※画像はイメージです/PIXTA

中国の農村部と都市部のあいだで、所得や資産の格差が極めて大きくなっています。1979年に「改革開放」政策が始まり、土地や企業などの厳格な公有をやめ、導入されていった土地所有制度の違いが大きく影響しているようです。本記事では、香港の金融調査会社ギャブカルのリサーチヘッドであり、米国の米中関係委員会(NCUSCR)のメンバーでもあるアーサー・R・クローバー氏による著書『チャイナ・エコノミー 第2版』(白桃書房)から、中国の土地所有制度がもたらした歪みについて解説します。

農村部と都市部の不動産制度の違い

農地を実質的に村が所有しているのと同様に、都市の土地は国が所有している。都市部の世帯が住宅を買う場合、彼らは実際には長期(通常は70年)の借地・借家権を買っている※2

※2 米国人は不動産を自由に所有できることに慣れており、この中国のやり方は奇妙に感じられるかもしれない。しかし、こうした方式は他国にも見られる。英国の集合住宅の大半は借地・借家権であるし、香港の不動産はすべてこの方式だ。香港ではその期間は通常99年である。

 

農民の農地使用権は30年なので利用期間は異なるが、それ以外の点では農民と都市部の住民にはあまり違いがないように感じられるかもしれない。

 

しかし、実際には甚だしい違いがある。農民は、農地を有効利用しようとする買い手に、高い価格で土地を売る権利を持っていない。農民ができるのは、耕作権を転貸することだけだ。

 

一方で、都市の住宅所有者は自分の不動産を誰にでも売れるし、市場で認められる価格であればいくらで売ってもよい。しかも人がどんどん都市部に移ってきているため、都市部の不動産価格はほぼ例外なく上昇してきた。

 

そして、都市の住宅所有者はその上昇分の利益を完全に自由に手に入れることができるのだ。また、農民は自分で耕す農地1区画の権利しか持っていないが、都市部の住民は買えるだけの住宅を買って賃貸収入を得たり、小さな事業の担保にしたりすることができる。

 

さらには、1998年から2003年の住宅私有化プログラムで、何百万もの都市部の世帯が、国有の住宅を市場価値よりかなり低い価格で買うことを許された。彼らは後に、その住宅を市場価格で売ることを認められた。

 

得をした都市部の住民たち、損をした農民たち

彼らが手にしたキャピタルゲインは、合計で4.5兆元だった。これは農民が地方政府の買い上げによって1990年から2010年までの間に失った額の2倍以上になる。

 

つまり、農村部と都市部の住民が不動産の権利に関してたどった道は、正反対のものだったということだ。

 

農民たちは自分の農地を実際の価値よりもずっと低い価格で売らされ、一方で都市の住民は(その一部ではあったが)実際の価値よりもずっと低い価格で不動産を買い、その利益をすべて自分のポケットに入れた。

 

こうした財産権の不平等が、都市部と農村部の住民の間に存在する、資産と所得の格差の唯一最大の原因と思われる。

 

 

アーサー・R・クローバー

香港金融調査会社ギャブカル

リサーチヘッド

 

※本記事は、THE GOLD ONLINE編集部が『チャイナ・エコノミー 第2版』(白桃書房)の一部を抜粋し、制作しました。抜粋でなく、要約を補った箇所は* *で示しています。

 

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