(※写真はイメージです/PIXTA)

※本稿は、チーフリサーチストラテジスト・石井康之氏(三井住友DSアセットマネジメント株式会社)による寄稿です。2024年2月のマーケットを振り返り、「1. 概観、2. 景気動向、3. 金融政策、4. 債券、5. 企業業績と株式、6. 為替、7. リート、8. まとめ」のそれぞれについて解説します。

7.リート

<現状>

●グローバルリート市場(米ドルベース)は、米欧の中央銀行による早期の利下げ観測が後退し、長期金利が上昇したものの、横ばいで終了しました。S&Pグローバルリート指数のリターンは前月末比+0.1%でした。また、円ベースのリターンは、為替効果がプラスに寄与し、同+2.5%となりました。

 

●米国は、長期金利が上昇したものの、米景気のソフトランディングへの期待が高まったことを背景に小幅に上昇しました。一方、欧州やシンガポールは、長期金利の上昇を嫌気して軟調な展開となりました。日本は日銀の政策金利が視野に入ってきたことを嫌気し、大きく下落しました。

 

<見通し>

●グローバルリート市場は、先行き米欧の中央銀行の利下げに伴い長期金利の低下が見込まれ、借り入れコストが改善することや、米景気のソフトランディングにより世界景気が底堅く推移し、賃料収入の安定推移が期待できることから、回復基調を辿ると予想します。

 

●米国は、FRBによる利下げ開始に伴う長期金利低下や米景気のソフトランディングから、レンジを切り上げるとみています。欧州は、米国に連動するとみています。アジア・オセアニアは、景気の回復基調を背景に緩やかに上昇するとみています。日本は、日銀の金融政策変更後は回復するとみています。

 

グローバルリートの推移

8.まとめ

【債券】

●米国の長期金利は、FRBが先行き利下げに転じるとみられることから、緩やかに低下する展開を予想します。市場は利下げを一定程度織り込んでいるとみられるため、当面はもみ合うものの、景気減速とインフレの低下に伴い、徐々にレンジを切り下げていく展開を予想します。

 

●欧州の長期金利も、ECBが利下げに転じるとみられるため、米長期金利に連れて緩やかに低下する展開を予想します。

 

●日本の長期金利は、日銀によるマイナス金利政策の修正が見込まれるものの、米長期金利の低下基調を想定するため一進一退の展開を予想します。

 

【株式】

●米国株式市場は、長期金利が上昇するなかでも好決算を材料に堅調さを保っており、今後も米景気のソフトランディングを前提とした適温相場が続くとみています。先行きのFRBによる利下げが視野に入るなか、米景気のソフトランディングに伴い企業業績の拡大が見込まれることから、投資家のリスク選好姿勢は継続するとみられます。このため、米国株式市場は緩やかにレンジを切り上げる展開を予想しています。

 

●日本株式市場は、日本の名目GDP成長や製造業における景気循環の底打ちを背景とした企業業績の拡大を織り込む形で、上昇すると予想します。これまでの上昇スピードの速さから調整リスクはあるものの、業績相場に入ることで下値は限られそうです。コーポレート・ガバナンス改革進展への期待や、自社株買いや新NISAの資金流入など良好な株式需給も相場上昇を支えるとみています。

 

【為替】

●円の対米ドルレートは、米金利の低下に伴い、緩やかに上昇すると想定します。当面はもみ合い推移が続くものの、先行きはFRBの利下げ開始と日銀の政策修正による日米金利差縮小が円の上昇要因となるとみています。ただし、日銀は連続的な利上げを急がず、円の上昇余地は限られそうです。

 

●円の対ユーロレートは、当面レンジ内でもみ合うものの、先行きはECBによる利下げと日銀の政策修正が意識され、緩やかに上昇するとみています。

 

●円の対豪ドルレートは、当面レンジ内でもみ合うものの、中国経済の減速や日銀の政策修正により緩やかに上昇する展開を予想しています。

 

【リート】

●グローバルリート市場は、先行き米欧の中央銀行の利下げに伴い長期金利の低下が見込まれ、借り入れコストが改善することや、米景気のソフトランディングにより世界景気が底堅く推移し、賃料収入の安定推移が期待できることから、回復基調を辿ると予想します。

 

●米国は、FRBによる利下げ開始に伴う長期金利低下や米景気のソフトランディングから、レンジを切り上げるとみています。欧州は、米国に連動するとみています。アジア・オセアニアは、景気の回復基調を背景に緩やかに上昇するとみています。日本は、日銀の金融政策変更後は回復するとみています。

 

(2024年3月4日)

 

石井 康之

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

チーフリサーチストラテジスト

 

※上記の見通しは当資料作成時点のものであり、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。今後、予告なく変更する場合があります。

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『先月の日本株式市場は「大幅高」…3月の展開は? ~マーケットの振り返りと見通し【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフリサーチストラテジスト】』を参照)。

 

【ご注意】
●当資料は、情報提供を目的として、三井住友DSアセットマネジメントが作成したものです。特定の投資信託、生命保険、株式、債券等の売買を推奨・勧誘するものではありません。
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