どんなに大きくなっても、子どもは子ども……そんな親心から、わが子が成人してもついつい世話を焼いてしまう、甘やかしてしまうという人もいるのではないでしょうか。ただ、その程度を誤ると、自分たちはもちろん、愛するわが子にとっても深刻な影響をおよぼしてしまうかもしれません。実家暮らしの娘とその両親の事例から、親子間のお金にまつわる問題を見ていきましょう。
実家を追い出してくれてありがとう…年金月27万円の60代夫婦、30代娘の「思わぬ一言」にあ然【CFPが解説】
年金月27万円でも毎月赤字…60代夫婦の苦悩
「特に無駄遣いもしていないのに、気づくと毎月赤字なんです」
60代のホンダ夫妻の年金収入は月27万円。決して少ない金額ではありませんが、想像よりも早いペースで減っていく貯蓄残高を前に不安を感じるようになったと言います。
この原因は、同居するひとり娘のマオさん(30歳)の生活費でした。食費や光熱費、日用品に加え、スマホ代や動画のサブスク代まで親の口座から引き落とされており、夫妻の赤字額は平均すると月に約9万円にものぼるそうです。
「娘は安月給だし、生活費はもらっていません。家族ですから家計を切り分けて考えたことがありませんでした。そのうち結婚して家を出ていくだろうと思っていたのですが……」
現役時代には気にならなかった娘の生活費が、年金暮らしのなかで痛い出費になっていることに気づいたホンダ夫妻、「このままでは親子共倒れになるかもしれない」という危機感を抱いていました。
年金生活者の実態
総務省統計局「家計調査報告(令和6年)」によると、65歳以上の夫婦のみ無職世帯における実収入は、月に約25万円でした。その大部分は公的年金などの社会保障給付で占められています。
公的年金はそもそも、老後生活を支えるための所得保障であり、独立した子どもへの生活支援までを想定した設計にはなっていません。
また、手取り収入に対してどれだけ支出したかを示す「平均消費性向」は100%を超えています。つまり、平均的な暮らしであっても、貯蓄の取り崩しは避けられないというわけです。
さらに、消費者庁「消費者白書(令和5年)」などをみると、二人以上世帯における純貯蓄額は、60代の約2,323万円をピークに減少へと転じています。
ホンダ夫妻の場合、仮にこの生活を5年続けると、約540万円もの貯蓄が失われる計算です。将来必要となる住宅の修繕費や医療費、介護費などを考えると、老後資金の枯渇に直結する可能性が高くなります。
破産リスクは夫婦だけではない
また、親が家計管理や家事全般を一手に引き受けた結果、子が自立する機会を逃してしまうというリスクも無視できません。
実際、一人暮らし経験のない成人男性・女性が「お金のやりくりがわからない」「家事ができない」などの理由から一歩を踏み出せず、気づいた時には親子ともに高齢化し、身動きが取れないという話を、親側からも子側からも聞くことがあります。