財産を「嫌いな人に渡さない」という対策

本件でまず確認すべきなのは、義理の娘であるマユミさんは、タキさんの法定相続人ではないという点です。したがって、タキさんが亡くなった場合、直接マユミさんが相続人として財産を取得するわけではありません。

ただし、長男であるイチロウさんが相続すれば、その財産が夫婦の生活費や家計を通じて、結果的にマユミさんの利益になる可能性はあります。

また、イチロウさんがタキさんの財産を相続し、その後イチロウさんが亡くなった場合には、その財産がイチロウさんの遺産として残っている限り、配偶者であるマユミさんが相続することになります。

タキさんが強い嫌悪感を抱いているのは、まさにこの点でしょう。

「特定の親族に財産を渡したくない」と考えるのであれば、まず検討すべきは遺言です。

誰に、どの財産を、どのような割合で承継させるのかを明確にしておくことで、相続発生後の混乱を大きく減らせます。また、長男に一切渡さない内容にする場合でも、子には遺留分があるため、完全に排除できるわけではありません。

その場合には、遺留分侵害額請求を見据えた相続財産の設計や、生前贈与、生命保険の活用などを組み合わせて検討する必要があるといえるでしょう。

制裁に燃えるタキさんの盲点

もっとも、相続対策は「嫌いな人に渡さない」だけで設計すると、かえって親族間の紛争を大きくすることがあります。実務上は、誰に渡したくないかだけでなく、誰に何を残したいのか、残された家族が争わずに済む形は何か、という視点が重要です。

マユミさんに渡さないためには、長男のイチロウさん自体に相続させないようにするしかありませんが、それでよいのでしょうか。

本件のような感情が先行しやすい事案ほど、感情の整理と合わせて早い段階で遺言や財産管理の方針など事務的に整理し、法的に実現可能な形へ落とし込むことが必要といえるでしょう。

山村 暢彦
弁護士法人山村法律事務所
代表弁護士

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