「母の口座から下ろせばいい」暗証番号を知る長女の油断

都内でパート主婦として働くユウコさん(仮名・52歳)は、実家で一人暮らしをしている母・エツコさん(仮名・79歳)が認知症と診断されたのを機に、月額20万円の介護付き老人ホームへの入居手配を進めていました。

入居一時金や引っ越し費用として、急きょ150万円ほどの現金が必要になりましたが、ユウコさんに焦りはありませんでした。

以前から母の通帳とキャッシュカードを預かっており、暗証番号も知っていたからです。「母の口座には十分な貯蓄がある。ここから下ろせばいいだけだ」と軽く考えていました。

しかし、銀行の窓口へ行って一括で引き出そうとすると、母本人の同席や厳格な意思確認を求められる可能性があります。

「もし窓口で母が認知症だと銀行に知られたら、手続きが面倒になるかもしれない」と警戒したユウコさんは、ATMを使って数日に分けて引き出す作戦に出ました。

高齢者の特殊詐欺対策の影響で、母の口座はATMでの1日あたりの引き出し限度額が30万円に制限されていました。そこでユウコさんは、買い物の合間を縫って連日ATMに通い、上限の30万円ずつを引き出すことにしたのです。

「私が代わりに…」身の潔白を証明しようとした長女の“致命的なひと言”

連続して高額の引き出しを行った4日目の午後。実家で荷物の整理をしていたユウコさんのもとに、実家の固定電話が鳴りました。電話の主は、母が口座を持つ銀行の担当者でした。

「エツコ様の口座から、連日30万円の高額な引き出しが続いておりますが……。ご本人様でしょうか?」

昨今多発する特殊詐欺を疑われていると察したユウコさんは、自分が怪しい者ではないことを証明しようと、慌てて“正直に”事情を説明してしまいました。

「長女のユウコと申します。実は母が認知症になりまして、施設に入るためのお金を私が代わりに引き出しているんです。カードも預かっていますし、娘の私がやっていることなので怪しいものではありません」

ユウコさんに悪気はなく、むしろ正当な理由であるとわかってもらおうとしたのですが、この発言が致命傷となります。