コロナによって、アート市場にも変化が訪れました。オンラインオークションへの移行や、NFTアートの盛り上がりもあり、現代アート市場は2021年に最高値を更新しました。
本記事では、現代アートの一つである「デジタルアート」の持つ特徴や仕組み、デジタルアート制作方法などについて詳しく解説します。
1. デジタルアートとは?種類や作り方についても解説!
パソコンやタブレットなどのデジタルツールを利用して、作品を制作する現代アートの一つが「デジタルアート」です。デジタルアートは多くの種類があり、使われる技法や作成ツールなどの違いも多種多様です。
デジタルアートのジャンルや、制作に必要なもの、NFTとの関係性などについてご紹介します。
1.1. デジタルアートの主な種類
デジタルアートの範囲は広く、コンピュータを利用して創作された作品の多くは、デジタルアートにあてはまるでしょう。
名称 | 概要 |
---|---|
デジタルイラストレーション | デジタルツールで表現されたイラスト作品 |
デジタル絵画 | 基本的に水彩や油彩絵画をデジタル上で描けるように応用した絵画 |
電子音楽 | デジタル楽器を使って創作された音楽 |
プロジェクションマッピング | CGを建物などに立体的に移す技術 |
デジタル写真 | デジタルカメラで撮った写真を、コンピュータを使い加工したもの |
VFX(視覚効果) | 映像をCGなどを盛り込み合成や加工を行う技術 |
1.2. デジタルアートを始める際に準備するもの…教室に通う必要はある?
デジタルアートを始める際は、特に教室へ通う必要はありません。準備するものは、パソコンとペイントソフト、そして描くためのペンタブです。
ペイントソフトとは、コンピューターを利用してイラストを描く際の専用ソフトです。無料ソフトもありますが、利用範囲に制限があります。そのため、まずは試してから自分がどこまで利用したいかを把握することが必要です。そのあとに、無料版ソフトか有料版ソフトを選択しましょう。ペイントソフトは、フォトショップやイラストレーターが人気です。
ペンタブは、デジタルアートを描くペンとパネルのことをいいます。マウスよりも、ペンタブを利用すると、繊細なラインや豊かな表現ができます。
1.3.「デジタルアート」と「NFTアート」の関係
デジタルアートの分野において、将来性が高いNFT技術が大きな注目を集めています。
NFTとは、日本語で「非代替性トークン(他に替えが効かない)」という意味です。NFTの登場は、デジタルアート分野に大きな影響を与えました。なぜなら、デジタルアートは誰でも簡単にコピーできるため、いままでのアナログアートと比べると価値が低く評価されていたからです。しかし、NFT技術の登場および発達によって企業やアーティストは、デジタルアートとNFTの技術を使ってオリジナル作品としてマーケットに出すことが可能となりました。
1.4. NFTの仕組み
NFTの仕組みを解説します。企業や個人が著作権を持つデジタルコンテンツと呼ばれる電子書籍やオリジナル動画などをNFT化して販売します。すると販売者は収益が増し、購入者はNFTのデジタルコンテンツを手に入れることができます。
たとえばNFTゲームのジャンルでは、ゲームで使用するキャラクターや武器などを売買したり、ゲームのなかで不動産を売買したりできます。
アート市場では、画像や音楽はもちろんのこと、Twitterの投稿など一風変わったコンテンツも取り扱いが可能です。
2. デジタルアートが高額で取引されている4つの理由
なぜいま、デジタルアートに注目が集まり、世間が驚くほどの高額な値段がつくのでしょうか?
- デジタルアートを作成した人の著作権が守られる
- デジタルコンテンツの未来が期待されている
- オンラインギャラリー※を活用する人が増加
- アーティストの人生にとってメリットが非常に大きい
※オンラインギャラリー…インターネット上でデジタルアートを飾ることができるギャラリーのこと
一つずつ詳しく見ていきましょう。
2.1. デジタルデータの所有が証明されたから
注目されている理由の一つ目は、NFTが発明され、オリジナルデータを所有している「証明」が可能となったからです。これまでは、デジタルアートはコピーや拡散を行うことが簡単であり、オリジナルの判断が難しい状況でした。
しかし、NFT技術の登場で、オリジナルが証明できたため、アナログのアート作品と同様に、所有する意味が確立されています。
2.2. デジタル資産の将来性が期待されているから
デジタルアートが注目されている理由の二つ目は、デジタル資産の将来性が期待されているからです。2021年のNFT総売上高は約250億ドル(日本円で約2.9兆円)です。市場規模が拡大しており、今後も拡大が予想されています。
デジタルアートは、VR※やメタバース※の領域でも技術が進歩しており、期待されています。
※VR…「Virtual Reality」の略で、日本語では「人工現実感」や「仮想現実」と訳されています。専用ゴーグルをつけることで、そこにいるかのような空間を体験できる
※メタバース…アバターを通して交流できるオンライン空間
2.3. オンラインギャラリーが誕生し売買が盛り上がっているから
注目されている理由の三つ目は、オンラインギャラリーで活発な取引が行われているからです。オンライン上に美術館があり、パソコン操作ひとつで好きな作品を鑑賞することが可能です。幻想的な空間を疑似体験できるため、人気が出ています。
さらに、気に入った作品を購入できるサイトも多いため、アートに興味があり、お金に糸目を付けない人が高額取引を行うケースも多くなっています。
2.4. アーティストにとってメリットが大きいから
デジタルアートとNFTが関連性を持ったことで、アーティストにも大きなメリットがあります。
いままでのデジタルアートは、コピーされてしまうと著作権が守れないリスクがありました。しかしNFT技術の登場および発達により、デジタルアートは作成者や所有者が表示されるため、アーティストの著作権を守ることができます。デジタルアートが新時代を迎えており、日本や海外のアーティストも新たな挑戦をはじめています。
3. デジタルアート作品の事例
いままでのアナログアートは、有名画家の絵画などが高額取引されていたイメージですが、NFTの登場により有名ではなかったアーティストのデジタルアートが高額取引されることもあります。
ここではいくつか作品の事例をご紹介していきます。
3.1. Beeple 『EVERYDAYS:THE FIRST 5000 DAYS』
デジタルアートが世間に大きく注目されたニュースは、アメリカ人アーティストBeepleの作品で、驚愕の約75億円で落札されたのです。
作品の内容はBeepleがアートと共に歩んできた13年半の歴史をかけて制作した5000枚の作品をデジタルコラージュしたものです。NFTと紐付きオリジナル性が証明されたため、高額取引が可能となっています。
3.2. 子供も大満足!『teamLab お絵かき水族館』
『teamLab お絵かき水族館』は、デジタルアートを子供も楽しむことができます。
紙に書いた魚に命が吹き込まれ、ひとりひとりが描いた魚が、目の前にあるデジタル上の水族館で泳ぎだすのです。泳いでいる魚に触れると、魚が逃げたり、エサをあげたりすることもできます。自由に描いて楽しめる『teamLab お絵かき水族館』は、子供のクリエイティブ能力を高める水族館です。
3.3. 真鍋大度氏ほか 『リオオリンピック閉会セレモニー』
デジタルアートは、『リオオリンピック閉会セレモニー』を盛り上げたこともあります。
安倍元首相がマリオで登場したフラッグハンドオーバーセレモニーの、AR映像などが挙げられます。デジタルによりフィールド上をLEDの光や映像演出を利用して、見る人に臨場感を感じてもらう演出を手掛けたのです。現実とデジタルアートが融合したパフォーマンスの代表例といえるでしょう。
3.4. 落合陽一氏 『Fairy Lights in Femtoseconds』 200
三次元の「妖精像」を描き出した落合陽一氏の作品『Fairy Lights in Femtoseconds』もデジタルアートの一つです。
アートと科学を融合した新たな視点でデジタルアートを表現しています。映像と物質の境界がわからなくなるような感覚に陥るほど、魅力あるデジタルアートです。
4. デジタルアートを購入するメリット
デジタルアートを購入するメリットはどんなところにあるのでしょうか?
自宅にいながら世界中の好きなアーティストの作品がいつでも購入できます。さらに、市場が加速度的に伸びており、将来性も高いといわれています。また購入したNFTアートは、2次売買できるメリットもあります。
4.1. デジタルアートフレームを活用すると、お家に動くアートが飾れる!
デジタルアートフレームを利用すると、自宅にいながらアートを飾ったり、鑑賞したりできます。購入したデジタルアートを好きにカスタマイズできるので、お部屋の雰囲気やその日の気分にあわせて、デジタルアートを飾ることができます。
また、スマホで操作できるデジタルアートフレームもあるため、手軽にデジタルアートを楽しめます。
5. デジタルアートを購入する注意点
デジタルアートを購入する際の注意点は、海外のプラットフォームが多いため、英語のサイトや英語での取引が必要となる点です。また、他人の作品をコピーして販売するなど詐欺取引を行う事例もあるため、注意が必要です。
NFTの歴史は浅く、法整備など整っていない点が多々あるため、売買の際には犯罪や不正に注意して取引しましょう。
6. デジタルアートを作成するための準備
デジタルアートを作成するための準備をしましょう。必要なものはパソコンの他にペイントソフトやタブです。
以下で詳しく解説します。
6.1. ペイントソフト・ペンタブが必須
ペイントソフトはイラストをコンピュータ上で表現するためのソフトです。無料と有料ソフトがありますが、無料版は作成にあたって一定の利用制限があるため、実際に使用したうえで、有料版が必要か判断するとよいでしょう。
ペンタブは、デジタルアート制作のパネルとペンがセットになったものをいいます。マウスでは細かい表現が難しいため、ペンタブを利用するほうが豊かな表現ができます。
7. デジタルアートの作成・販売方法
デジタルアートを作成する場合、まずオリジナルアートを用意しましょう。用意できたら、販売を行うプラットフォームで詳細(アートに関する情報)を記入します。
販売場所は、NFTマーケットプレイスである『Opensea』などを利用します。デジタルアートをNFTと紐付けて、アップロードすると販売する準備は完了です。
7.1. Processingを利用する
デジタルアートを本格的に制作できるプログラミング言語がProcessingです。知識がなく不安な人でも、簡単にコードを作ることができ、結果を視覚的に確認できるのがメリットです。
Processingの特徴は、デジタル上のイラストを移動させる処理が得意なことから、アニメーションなどにも使われているソフトです。シンプルにコード入力ができるため、文字の色や大きさも自由に変更できます。扱いに慣れると、より高いクオリティのデジタルアートが制作できます。
8. デジタルアートをプリントするときの注意点…ディスプレイと見え方は違う?
デジタルアートは制作時のディスプレイと、プリント後の画質にズレが生じる場合があります。プリントする際には、いくつか気をつけるポイントがあります。
ここでは、プリントする際の注意点を3点ご紹介します。
8.1. 解像度は最低300〜350dpi
一点目の注意点は、解像度設定を300〜350dpiに設定することです。プリントする際には、解像度「dpi」が高いほど画質が美しく表示されます。初期設定では低い基準となる300dpiに設定されている場合もあります。そのため、事前に確認して、解像度を上げてプリントしましょう。
8.2. 必ず印刷の品質の設定を行う
二点目の注意点は、プリンター設定で印刷方法や、印刷品質を変更する点です。印刷方法は写真や画像に適したものを選択し、印刷品質は解像度を調整します。印刷品質で解像度を上げたほうが、より綺麗に表示されるため必要に応じて設定をしましょう。
8.3. インクジェットプリンターでプリントする
三点目の注意点は印刷する際の紙を、普通紙ではなく専用紙を利用する点です。プリンターは大きく2種類あり、「レーザータイプ」と「インクジェットタイプ」があります。印刷する際はインクジェットプリンターを選択しましょう。画像印刷する際に、イラストや写真などのデジタルアートにおいては「インクジェットプリンター」が適しており、より美しく印刷できます。
9. デジタルアートの盗品や複製が相次いでいる?
デジタルアートはNFTと紐づき、オリジナル性をもって販売されることで著作権を守るとお伝えしました。ただしNFT作品の出品者と、アートの制作者が一致していない場合があります。たとえば、作者本人がNFT化する前に、偽装した別人がデジタルアートをNFT化して販売する事例もあります。
9.1. NFT拡大で盗品や複製を防ぐ
現在はアートやゲームが市場のメインとなっていますが、対象が拡大しておりTwitterの投稿機能がNFT化するなどの事例もあります。
市場拡大により、システム面の強化および、盗品や複製に対する法的整備などの環境も整っていくと予想されています。
10. まとめ…まずはミュージアムに足を運ぶのがおすすめ!
デジタルアートにはさまざまな種類があります。今回は、デジタルアートの概要、制作方法や販売方法、注意点、さらにデジタルアートの事例などもご紹介しました。
デジタルアートを理解するためには、まずデジタルアートミュージアムに足を運び、デジタルアートに触れていただくことがおすすめです。まだ歴史は浅いものの、今後拡大が見込まれる市場であり、アーティストにとっては今後の活動において、非常に重要な市場になってきます。
この記事がみなさんのデジタルアートの理解を深め、さらなる活動の一助になれば幸いです。