人生においていちばん大切なことは何だったか?
昔、高校の生物の教科書で学んだことで、なぜかいまでも覚えていることがある。それは「リービッヒの最小律」というものだ。
生物の成長速度や収量は、必要とされる栄養素のうち、与えられた量のもっとも少ないものに影響されるという学説だ。ドイツの化学者ユーストゥス・フォン・リービッヒが提唱したといわれる。
この説に対しては異論もあるようだが、専門バカ、バランスの悪さ、一点豪華主義への警告として、いまでも語り継がれている。
リービッヒの最小律を一般向けにわかりやすく解説したものが、「ドべネックの桶(あるいは樽)」(図表1)といわれるものだ。そういえば私も「リービッヒの最小律」という言葉よりも「ドべネックの桶(あるいは樽)」の図のイメージが脳裏に強く焼き付いていた。
この図は、人間や植物の成長を桶のなかに張られている水、桶の横板を養分や要素に見立てている。
人間や植物の成長の過程では、横板の丈の高さはバラバラだ。こうした状況では、たとえ数枚の横板がどれだけ高くても、それよりも低い横板があればそこから水がどんどん外へ漏れだしてしまう。
その桶はいちばん低い横板の部分までしか水を溜めることができない。結局、桶の水かさ(=人間や植物の成長)はいちばん背丈の低い横板(栄養素)によって決まることを示唆している。
米国の名門ハーバード大学ビジネススクールの卒業生の意識を定期的に追跡調査した結果がある。彼らの多くは米国ビジネス社会で大成功をおさめたエリートで、経済的にも超裕福な人々だ。
その引退世代である60~70歳代の卒業生に「人生においていちばん大切なことは何だったか」と尋ねたところ、学歴や勤勉、社会的な地位やおカネなどを抑えて、家族や友人との交流・交際という回答がいちばん初めにきたという。
これは私の勝手な推測だが、彼らの多くは家族や友人との交流・交際を犠牲にして、多額の年俸や社会的地位を得てきたのではないか。アンケート結果は、そうした自省が反映されているのかもしれない。
私たちの退職後の幸せもドべネックの桶と似たところがある。おカネがあって健康に恵まれていても、社会や家族から孤立し、人との絆や社会との係わりが乏しければ、幸せの度合いも低くなる。
定年後の働き方も、変なプライドや世間体から選択肢を狭めれば、人との絆や社会との係わりという栄養素が大きく低下してしまう。退職後の幸せも大きく目減りしてしまう。
交通警備員がいなければ道路の工事現場は成り立たない。歩行者も安全に通行できない。マンションの清掃員がいなければ、マンションの住人は快適な生活を送ることができない。建設現場の作業員がいなければ、ビル自体を建設することさえできない。
あらためて「仕事はすべて尊い営み」であることを再確認したい。どのような職種、仕事であっても一生懸命に取り組めば、社会的な意義を感じることができて、気持ちや意思が通じ合える友人にも出会えるはずだ。
「投資」によってシニアが必要なお金を手当てすることは、老後の不足額を埋めるための最有力の手段だが、それだけがすべてではないことは心得ておきたい。
川島 睦保
フリージャーナリスト、翻訳家
※本記事は『一生、月5万円以上の配当を手に入れる! シニアが無理なく儲ける株投資の本』(日本実業出版社)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。
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