相続人が母と息子の場合は4,200万円になります。
確かに、本事例の父の預貯金と自宅だけであれば、申告は必要なかったでしょう。しかし、そこに隠れていた5,000万円が乗った瞬間、一転して申告義務のある相続に変わります。
国税庁「令和6事務年度における相続税の調査等の状況」によれば、実地調査件数は9,512件(対前事務年度⽐111.2%)、追徴税額合計は824億円(対前事務年度⽐112.2%)と、いずれも増加しています。
国税庁はKSK(国税総合管理システム)によって、過去の申告・納税データを一元管理しているうえ、金融機関への照会により、被相続人の口座の入出金を過去10年程度までさかのぼって把握することも可能です。相続財産の仮装・隠ぺいは簡単に把握できてしまいます。
単なる申告漏れであれば、無申告加算税(税額に応じ不足額の15〜30%程度が上乗せ、令和6年以降は高額無申告にさらに加重)と延滞税で済みます。
しかし、無申告で使い込み、調査の際にもその経緯を正直に説明しなかったとなれば、事実を隠す意図があったと判断され、不足税額の40%という重加算税を課されることになります。
家族を守るのは「隠すこと」ではなく「開くこと」
この悲劇のスタートは、父の真意が誰とも共有されていなかった点にあります。もし生前、「実は書斎に蓄えがある」と一言伝えていれば、サトルさんは正しく申告して、余分なペナルティを負わずに済んだかもしれません。
資産を隠すことは、遺族の税負担を減らすどころか、将来のコストを何倍にも膨らませてしまうことになりかねません。
相続とは残された家族が安心して暮らしていくためのプロセスです。「本当はどうしたかったのか」本人の意思がわからないことで相続トラブルに発展することも多々あります。
親の責任として、公正証書による遺言書を作成して家族に資産の全体像を共有しておくこと、非課税枠を活用しつつ記録や申告をきちんと残す生前贈与を行うことなど、お金の流れが不透明になるリスクを減らしておきましょう。
親が財産について語ろうとしないなか、子から相続について切り出すことに抵抗があるという方もいるでしょう。そんなときは「もしものとき、資産の重要な書類はどこを見ればいいかな」「母が困らないようにサポートさせてもらえるかな」とやんわり尋ねてみることから始めてみてください。
高齢になった親の心情に寄り添った小さな会話の積み重ねが、親の意志を尊重しながら家族を守る有効な備えとなります。
山原 美起子
株式会社FAMORE
ファイナンシャル・プランナー
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