ヒトも含めた動植物によって構成されている「生態系」。食物連鎖の絶妙なバランスで成り立っているため、そこに人間だけの都合で手を加えるのはご法度です。そして、そうした教訓もまた先人たちの失敗から学びを得て生み出されたものかもしれません。そこで本記事では、クイズ作家の近藤仁美氏による著書『世界を変えた「凡ミス」図鑑』(三笠書房)より一部を抜粋・再編集し、スズメを駆除して大飢饉を起こした毛沢東のエピソードをはじめ、人間が特定の動植物を駆除・導入したことで惨事を招いた例をご紹介します。
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「クズ」がアメリカで年間500億円以上の被害を出したワケ
先ほど「繁殖力が強い」という話をした。
強いというか、強すぎた。
現地でモリモリ増え、葉で日照を遮(さえぎ)ってほかの植物を枯らし、電線に巻きついたつるが停電を引き起こした。クズによるアメリカの被害額は、年間500億円以上にのぼるといわれる。
また、シンプルに「気づいて!」と言いたくなる例もある。これは日本各地で起きてきたことなのだが、害虫を減らそうとして殺虫剤を撒いた結果、益虫も死滅し、何もいなくなったところに新たな害虫が増えてしまった。
この薬剤はネオニコチノイド系農薬と呼ばれ、秋にみられる赤とんぼの数が減った理由の一つともいわれている。人間にとって都合がよかろうが悪かろうが、虫は虫。まあ、そうなるよね……。
転ばぬ先の杖になる「古今東西の凡ミス」
このような反省もあり、最近は農薬に頼りきらず、動植物の組み合わせで作物への被害を防ぐ方法も広まってきた。一例を挙げると、キャベツの間にオオムギを植えると、アブラムシが減る。これは、オオムギに産卵するヒラタアブという虫の効果だ。
アブラムシは、植物の汁を吸って枯らしたり、葉の病気の原因になるウイルスを運んだりするので、農業の分野では厄介者とされることが多い。そんなアブラムシの天敵が、ヒラタアブの子ども。幼虫たちがキャベツに移っていってアブラムシを食べてくれるので、キャベツの被害が減る。
オオムギを間に植えると、キャベツのアブラムシを7~8割減らせる。さらなる効果を狙うなら、コスモスやマリーゴールドを植えるといい。ヒラタアブの成虫は花の蜜や花粉が大好きなので、これらの植物があることで狙った場所に来てくれやすくなる。このような植物があると、オオムギだけ交ぜたときに比べ、さらに3~6割もアブラムシが減るそうだ。
こうした相性のよい植物同士は、コンパニオンプランツと呼ばれる。先述のとおり、近年特によく言及されるようになってきたものだが、一部については昔から知られていた。たとえば、2009年発行のアメリカ1ドル記念硬貨の裏面には、「スリーシスターズ」という栽培法が描かれている。
ネイティブアメリカン伝統の農法で、まず縦に伸びるトウモロコシと地面を横に伸びるカボチャを植え、ある程度育ったら近くに豆を蒔(ま)く。すると、豆のつるはトウモロコシに巻きついて伸び、豆の根に棲(す)む菌が植物の肥料になる窒素を周囲に供給し、カボチャが土の乾燥を防ぐ、というわけだ。
スズメの駆除も、農薬で益虫を殺してしまうのも、現代の私たちからすれば、ある程度結末の想像がつく話だ。しかし、ミスというものは、実際にやらかすまでは意外と盲点であったりする。古今東西の凡ミスを知ることは、いろんな形の転ばぬ先の杖を得ることかもしれない。
■明日からの教訓
物事を大局的に考えよう
近藤 仁美
クイズ作家
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