※画像はイメージです/PIXTA

中国は経済政策を大きく変えた1978年から、住宅や道路、港、電気通信ネットワークなどを中心に、大規模なインフラ投資を行ってきました。猛烈な勢いで進められたインフラ建設は過剰だと批判をしばしば受けるのですが、意外にもそれほど無駄ではなかったそうです。しかし2010年ごろからは過剰が明らかになりつつあるものの、猛烈な勢いのインフラ建設はなかなか止まりません。本記事では、香港の金融調査会社ギャブカルのリサーチヘッドであり、米国の米中関係委員会(NCUSCR)のメンバーでもあるアーサー・R・クローバー氏による著書『チャイナ・エコノミー 第2版』(白桃書房)から、これまでのインフラ投資の評価や、その負の側面について解説します。

中国のインフラ投資にはびこる汚職

しかし、その建設の仕方については、中国のインフラ建設の問題点を示すものでもあった。すなわち、おびただしい汚職である。

 

中国の高速鉄道のプロジェクトは、最初は17年のプログラムとして計画された。しかし、世界金融危機が起こる中、力のある鉄道大臣は計画を5年短縮することに成功した。これは経済への刺激にはなったが、一方で汚職の可能性も広がった。

 

なぜなら、期間が短縮されてプロジェクトが加速することにより、監視の目も自然に行き届かなくなるからだ。鉄道大臣とその同僚らは、数十億ドルを流用したとして最終的には刑務所に入ることになった。

 

中国の他のインフラ・プロジェクトでも同様だが、単純にペースを少し抑えさえすれば、効率も上がり、資金の流用も減ったことだろう※2

 

中国のインフラ建設のもう1つの問題点は、都市どうしの競争によって不要な重複が生じることだ。その最たる例が空港である。

 

中国では何十もの都市が、乗り継ぎの拠点となることを狙って巨大な空港を建設したが、結局は1日に数えるほどの便しか運航されていない。

 

これは純粋に無駄な支出であり、これが起こったのは、浪費に走る地方の役人を戒めることができない、混沌とした財政システムのためだ。

 

※2 高速鉄道建設での汚職や、その安全面での問題については、次の文献で鮮明に描かれている。Evan Osnos, “Boss Rail,” The New Yorker, October 22, 2012. 高速鉄道で性急に信号機を設置したことが、 2011年の悪名高き脱線事故の一因となった。この事故では40人の乗客が死亡し、当局が事故車両を埋めようとしている写真がインターネット上に出回って、国民の怒りを買った。

 

効率重視のインフラ整備へ転換が必要だが…

中国のインフラの大半が有用なものだと認めるとしても、ものすごい勢いで投資する時代が終わりに近づいていることは明らかだ。2008年以来、インフラ投資や他の資本集約型プロジェクトでの投資リターンは低下してきている。

 

経済も減速し、サービス業にシフトしていく中では、新たなインフラの必要性はこの先10年ほどのうちに減少していくことだろう。住宅だけを見ても、建設ラッシュの段階はほぼ終了している。

 

だが、これは必ずしも問題ではない。やがては、どんな国でも必要なインフラをほぼつくり終えた段階に到達し、次はそのインフラをどう有効に使うかに注意を向け始める。

 

しかし、官僚がどれだけ目に見える建物を建てたかでその報酬が決まるような体制では、そうしたポスト・インフラ経済への移行は困難な道のりとなるだろう。

 

 

アーサー・R・クローバー

香港金融調査会社ギャブカル

リサーチヘッド

 

※本記事は、THE GOLD ONLINE編集部が『チャイナ・エコノミー 第2版』(白桃書房)の一部を抜粋し、制作しました。

 

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