「頑張りすぎ」から気まま生活へ

例えば、あなたが誰かに「頑張ってね」と声をかける際、何も毎回「辛いときも歯を食いしばって耐え抜けよ」なんて思っていませんよね。ニュアンス的には「応援してるよ!」という感じだと思います。そういうとき、デンマーク語では「held og lykke(運と幸せを)」と言います。英語の「Good luck(幸運を)」と同じ感じです。英語やデンマーク語で、完全に「頑張る」と置き換えられる単語はないようです。

ところで「頑張る」ってなんでしょうか? 「デジタル大辞泉」によると、①困難にめげないで我慢してやり抜く。②自分の考え・意志をどこまでも通そうとする。我を張る。③ある場所を占めて動かないでいる。という3つの意味があるそうです。

これはあくまで私の体感ですが、日本では「職人気質」に代表されるような、常に精進と努力を怠らないストイックな姿勢や、どこに出しても恥ずかしくない、ある意味で完璧な姿が理想とされていたり、そうあるべきだというプレッシャーを感じたりする場面が多いように感じます。近年、SNSの普及が影響してか、日本の若者の間で完璧主義傾向のある人が増加しているという調査結果も見かけました。

一方で、デンマークの人々を見て私がよく感じるのは、「力んでいない」「自分を大きく見せようと無理してない」ということです。また、そんな自然体の自分を見せている、リラックスした姿勢や状態を高く評価します。これは、完璧ではないのが当たり前で、それを自分に対しても他人に対しても、許容することが大切にされているからだと私は予想しています。

「そりゃあ、デンマークで競争しない方針の学習環境で育って、残業もほぼなくて、社会保障もしっかりしていて安心して暮らせるんだったら、私だって、リラックスできるし、ありのままでいられるよ!」なんて言いたくなるところですが、環境や前提は違えど、ところかわれば、こんな価値観もあるのだと知るだけでも、視野が少し広がり、生きやすさにつながると私は実感しています。

話を戻して、ここで注目したいのは、デンマークの人々が「歯を食いしばって全力で頑張る」ことよりも「息抜きを忘れず、バランスを保ちながら取り組む」ことを大切にしていることです。

「そんなゆるい感じの姿勢で、仕事は進むの?」と思いましたか? 私も疑惑の目線で彼らを観察していました(笑)。ですが、一緒に働いてみて、がむしゃらな私よりも、一見「頑張ってない」彼らのほうが生産性が高いこと(デンマークは、国際経営開発研究所が行う「ビジネス効率性」ランキングで過去4年連続1位!)、そしてその理由がじわじわとわかってきました。

最初は、なんというか、自分のこれまで信じていたものが崩れるようで、信じたくないくらいに思っていました。しかしながら、よくよく考えれば、むしろその「肩の力が抜けていくのに、うまくいく」というのは私にとって理想そのもの! デンマーク人の「頑張り方」はその具体的なやり方、考え方を知りたいと思い、楽しそうにしている同僚や友人にその秘訣を聞いた内容の一つです。私と一緒に「気まま」暮らしを追求してみましょう!

日暮いんこ
クリエイター