いまや私たちの生活に欠かせない「メール」。利用する機会が多ければ、凡ミスが起こりやすくなるのも必然でしょう。宛先の誤字やアドレスの打ち間違い、BCCのつもりがCCにしていた、添付ファイルを忘れたまま送信していた……仕事で冷や汗をかいたことがある人も多いのではないでしょうか。本記事では、クイズ作家の近藤仁美氏による著書『世界を変えた「凡ミス」図鑑』(三笠書房)より一部を抜粋・再編集し、現地メディアから「史上最も高くついたメール」と報じられたイギリス国防省職員のエピソードをご紹介します。
送信先をミスった結果、後始末に「約1兆2000億円」の悪夢…“史上最も高くついたメール事故”の甚大な代償
今も膨らみ続ける「史上最も高くついたメール」の損害額
さて、たった1通のメールが引き起こした被害は甚大だった。
イギリス政府は事態の収拾にかかるコストを、60億ポンド(1兆2,000億円弱)と見積もり、現地のメディアに「史上最も高くついたメール」と報じられた。
この莫大な金額は、協力者を極秘で国外に脱出させる作戦などに使われたのだが、うまく亡命できたとしても、今後が危なくてしかたがない。
ファイルに載っていたうちの数百名は、イギリス国防省を相手に取って損害賠償を請求するそうだ。今後、原告はさらに増えることが予想されるため、この凡ミスによる損害額はまだ決着をみていない。
アメリカ国防総省とマリ、アドレスが似すぎな件
ちなみに、イギリスは2023年にもメールの送信ミスを起こしている。このときは、アメリカ国防総省に送るはずのメールを、アフリカの国・マリに送信してしまった。
アメリカ国防総省のアドレスの末尾は、military(軍事)の略で「.mil」だったのだが、マリの国別ドメインは「.ml」なので、打ち間違えたのである。
なお、これはイギリスによる失敗だが、アメリカ側はさらに深刻で、長年、国防総省宛てのメールが、ドメインミスでマリに届き続けていたという。恐ろしすぎる。
余談だが、メールの送信ミスを防ぐ意外と有効な手段は、コピー&ペーストだと思う。よく「情報のコピペはダメ!」などといわれるが、人名やメールアドレスは公式情報をコピペするに限る。
ここでいう公式情報とは、宛先となる個人・法人のウェブサイトや、先方から送られてきたメールの署名欄のことだ。これなら、先方が自ら出している情報なので、たとえ間違っていてもこちらは相手方の見解を尊重しただけ、ということになる。
特に、人名は間違うとムッとされやすい。それでいて、ほかのデータと結びつきにくい情報なので、誤るリスクが高いとされている。「ほかのデータ」というのは、たとえば出身地や職業のことだ。
また、取引先の担当者名は思い出せなくても、その人が属する会社や顔はするっと出てくる。そうした現象を、「ベイカー・ベイカー・パラドックス」という。これは、パン屋(ベイカー)なのは思い出せるけれど、名字がベイカーなのは思い出せないという、ある種のシャレから名づけられた。
こんなこともあるので、メールに限らず公に情報を出すときは、面倒でも都度公式情報を確認する癖をつけておくと、やらかす回数が減る。私自身、この方法で何度も事なきを得ているので、一度試してみてほしい。
■明日からの教訓
メールアドレスの入力には細心の注意を
近藤 仁美
クイズ作家
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