減り続ける人口、供給が続く住宅・・・
総務省「住宅・土地統計調査」(2013年版)によれば、平成25年10月1日現在における我が国の総住宅数は6,063万戸で、5年前と比較すると304万戸増加し、増加率は5.3%となりました。
住宅のうち空き家についてみると、空き家数は820万戸となり、5年前に比べて63万戸(8.3%)増加しました。空き家率(総住宅数に占める割合)は、13.5%で、20年に比べ0.4ポイント上昇し、空き家数、空き家率共に過去最高となりました。空き家の内訳は、「賃貸用の住宅」52.4%、「売却用の住宅」3.8%、「二次的住宅(別荘等)」5.0%、「その他の住宅」が38.8%となっています。
少子高齢化が進み、人口減少社会が現実のものになり、数年後には世帯数も減少すると言われているにもかかわらず、総住宅数は年間61万戸(平成21年~25年)のペースで増え続けています。需要のある場所や地域への住宅の供給は、今後も続くと予想されることから、これまでの政策を大きく転換しない限り、今後も空き家が減少することはありません。
【図表1】 空き家数と空き家率の推移
【図表2】住宅ストックの出入りと内訳
建物が壊れて他人に損害を与えたら、所有者の責任に
平成28年1月に国土交通省が提示した「住生活基本計画」の改定案(2016年~25年度)で、空き家対策に取り組んだ上での「その他住宅」の空き家戸数の目標値が、2013年の318万戸から約25%増加の400万戸(2025年)に設定されているように、空き家の減少が想定されていないことは、周知の事実です。
こうして増え続ける空き家が、管理されずに放置されてしまうと、近隣に悪影響を与える「外部不経済」の問題を引き起こします。例えば、敷地内にゴミが不法投棄されたり、荒廃や老朽化により景観上の問題が生じたりします。また、犯罪者が出入りし地域の治安が悪化するケースや、放火されるなど、社会的な問題になっている場合も少なくありません。
また、空き家を放置することは、所有者にとっても大きなリスクがあります。例えば、建物の一部が壊れて他人に損害を与えたときは、所有者に過失がなかったとしても、原則として被害者に対してその損害を賠償する責任を負わなければなりません(民法717条)。このように、空き家を適正に管理することは、①外部不経済対策、②防犯・防火対策だけでなく、③所有者責任の観点からも重要です。
【図表3】老朽空き家のイメージ
国も空家対策に関する基本指針を告示
平成27年2月26日、「空家等対策の推進に関する特別措置法(以下「空家等対策特別措置法」といいます。)」の一部が施行されました(平成27年5月26日に完全施行)。これに併せて、国土交通省と総務省は「空家等に関する施策を総合的かつ計画的に実施するための基本的な指針」を告示しました。
ここでは、適切な管理が行われていない空き家がもたらす問題を解消するため、空き家の所有者等の責務として、「空家等の所有者等は、周辺の生活環境に悪影響を及ぼさないよう、空家等の適切な管理に努めるものとする。」(法第3条)と規定されており、第一義的には空き家の所有者等が自らの責任で的確に対応することを前提にしています。
しかし、空き家の所有者等が、経済的な事情やその複雑な権利関係等から自らの空き家の管理を十分に行うことができず、その管理責任を全うしない場合も考えられます。そこで、そのような場合は、所有者等の第一義的な責任を前提にしながらも、住民に最も身近な行政主体であり、個別の空き家の状況を把握することが可能な立場にある各市町村が、地域の実情に応じて、地域活性化等の観点から空き家の有効活用を図る一方、周辺の生活環境に悪影響を及ぼす空き家については所要の措置を講ずるなど、空き家に関する対策を実施することが重要だとしています。
具体的には、市町村が組織体制の整備や相談体制の整備を行い、空き家の実態把握、所有者等の特定に努めるとともに、空き家等及びその跡地の活用を検討し、「特定空家等」に対する必要な措置を講じることを努力義務に位置付けました。
空き家の所有者等に関する情報を把握する手段としては、不動産登記や住民票、戸籍謄本などの利用、電気、ガス等の使用状況等に加え、これまで認められていなかった固定資産課税台帳も必要な限度において利用できるとしています。
また空き家の活用のためには、所有者の意向を聞き取りながら、適切な管理方法や専門業者情報などを紹介することも必要とする一方、例えば空き家データベースの情報を宅地建物取引業者などを通じて公開し、購入や賃貸を検討する人々に広く提供すること、市区町村が空き家を修繕して地域の交流スペースなどに利用することなども例示しました。
※法律等からの引用部分は「空家」と表示しています。
【図表4】 「空家等対策特別措置法」の概要(国交省資料)