投資でも、人生のほかの分野でも言えること
ハワード・マークスは、終戦から数ヵ月後の1946年に生まれ、ニューヨークのクイーンズで育った。世のなかの流れは比較的ゆるやかで、大きな刺激もないように感じた。彼は若いころを振りかえりながら言う。
「漫画本はずっと10セントのままだった。世界は安定した場所で、毎日何かが起こりはしても背景は変わらないと誰もが思っていた。いまや世界は信じられないスピードで気まぐれに変化しつづけている。同じままのものはもう存在せず、同じであるつもりで人生を歩んできた人たちはとまどうばかりだ」
ビジネスの世界では、単調さや不動性は選択肢にない。ダーウィンの唱える生きのこりと覇権を賭けた競争につねにさらされ、さまざまな企業が興亡を繰りかえし、技術革命のたびに勢力図が塗りかえられていく。私がジャーナリストとして長年働いた世界的な出版大手タイム社は消滅してしまった。
1990年代に入社したとき、あまりに贅沢で快適な職場はまるで社員を腐らせていく墓場、「ベルベット製の棺(ひつぎ)」のようだと呼ばれていた。その後、会社は経営難に陥り、2018年、「成功する農業」や「フルーツ、ガーデン、ホーム」などのテーマの雑誌を発行してきたメディア大手メレディス社に買収された。メレディスはタイムを廃車同然に解体し、各部門をスクラップにして切り売りした。
株式市場は上昇するのか、下落するのか。経済は成長するのか、停滞するのか。投資家は、未来に関するむずかしい問いに、明確な答えを切望する。投資は「未来を予測する」ことですべてが成りたっているとマークスは言う。どんな資産を分析するときでも、将来期待できる利益や評価を考慮して現在の価格を見積もるのだ。人生のほかの分野でも同じだ。
「私たちは未来に対処しなければならない。どこで暮らすか、どんな仕事をするか、誰と結婚するかを決め、子どもが何人ほしいかも考えておかなければいけない」
だが世のなかの変化がますます速くなり、きょうと明日ではまったく情勢が違ってしまうなら、どう備えればどんな未来に対しても機敏に動けるというのだろうか。
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