老後破産と聞くと、年金の受給額が少ない人や十分な資産を持たない人の問題と思われがちです。しかし実際には、現役時代に高収入だった人が生活水準を下げられず、老後に家計が行き詰まるケースも少なくありません。本記事では、夫の死後もセレブ生活を続けた結果、わずか5年で5,000万円もの預貯金を使ってしまったマサコさん(仮名・72歳)の事例をもとに、老後破産の原因と対策について辻本剛士CFPが解説します。
「節約なんてみっともないわ」夫の遺産7,000万円で“セレブ生活”を続けた72歳社長夫人。わずか5年で5,000万円を散財し〈老後破産の危機〉【CFPが警告】
高所得者ほど注意したい“普通”の「生活水準」の落とし穴
老後破産とは、老後の収入だけでは生活費を賄えなくなり、日常生活の維持が困難になる状態のことです。日本弁護士連合会が公表した資料によると、全破産債務者のうち60代以上が占める割合は28.55%に達しています。
老後破産というと、年金収入が少ない人や十分な資産を持たない人が陥るものと思われがちです。しかし、実際には現役時代に高収入だった人が老後破産に陥るケースも少なくありません。
高所得者が老後破産に陥る主な要因は、生活水準を下げられないことにあります。生活水準を下げられない理由としては、主に以下の原因が挙げられます。
●長年の生活習慣が抜けない
●周囲の生活水準が高い
●「まだお金がある」という安心感
●周囲に対し見栄を張りたいという思い
なかでも大きな要因となるのが、長年続けてきた生活習慣です。高級な外食や旅行、ブランド品の購入などは、一度習慣になると簡単にはやめられません。一方で、老後は現役時代と比べて収入が大きく減少するケースが一般的です。特に年金収入が生活の中心となる世帯では、現役時代と同じ生活を続けることは難しくなります。
そのため、老後生活を迎える前に、自身の収入や資産状況に応じて生活水準を見直すことが大切です。老後破産を防ぐためには、資産額だけでなく、将来の収支バランスにも目を向ける必要があるでしょう。
資産2,000万円でも破産目前…自宅売却も視野に入れた「家計改善」への道
不安になったマサコさんは、息子とともにファイナンシャルプランナー(FP)へ相談することにしました。
FPが家計を確認したところ、最大の問題は資産額ではなくやはり支出の多さにありました。そこで、まずは息子が口座管理をサポートし、家計の見える化を進めることになりました。
FPと支出を見直した結果、月100万円だった生活費は月40万円程度まで改善しました。
●食費:7万円
●光熱費・通信費:3万円
●医療費:2万円
●衣服・買い物:3万円
●習い事:1万円
●旅行・レジャー費:4万円
●美容院・エステ代:4万円
●友人とのランチや外食:7万円
●その他雑費:9万円
合計:40万円
外食や旅行、美容に関する支出は残しつつも、無駄な買い物や過度な支出を見直したことで、家計を大幅に改善することができました。
また、FPは「今後の介護や住み替えまで考えると、いまのマンションに住み続けることだけが正解とは限りません」とアドバイス。都内一等地にあるマンションは資産価値も高く、売却すればまとまった資金を確保できます。その資金を将来の老人ホーム費用や老後資金に充てることで、生活への不安を軽減できる可能性があるとのことです。
加えて、マンション売却後も十分な資産が見込まれることから、将来的には暦年贈与や一括贈与などを活用し、子どもや孫への資産承継を進めることも選択肢になるといいます。
老後破産を防ぐためには、資産額だけでなく収支のバランスや将来の住まいまで含めて考えることが大切です。マサコさんのケースは、生活水準を見直すことの重要性を教えてくれる事例といえるでしょう。
辻本 剛士
神戸・辻本FP合同会社
代表/CFP
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