8.まとめ
【債券】
●米国の長期金利は、FRBが利下げに転じるとみられることから、緩やかに低下する展開を予想します。市場は利下げを一定程度織り込んでいるとみられるため、当面はもみ合うものの、景気減速とインフレの低下に伴い、徐々にレンジを切り下げていく展開を予想します。
●欧州の長期金利も、ECBが利下げに転じるとみられるため、米長期金利に連れて緩やかに低下する展開を予想します。
●日本の長期金利は、米長期金利が低下するなか、日銀によるマイナス金利政策の修正が意識されるため、一進一退の展開を予想します。
【株式】
●S&P500種指数採用企業の増益率(純利益ベース)は、24年1-3月期が前年同期比+7.4%、4-6月期が同+11.4%と予想されています。TOPIX採用企業の予想EPSは、24年1-3月期が同+22.8%、4-6月期が同+19.6%と、好調な業績が見込まれています。
●米国株式市場は、株価収益率(PER)の切り上がりによるバリュエーションの改善主導で上昇してきました。割安感はやや乏しいですが、底堅い企業業績が続くなか、地政学リスクの更なる悪化も限定的とみられるなど、投資環境の不透明感は和らいでおり、引き続き堅調な展開が予想されます。
●日本株式市場は、海外景気、為替、商品市況といった外部要因によって変動性が高まる局面もありそうですが、製造業における景気循環の底打ちに伴うEPS成長が見込めるため、業績相場の色彩を強めると期待されます。ただし、金融緩和政策の修正については見極めが必要となりそうです。
【為替】
●円の対米ドルレートは、米金利の低下に伴い緩やかに上昇すると想定します。当面はもみ合い推移が続くものの、先行きはFRBの利下げ開始と日銀の政策修正が意識され、日米金利差縮小が円の上昇要因となるとみています。
●円の対ユーロレートも、当面レンジ内でもみ合うものの、先行きはECBによる利下げと日銀の政策修正が意識され、緩やかに上昇するとみています。
●円の対豪ドルレートも、当面もみ合うものの、中国経済の減速や日銀の政策修正により緩やかに上昇する展開を予想しています。
【リート】
●グローバルリート市場は、先行きの米欧の中央銀行の利下げに伴い長期金利の低下が見込まれることや、世界景気が底堅く推移する見込みであることから、不動産市況がやや停滞するなかでも、回復基調を辿ると予想します。
●米国は、FRBによる利下げ開始に伴い長期金利が低下することや米国景気がソフトランディングするとみられることから、レンジを切り上げるとみています。アジア・オセアニアは、景気の回復基調を背景に緩やかに上昇するとみています。日本は、日銀の金融政策変更後は回復するとみています。
(2024年1月5日)
石井 康之
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフリサーチストラテジスト
※上記の見通しは当資料作成時点のものであり、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。今後、予告なく変更する場合があります。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『TOPIX採用企業の予想EPSは「好調な業績」が見込まれる ~先月のマーケットの振り返り&見通し【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフリサーチストラテジスト】』を参照)。